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結核の無症状感染者からわかること

category - ウイルス再考
2021/ 05/ 01
                 
コロナの影響で「無症状感染者」という厄介な概念がすっかり定着してしまいました。

この概念があるせいで、国民のほとんどが自粛やマスク装着を余儀なくされ、日常生活や経済活動が制限され続けていることは周知の事実だと思います。

ところがこの「無症状感染者」という概念、コロナで初めて確立した概念ではありません。

より正確に言えば、コロナ前から「無症状感染者」の概念はあったけれど、コロナ後には"「無症状感染者」の飛沫が誰かに病原体を感染させるおそれがある"という概念が広まったということです。

たとえば、同じウイルスであっても、ヘルペスウイルスには「潜伏感染」という概念がありますし、

B型肝炎ウイルスやHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス-I型)の場合には、症状はないけどウイルスの保有者であることを意味する「キャリア」という状態があることもよく知られています。

いずれも「無症状感染者」ではあるものの、飛沫で感染するということがないと考えられていることから、これ自体が社会で不安視されることはありませんでした。

しかし、コロナ前の世界で「無症状感染者」の存在が知られ、なおかつ飛沫感染もするという病原体は実は存在していました。

何を隠そう、その病原体とは「結核菌」のことです。
            

結核菌は以前の記事でも触れたように飛沫感染どころか、それ以上の距離であっても感染が成立する「空気感染」を起こす数少ない病原体の一つです。

つまり、コロナよりも「無症状感染者」が広まりやすい条件を備えている病気、それが「結核」だということです。

それなのになぜ今の世の中のように外出時は常にマスクをつけようとか、3密を避けようとか、ソーシャルディスタンスを保とうなどということが言われていなかったのでしょうか。

それは「無症状者の飛沫から感染が成立することがある」という概念が当時はまだ受け入れられていなかったからです。感染するとしたら有症状者の咳や痰などからであって、さすがに無症状者が近くにいるだけで感染するとは思われていなかったからです。

しかし今考えればおかしな話です。なぜならば結核菌は空気感染するという点で、コロナなんかよりはるかに感染は広がりやすいわけですから。

しかも結核菌は、長さ2~10 µm、幅0.3~0.6 µmの細長い形をしており、この大きさは直径0.1-0.2nmで球形のコロナウイルスと比べてかなり大きいわけですが、

そんな結核菌の感染を防止するためにはN95マスクという一般のサージカルマスクよりもはるかに編み目の細かい医療用の特殊マスクをつけないと感染は防止できないと言われてきていました。

こうなってくると、コロナウイルスも空気感染するし、N95マスクを装着しないと防げないと考えないとつじつまが合わないという気もしてきますね。

それに関しては世界の認識が誤っているだけという可能性もあるでしょう。本当はコロナのように結核菌も世界中に広まっているけれど、まさか無症状の人から感染しているという概念自体がないから、誰もそれを確認していないという状況です。

その真偽はさておき、いずれにしてもそれくらい結核菌も広まりやすい条件を持っているのであれば、実際にコロナのように無症状者に結核の検査をすれば、「無症状感染者」がバンバン見つかってくるのでしょうか。

おそらくその可能性はさすがに低いと思います。なぜならば、私が大学病院に勤めていた時代に、

受け持ちの入院患者さんにステロイドパルス療法や免疫抑制剤などの免疫を低下させる治療を行う前に、スクリーニングとして結核の検査を行うことはよくありました。

数え切れないくらいたくさんの患者にそうした検査を行いましたが、本当に結核だったという人はごくわずかであったように記憶しています。

つまり入院患者さんのような体調の悪い人でさえ結核にかかっていないのですから、無症状の健康な人が無症状感染者であるという可能性は極めて低いということです。

ちなみに1人の病原体保有者が周囲にいる何人の健康者に病原体を感染させるかを表す指標のことを「基本再生算数」と言いますが、

2021年2月時点の情報で新型コロナウイルスの基本再生算数は2.5〜3で、結核はそれまでの研究で5くらいではないかと言われています。

ただし、この「基本再生算数」という数字、過去にも記事にしましたが、個人的には全く当てにならないと思っています。

一般的に基本再生算数というのは病原体ごとに決まった数値だと考えられていますが、こちらの資料によれば結核の基本再生産数は低蔓延国であれば1未満、高蔓延国であれば3〜4くらいだと場所によって数値が変わっています。

なぜ同じ結核菌による感染症なのに、場所によって基本再生産数が変わるかと言えば、この数値が病原体によって規定される数値ではなく、周囲の感染状況ありきで計算される数値であるからです。

そもそも新型コロナのように世界中に蔓延した病原体は前代未聞なわけですから、新型コロナの基本再生算数が100以上とかぶっちぎりでトップになっていないと話が合わないのに、いまだに「2.5〜3」だと評価されているのがおかしな話です。

基本再生産数がそんな風にあやしい数字なので、そこから算出される実効再生算数という数字も、後づけで解釈しているだけの現状を示すだけの未来を示す能力など全くない数値だと解釈した方がよいと私は思います。


さてコロナ以上に、あるいは小さく見積もってもコロナ「並み」に拡大しやすい性質を持っているにも関わらず、今のコロナのように結核が世界中に蔓延していない理由はこれしか考えられません。

「無症状感染者の飛沫からは感染しないから」です。そうでなければ絶対におかしいのです。

だってたとえば今もし、結核の患者さんがいたとしましょう。数ヶ月前から長引く咳をしていました。

病院に受診し、精査の結果、結核だと判明しました。結核は指定感染症なので隔離して治療を受ける必要があるので、ただちに入院しましょうということになったとします。

そこから先は医療関係者はその患者さんに接する際にN95マスクをつけて対応するのでいいとして、そんな風に結核の患者が発生したら、今のコロナのように保健所の指導でいわゆる濃厚接触者を選定して、無症状であっても他の誰かに結核が移っていないかどうかを調べるという流れになります。

その調査によってほとんどの人は感染していないことがわかるのですが、稀に「無症状感染者」であると判明する人が出ると、結核発症を未然に防ぐためにイソニアジドという抗結核薬を6ヶ月間内服するということが勧められることになります。

その抗結核薬の予防内服効果も完全ではないと言われているのですが、私がここで言いたいのは「飛沫出しまくりの有症状者でさえその程度の影響力しかもたらされていない」ということです。

濃厚接触者と言いますが、それは大抵その患者と長く接した医療者や家族などに限定されて調べられます。

しかしその結核患者さんは、結核だと判明するずっと前から咳をした状態で市中で経済活動をしていたりするわけです。

ファミレスで近くにいた人も濃厚接触者でしょうし、満員電車の中にいたらその周りの人だって皆、濃厚接触者でしょう。

営業の仕事をしていたら営業先の顧客も濃厚接触者でしょうし、教師の仕事だとすれば生徒も皆濃厚接触者となってしまいます。

しかしそれらの人を全部調べるとなったら人数は膨大となりますし、現実的に追跡困難な人だっているでしょう。保健所で行われている濃厚接触者調査はあくまでも現実的に調査可能な対象にしか行われていないというのが実情でしょう。

ということは、保健所の調査以上にはるかに多くの人に結核菌の飛沫がばらまかれていることが濃厚なわけですが、一人の結核患者さんが発生したことで結核が全国に広がるアウトブレイクが起こったことは近年になって一度もないですし、その地域全体で広がることさえ報告がありません。

ということは、「空気感染する結核菌であっても咳をしまくった状況でも感染の拡大は極めて限定的にしか起こらない」ということです。いわんや、結核の「無症状感染者」をやです。

結核の「無症状感染者」がコロナ並みに広がらない理由としてもうひとつ考えなければならない要因があります。

実は日本リウマチ学会が発行している抗IL-6阻害薬の手引きには、結核の「無症状感染者(無症状病原体保有者)」についての記載があります。

要は、「抗IL-6阻害薬を使う前には結核の無症状病原体保有者であるかどうかを必ず前もって調べなさい」という注意喚起がなされています。

なぜならば結核の「無症状感染者」であるにも関わらず抗IL-6阻害薬を使用してしまうと、抗IL-6阻害薬は強力に免疫システムをブロックする薬なので、結核が顕在化してしまうことがあるからです。

これは実際に医療現場でも確認されることなので事実と言っていいでしょう。・・・ここでもう一つの事実に気がつきます。

「結核菌がそこにいるから結核になるのではなく、結核菌がいてなおかつ宿主(人間)の身体のシステムに支障がある時に結核という感染症は発症する」という事実です。

結核はゆっくりと発症する病気なので、結核と診断されるまでには発症から数週間以上の時間がかかるのが一般的です。

まだ診断されていない結核の有症状者が一人いれば、おそらくその町中に空気感染として結核菌はばらまかれていると思うわけですが、

実際には免疫システムが働いて大抵の人は感染しないし、感染したとしても「無症状感染者」となることがほとんどだということです。

おそらく保健所調査で見過ごされている結核の「無症状感染者」はたくさんいるのでしょうけれど、

免疫システムがきちんと働いていれば、発症もしませんし、しばらくくっついていた結核菌も自然に淘汰されて誰にも気づかれないまま排除され、何事もなかったかのように非感染者状態に戻るのでしょう。

ただし免疫システムが弱った人が近くにいれば、その人に結核菌が感染するとその人は結核を発症してしまうことになる、そういうことであるわけです。

つまり、「結核菌がいるかどうかよりも、その人の免疫状態の方が決定的因子」だということがわかると思います。

しかしここでの要点は、「結核の有症状者でさえ地域全体に感染者を広めることができず、拡げることができるのは体力の弱ったごく一握りの人たちのみなのだから、結核の無症状感染者が多くの人に感染を拡げているなんて考えられない」ということです。


でもコロナは世界中にPCR検査の陽性者が広まっています。なぜ結核よりも拡散能力が低い、少なくともそう見積もられている新型コロナウイルスではこれほどまでに「無症状感染者」が広まっているのでしょうか。結核ではあんなに「無症状感染者」が広まりにくかったのに、です。

これに関しても、PCRの原理を考えれば、考えられる理由はただ一つです。

「コロナの無症状感染者は、本当の無症状感染者を反映していない」ということです。

つまり世界中にコロナウイルスが一つひとつ丁寧に広まっていったのではなく、「すでに世界中に広まっているPCR検査に陽性となりうる物質をひたすら拾い上げている」ということが真実であろうと思うのです。

その”コロナPCR検査に陽性となりうる物質”というのは旧型コロナウイルスかもしれないし、コロナウイルスの死骸(ウイルスにとって死という概念は不適切かもしれませんが)、コロナウイルスと部分的に共通構造を持った別の何かなのかもしれません。

いずれにしても、コロナウイルスよりはるかにポテンシャルの高い結核菌でも成し遂げられない全世界への感染拡大を、コロナウイルスが成し遂げられるわけがないのです。

しかも結核菌はコロナと違って、ヒトに感染していなくても冷暗所で数ヶ月は生存可能と言われている病原体ですからね。

ちなみに結核にはBCGワクチンがあるから、BCGのおかげでコロナのように世界的に拡大せずに済んでいるという意見はナンセンスです。

BCGワクチンの効果は感染予防ではなく、あくまでも粟粒結核や結核性髄膜炎などの重症化予防の効果に限定されており、肺結核の発病予防効果に至っては50%程度だと言われています。

要はBCGワクチンを打っていても結核菌には感染してしまうのです。それで発症するかどうかは別問題ですが、少なくとも検査すればするほど「無症状感染者」が出てこないとつじつまが合いません。

繰り返しますが、コロナよりはるかに感染しやすい結核菌は、かなり病気で弱っている人で調べても「無症状感染者」はそうそう出てきません。それなのにコロナでは無症状感染者がバンバン見つかってしまうのは、それがウイルスの感染ではなく、ウイルス様構造物の付着を反映しているからと考えるしかありません。

もういいかげん、コロナのPCR検査で陽性になった人を「無症状感染者」だとみなすのはやめにしましょう。

ついでに言えば、おそらく間違っているのはコロナウイルスへの認識だけではありません。

もはや「感染症学」全体が事実の捉え方を誤っていたとしか私には考えられません。


たがしゅう

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コメント

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教えてください
→コロナウイルス様構造物の付着を反映しているからと考えるしかありません。

たがしゅう先生の興味深い記事に毎回唸らされます。

コロナウィルス様構造物を新型コロナの陽性判定に誤認してしまう事実

何故最先端といわれる現代医療で、このような重大な事実が見過ごされるのでしょうか?
Re: 教えてください
だいきち さん

 ご質問頂きありがとうございます。

>何故最先端といわれる現代医療で、このような重大な事実が見過ごされるのでしょうか?

 この質問はとても重要で、今私が頭の中で考えていることとあわせてまとめて回答した方がよさそうです。
 次回のブログ記事で質問に答えさせて頂きます。