2020年07月

        

第二波ではなぜ高齢者の重症化率も低いのか

category - 素朴な疑問
2020/ 07/ 31
                 
正直、新型コロナウイルス感染症にかかった患者の数が増え続けていた第一波と呼ばれる3-4月頃の段階では、

7月になった今頃、第二波と呼ばれるようなPCR陽性者数の増加の波が来ることは全く予想していませんでした。

通常の「かぜ症候群」に準じたウイルスであれば、夏になれば患者数が減ってくるだろうと思っていた予想を大きく裏切られた形です。

一方で色々なところで聞かれるように、第一波と第二波はその総数における重症者の割合において全く違う質のものです。

夏に感染者数が減る予想が裏切られたのも、人類史上初の無症状感染者を積極的にピックアップしようとした世界的な流行的行動の影響が大きかったと私は見ています。

その結果、今までであれば存在さえ気づかれなかった無症状感染者の大半を占めるであろう若者のPCR検査陽性者の存在が明るみとなったため、その数の多さが第二波の波となり、

相対的に無症状感染者が多くなっていることから、重症化の率としては低くなっているという要素はあると思います。

ただ、それにしても今回の第二波は高齢感染者の絶対数が少ないとは言え、その中で重症化する人も少ない印象があります。
            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

ウイルス感染症が重症化する構造とは

category - ウイルス再考
2020/ 07/ 30
                 
先日届いた日本内科学会雑誌を何気なく見ていたら、

「今月の症例」のコーナーにインフルエンザウイルス感染を契機に副腎不全をきたしたという症例が私の興味をひいたので呼んでみました。

(以下、要旨引用)

インフルエンザを契機とした副腎不全、低Na血症の加療中に横紋筋融解症を生じた1例
高木彩好、角谷美樹、森本晶子、三好晶雄、小阪佳恵、角谷学、庄司拓仁、小山英則
日内会誌 109:1423−1431,2020


59歳,男性.X-3年にA病院で下垂体腺腫による下垂体前葉機能低下症と診断され、補充療法中であった。X年、B診療所でインフルエンザと診断され、2日後に意識障害、痙攣で当院に救急搬入された。血液検査で低Na血症を認め、副腎不全の診断でステロイド補充とNa補正を開始した。第2病日よりCK(creatine kinase)が上昇し、第4病日にCKが最高値となったが、大量補液で腎機能の悪化なく軽快した。低Na血症の補正による横紋筋融解症の発症と考えられた

(引用、ここまで)

            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

ハムスターでマスクの効果を見た論文の落とし穴

category - お勉強
2020/ 07/ 27
                 
私は基本的にマスクにはウイルス感染防止の効果はないと考えている医師です。

医学としてもマスクの有効性が完全に証明されたことは未だにないはずですが、

世の中では新型コロナウイルス騒動を契機として、マスクの装着が新常識として半ば強制的に定着させられてきているとさえ感じています。

そんな中、ネットニュースを見ていると、「マスクの有効性が科学的に証明された」として複数の医学論文が紹介されている記事がありました。

中でも私が気になったのは、ハムスターの実験でマスクの有効性が証明されたとする上海大学から発表されたこちらの論文です。
            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

ウイルス自体が毒となる可能性はあるか

category - ウイルス再考
2020/ 07/ 23
                 
前回の記事でウイルスは植物、動物、細菌など他の生物と違って「毒素」を産生しないという話を取り上げましたが、

「毒素」というものには、大きく「外毒素」と「内毒素」というものがあります。

「外毒素」というのは病原体自らが産生している毒素、「内毒素」とは病原体自らを構成する成分の中で毒性をもつもの、のことです。

従って前回取り上げた毒素の話は厳密に言えば「外毒素」の話になります。

「内毒素(エンドトキシン)」は、グラム陰性菌という種類の細菌の細胞壁の外膜の成分(o-抗原多糖+コア糖鎖+リピドA)だと構造がはっきりと認識されており、通常「内毒素」という用語はこの細菌の特定の構造物を指します。
            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

「毒」でないものを「毒」にしてしまう

category - ウイルス再考
2020/ 07/ 21
                 
自然界には「毒(毒素)」と呼ばれるものがあります。「毒」とは、生物の生命活動にとって不都合を起こす物質の総称です。

特に植物を中心にこの「毒」は広く見受けられます。自らが動けない植物にしてみれば、「毒」を作ることは自分を脅かす外敵をやっつけて自分の身を守るために大切な物質です。

また「毒」と「薬」は紙一重とも言うように、他の動物を味方につけて自分の身を守るために「毒」と類似の「薬」を生み出しているという側面もあります。故に植物の毒はしばしば「薬」としても応用されています。

一方で「毒」を持っているのは植物だけではありません。フグやハチなど動物の中にも毒を持っているものがいます。

この目的も自身の身を守るため、もっと広く捉えれば集団としての秩序を守るための一つの戦略として利用されているものなのではないかと思います。

そして微生物の世界にも「毒」は存在します。細菌には「細菌毒素」と呼ばれるものがあります。

「病原性大腸菌O157」が産生する「ベロ毒素」などはその具体例の一つですが、菌によって様々な「毒素」が産生されます。

これも植物や動物と同様に自分達の秩序を守るものだとすれば、生物は互いに自らが産生する「毒」も利用しながらそれぞれの秩序を守っている構造が見えてきます。

ところが、ウイルスにはこの「毒」を産生する能力が確認されていません。
            
関連記事
            
                

続きを読む