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基本再生産数は信用ならない

category - 素朴な疑問
2020/ 07/ 17
                 
「一定割合の人がマスクをすれば新型コロナウイルス感染症の流行は抑えられる」という研究のニュースがありました。

額面通り受け取れば、「マスクの有効性は科学的に証明された」ということになりそうなものですが、

原文を確認してみるとこの研究、なんと実際の患者は誰一人出て来ていません。要するに数理モデルで計算するとそうなるということを言っているに過ぎない論文です。

8割おじさん」の「42万人死亡説」でも話題になりましたが、この数理モデルで実際の感染症の流行を予測するという方法論、これは非常に信憑性が低いと私は考えています。

中でも基本再生産数という概念が非常にあやういのです。
            

基本再生産数(R0)とは「すべての個体が感染症に対する感受性をもつ集団内で、一感染個体により直接生み出される感染個体数の平均」と定義されています。

私なりにかみ砕いて言えば「1人の感染者が周囲のだいたい何人の人に感染を広めうるか」という数字だと思います。

これが各ウイルス感染症によって固有の数値とされていて、例えば空気感染することで知られる麻疹ではR0=12〜18、同じコロナウイルス感染症であるSARSではR0=2〜5、インフルエンザではR0=2〜3程度、だとそれぞれ言われています。

似たような言葉に「実効再生産数(Rt)」がありますが、「基本再生産数」がまだ感染が起こっていない白紙の集団に対しての数値であるのに対し、すでに感染症がある程度広まっている集団内での数値ということになるようです。

しかし問題はこの数字をどうやって算出したのかについてですが、数学的な難しい話は正直言って私には全くわかりません。

けれど、この数値を出すためには少なくとも、特定の状況における実際の感染症の蔓延状況のデータが必要であるはずです。

ある時点で感染者数が時間が経過してどれだけ増えたか、その観測現場での人と人との距離、密集度、どのようにすれ違ったか、観測時間など、どこまで考慮されているかわかりませんが、とにかく現実世界における様々な変動因子が関わった結果としての数値が算出されていると思いますが、

しかしこれは測定する場所や状況で大きく変動するはずの数値です。例えば、都会で測定するのと田舎で測定するのでは建物の密集具合で数値は変わってくるでしょう。

あるいは誰が対象になっているかでも変わります。栄養失調者が多ければR0は増えますし、元気な人の集団で測定すればR0が減ることは容易に想像がつきます。

つまりR0はそもそも前提がグラグラの数値だということです。

人生で一度も風邪を引いたことがない人がいることからもわかるように、ウイルスと接触していても感染しない、感染していたとしても発症しないという事実があることは明らかです。

それなのにまるでそのウイルスがいれば一定の確率で誰でも一定の速度で感染しうるような前提で計算を導くようなやり方ではどう考えても正確な未来を予測できるとは思えません。

自然の複雑さを数学など確かな論理で紐解いていくアプローチ自体には賛同しますが、

このようなモデルで感染症の流行を予測しようとするアプローチは自然を複雑さを甘く見ているようにしか思えないのですがどうでしょうか。

この辺りは数理モデルに詳しい読者の方がいらっしゃれば御教示頂きたいところですが、

「42万人死亡説」と現実の死亡者の離れ具合から見ても、この数理モデルというものがうまく機能していないという考えの方が私はしっくりときます。

おそらくはこの数理モデルがおかしいと思っている人は他にもたくさんいるように思いますが、

科学の名の下に難しい計算式から導かれたと言われてしまうと、そんじょそこらの知識がある程度の人間では太刀打ちできません。

その反論できない数理モデルが、実際には現実を反映していないにもかかわらず、「科学的証拠」だと称して結果だけが一人歩きしてしまっているのだとすれば、

これほど厄介なことはないように私は思います。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

No title
私はシミュレーションを専門とするものでもなく高等応用数学を得意とするものでもありませんが、かつて在籍していた研究室の影響か、さほどシミュレーションにアレルギーを示す人間ではありません。

疫学や人口学で用いられる「基本再生産数」は将来予測の参考となる推測値を提供してくれるので、少なくとも私は、先生がおっしゃられるように「あやうい」とか「自然の複雑さを甘く見ている」と考えたことはありません。

また、先生もご存知と思いますが第84回日本循環器学会学術集会(JCS 2020)の対談、NewsWeekへの西浦博教授の寄稿記事や過去の論文も視聴・拝読させていただきました。

私はむしろ、基本再生産数、マスク着用の是非やウイルス感染について、先生が独自解釈を紹介されることで、感染予防についてステレオタイプな考えを持たれている方々のミスリードを後押ししているように感じ、先日山口県で騒動をおこした関東在住の迷惑系YouTuberの方ではないですけれど、社会を混乱させる行動の根拠にされてしまうことを私はたいへん危惧しています。

数理モデルによるシミュレーションは公衆衛生学を背景に持つマクロ視点であるのに、先生はそれにくらべて規模の小さい視点の見解を同列に述べられているところに私はおかしさを感じます。

ライブハウス、接待を伴う飲食店、コーラス活動・昼カラオケ、病院・介護福祉施設、家族内、劇場公演と物販、沖縄米兵の野外パーティーの感染例などを公衆衛生学的な視点でとらえれば、150年前のスノー博士の推察ではありませんが、何がしかが接触伝播することで感染者が増えているのではないかと想像するほうが、私はずっと妥当な推論だと思いますし、数理モデルをもとにどんな介入を行えば将来の感染者数推移がどう変化するかを推測する手法は、迫りくる見えない感染の恐怖で行く先を見失っている人々にとって羅針盤となる参考値を与えると私は考えます。

シミュレーション結果はあくまで参考値にすぎませんが、履いた下駄を蹴り上げて表が出れば「晴れ」、裏返ってしまえば「雨」のような占い的な予測ではなく、様々な角度から科学的にもっともらしい数理モデルを組み、少しずつ拡張して予測精度を上げる手順を踏み、また過去の事例を再検証してモデルの妥当性を評価されたうえで、新型コロナウイルス感染者のサンプルデータから導出された推測値なので、先生がおっしゃるような「現象からの推測があやまっている」という独自見解を読者に伝えることは、私にはできません。

Re: No title
ねずみ さん

 率直な御意見を頂き有難うございます。

 確かに私の疫学の知識は専門家の先生方と比べると不十分なものかもしれません。
 その私の意見に信ぴょう性がないと感じられる方がいるのも無理もないことでしょう。

 一方で私は私で自分の思考を深めるために私のできるレベルで一つひとつ考察を積み重ねています。
 私の中で考え得る合理性を保ちながら、時には誤ることもあるかもしれませんが、事実となるべく符合する解釈を探して整える作業を繰り返しています。それは常に自分のわかるレベルからの考察であり、それを繰り返し蓄積していっているのが私のブログの構造となっています。

 ですのではたからは見て視野が狭いと思われるかもしれないという私の見解は、私にしてみれば貴重な思考の足跡です。それを私はあえて公開することによって様々な意見を集め、自分の理論の整合性を確かめています。だから私の発言はそうしたスタンスを元にした「独自見解」の連続となっています。

 もしも誤誘導を防ぐために、疫学という学問を究めてからでないと数理モデルについて安易に語ってはならないのであれば、それを専門にしていない私は事実上一生それについて語ってはならないことになってしまいますが、私のスタンスはそうではありません。私の知識や経験の中でおかしいと思うことがあれば率直に述べる、それを世間に投げかけて反応を受け止める、反応を受けて意見があればまた述べる、もしも私に大きな誤りがあれば修正し意見を述べる、また反応を受け止める、その繰り返しです。誤誘導してはいけないという問題は時々話題にのぼりますが、それはそもそも何かを公的に述べる限り一定の確率で起こり完全には防ぎえないものだと私は思っています。誤誘導しなくてすむ唯一の方法は「何もしゃべらない」ことですが、それは私の本意ではないので、受け止め方はそれぞれの読者に委ねるより他にありません。

 なお私も細菌やウイルスが接触すれば感染する現象そのものは認めています。問題は感染イコール即発症ではないということです。迷惑系YouTuberがまき散らしたとして感染拡大はあれど患者拡大するかどうかはまき散らされた側の人達の状態によって変化します。無症状者のPCR検査陽性を感染拡大と表現しているだけの可能性も否定できません。そのような実情がある中で、一定の確率で感染=発症し、それが全体に影響をもたらすということを前提とした数理モデルには無理があるという私の主張は、迷惑系YouTuberの件やジョン・スノウ博士の偉業があるからといって矛盾するものではないと思います。
なんだかなぁ・・・
独自セミナーの参加費を集められるくらいの立派な先生なのですから、ブログ記事に書かれた情報について読者にすべての判断をゆだねると真顔で述べられる姿、また浅学な分野について口をつぐめと私は言っているのではなく、苦手意識のある数式という言語で表現された話に耳を傾けずに問題は「感染イコール即発症」だと真顔で誤解を述べられる姿勢に、「う~ん、まじかぁ。なんだかなぁ」と私は感じます。

たとえばSEIRモデルであれば、「感染して潜伏期間中の者(Exposed)」という要素をモデルに加えていますし、高等学校までの微分・積分や確率・統計の知識があれば、相手の表現したいことの概要くらいは数式から伝わってくると思います。

多くの公衆衛生学分野の研究者もそうでしょうけれど西浦先生もまた、「感染イコール即発症」という前提で報告データを取り扱っていません。今年5月12日のオンライン講演会でも説明されていました。

まだ視聴したことがないけれど興味がある方は、7月21日現在、ニコニコ動画で公開されていることを確認しておりますので、是非ご視聴なさってください。西浦先生の講義は前半の約1時間、質疑応答と合わせると計2時間弱ありますけれど・・・。(https://live2.nicovideo.jp/watch/lv325833316

東洋経済ONLINEの「新型コロナウイルス 国内感染の状況」ページでは、日別の実効再生産数(Rt)の推移をグラフ化して示してくださっていますので、政策が打たれた後や識者からのメッセージが出た後の人々の行動変化にともなったそれの変化など、興味のある方は参考にされてみてください。他にも様々な項目についてグラフ化して示されており、ページの上部は全国データを示し、半分より下は各都道府県別の状況を選択して閲覧できるように工夫されています。(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/


No title
ねずみさん、たがしゅう先生

 わたしも、ねずみさんに近い経歴を持つ者で、ねずみさんの書かれた内容はその通りだと思います。
 一方、たがしゅう先生が「信用できない」ことは、理論ではなくて、「データの正確性や普遍性が担保されているのか分からない」ことだと理解しています。
 例えば、「歌舞伎町のクラブの従業員を重点的に検査していたとすれば、それを都内全体について当てはめるわけにはいかないのではないか」であり、「そのところが明確になっていないのではないか」だと思います。
 
 さらに、私の目からも、重症者や死者数の推移が、基本再生産数の延長には無いように見えますし、そもそも弱者であるはずの乳幼児の死亡者が殆どいないことも、基本再生産数や感染者数からのアプローチが(理論は正しくても)実を結ばないように思えます。
 そこから考えると、自然免疫を高める、または劣化させないことが最も大事だとという考え方は十分に肯けます。

 以上素人考えですが如何でしょうか。

 素人考えついでにですが、獲得免疫の暴走であるサイトカイストームが今回の死因の大半なようですが、だとすると獲得免疫を強化する(らしい)ワクチンは、死者を防ぐ能力はあるのでしょうか。花粉症の薬の方が効きそうに思いますが。
Re: No title
タヌパパ さん

 丁寧にニュートラルに評価して頂き感謝申し上げます。
 おっしゃって頂いたことに関してはその通りでして、私からの特別の異論はございません。

> 獲得免疫の暴走であるサイトカイストームが今回の死因の大半なようですが、だとすると獲得免疫を強化する(らしい)ワクチンは、死者を防ぐ能力はあるのでしょうか。

 サイトカインストームが獲得免疫の暴走とは言い切れないかもしれません。自然免疫が暴走している可能性もあり、むしろそっちの要素の方が大きいのではないかと私は考えています。要するに自己と非自己が区別できない、自己を攻撃してしまったり、非自己を体内に取り入れてしまったりしてしまう、その結果サイトカインストームにつながる大きな要素となっているのではないかという見解です。

 ワクチンが獲得免疫を強化して成し遂げようとする目的はあくまでも感染成立の予防にあるのだと思います。ご指摘の通りサイトカインストームの予防にはならないと思われます。そして論理的に考えていくと、感染成立の予防という主目的でさえ危ういとこれまでのワクチンのもたらす効果を中立的に観察した結果、私には思える次第です。

 2020年6月11日(木)の本ブログ記事
 「ワクチンは自然感染を超えられない」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-1780.html
 もご参照下さい。
 
No title
たがしゅう先生

 解説有難うございます。
 
 ただ、サイトカインスームが自然免疫の暴走であるとすると、幅広い世代で重症化が進むはずではないかと思うのですが、如何でしょうか、
Re: No title
タヌパパ さん

 御質問頂き有難うございます。

> サイトカインスームが自然免疫の暴走であるとすると、幅広い世代で重症化が進むはずではないかと思うのですが、如何でしょうか

 自然免疫を暴走させうるのは一言で言うと「自律神経の酷使」です。
 交感神経過緊張状態ではリンバ球の活性が低下し、自然免疫の要でリンパ球の一部であるNK細胞の活性も低下すること、
 副交感神経優位状態である笑いがNK細胞活性を上げることがその傍証です。

 2020年5月9日(土)の本ブログ記事
 「過剰な免疫反応を駆動する真犯人」
 https://tagashuu.jp/blog-entry-1760.html
 もご参照下さい。

 「若い人ほどまだ自律神経の酷使イベント経験が少なく、自然免疫としては保たれている率が低い」
 「高齢者ほど様々な困難を経験してきて自律神経を酷使している率が高い」
 その意味でサイトカインストームに至るほどの自然免疫の暴走は高齢者に偏って起こって然るべきということで、大きな矛盾はないように私は思います。
No title
自然免疫の暴走の可能性について、理解できました。
有難う御座います。
壮大なやらせ
夏目漱石の時代にはすでに糖質制限が
糖尿病の治療に使われていた。
これを戦後やめて、6-2-2で
糖尿病を増やし、医療利権者が、利益をむさぼってきた。
このことから考えると、大橋眞先生の主張する、体内に存在するウイルスを、pcrで、発見してるに過ぎないと考えるのが、妥当だと思います。
Re: 壮大なやらせ
匿名希望 さん

 コメント頂き有難うございます。
 
 おっしゃること、とてもよくわかります。
 無症状者を引っ張り出して、感染者狩りをするなんて、明らかに科学の暴走です。
 効果のないカロリー制限が糖尿病治療のスタンダードとなってしまったことも、
 事実よりも理論が重視されてしまったが故の悲劇でしょう。

 今も昔も科学の暴走が奪っているのは私達の人生の幸せではないかと私は思います。
 この侵略から人生を取り戻すためには、自分の頭で考えて自分で自分の人生を歩むこと、これしかないのではないでしょうか。