2021年01月

        

少数の「細菌」的なウイルスを生み出している構造

category - ウイルス再考
2021/ 01/ 30
                 
ウイルス感染症に対する考察を深めていくにつけ、「自己とは何か?」という問題について考えされられています。

私は基本的に「ウイルス感染症は自己システムのオーバーヒート」だという考えを持っていますが、

この文脈の中で私はウイルスを「自己」的な存在として解釈しています。

「ウイルス」が「自己」の一部として組み込まれ、その結果「自己」の免疫システムが過剰に働くようにシステムが過剰駆動してしまうのであれば、抑えるべきはウイルスという「他者」ではなく、過剰駆動させられた「自己」システムそのものなのであろうと考えています。

「自己」の過剰反応を無事収束させるように仕向ける困難克服作用を持つステロイドがウイルス感染症に有効であるという事実は、その考えを支持していると思います。

一方でステロイドを使うことでむしろ発症を助長してしまうウイルス感染症もあります。例えば帯状疱疹やサイトメガロウイルス肺炎などのヘルペスウイルス感染症、B型ウイルス肝炎などが挙げられます。

もしもすべてのウイルスが「自己」的な存在であるのだとしたら、「自己」の過剰反応を抑制するステロイドの使用によって悪化するというのは話が合いません。ウイルスの中には「他者」的な存在のものもあるということです。

ただ、こうした「他者」的なウイルスは同時に「自己」的な要素を持っていることにも気づかされます。なぜならばこれらのウイルスは潜伏感染(キャリア状態)となる性質を持っているからです。

潜伏感染できるということは、宿主が「自己」的に認識しているからこそできることです。一方でステロイドの使用によってその「自己」的な認識は「他者」的な認識に変わりうるという特徴でもあります。

そして同時に、これらのウイルスには数少ない抗ウイルス薬が開発されているものばかりです。これは偶然でしょうか。
            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

「細胞性免疫」が最も適切に働くための条件

category - がんに関すること
2021/ 01/ 28
                 
副作用にサイトカインストームや自己免疫疾患がある「免疫チェックポイント阻害剤」について熟考することは、

「免疫」というものが乱れていく要因について詳しく知ることへとつながり、ひいては「免疫」を整えるための具体的な方法へとつながり、コロナ禍における読者の皆様への安心材料にもなってくれると思いますので、

難しい話が続いて恐縮ですが、この流れの考察をもうしばらく続けていきたいと思います。

「免疫チェックポイント阻害剤」は、夢の抗がん剤などではなく、進行期のがんに限定して使われる特殊ながん治療薬であるわけですが、

この治療に抵抗性を示す病態として、「T細胞の疲弊」という現象が注目されてきているようです。



実験医学 2020年12月 Vol.38 No.19 イムノメタボリズムとT細胞の疲弊・老化〜免疫機能不全を克服する新たなターゲット (日本語) 単行本 – 2020/11/24
山下 政克 (その他)
            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

ステロイドの免疫抑制作用は困難を克服させるため

category - ステロイドに関すること
2021/ 01/ 22
                 
前回の記事で、ステロイドという薬の方向性には大きく2つあるとお話しました。

1.困難を克服するために特定のシステムを通常運転以上に過剰駆動させる
2.生命維持に最優先とされる部位を守り、優先度の低い部位を犠牲にする


しかし一つステロイドの副作用に「易感染性」、すなわち「感染症にかかりやすくなる」というものがあります。

その事実はステロイドの主作用として紹介されている「抗炎症作用」「免疫抑制作用」の裏返しとも言える特徴だと思いますが、

免疫は生命を維持するのに重要なシステムなのに、それを抑制するのが生命維持に役立つなんて矛盾があるように思えますし、

感染症なんて生命にとっての脅威であり、困難な状態の代表格なわけですから、これに立ち向かうための炎症システムを抑えることが困難を克服させようとしているというのにも無理があるように思えます。

今回はこの矛盾を解消できるかどうか、・・・難しい話ですが、頑張って考察しますので是非読んでもらえればと思います。
            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

ステロイドが身体に対してしようとしていること

category - ステロイドに関すること
2021/ 01/ 21
                 
以前、ステロイド(デキサメタゾンなど)と抗IL-6抗体(トシリスマブなど)の薬としての本質的な違いについて私の見解を書きました。

その中でステロイドはもともとあるシステムを応援する薬抗IL-6抗体はもともとあるシステムを邪魔する薬だという説明をしました。

一方で、関節リウマチという自己免疫疾患の範疇に入る病気の治療にこのステロイドと抗IL-6抗体の両者が治療薬として使われるのですが、

「ステロイドは関節破壊を抑制せず、抗IL-6抗体は関節破壊を抑制する」ということがわかっています。

厳密に言えば、少量のステロイドであれば関節破壊の抑制効果はあるかもしれないとは言われているのですが、

それにしても関節リウマチにおいてステロイドの使用は少量であっても長期にわたることが多いので、累積使用量が多くなっていくにつれて副作用の問題が出てくることが多いので、

どちらかと言えばステロイドは「関節破壊は抑制しないけれど、緊急避難的に関節の痛みや腫れをよくとってくれる薬」という位置づけで扱われていることが多いでしょう。

問題はステロイドが関節破壊を抑制しないということは、ステロイドがもともとのシステムを応援するという私の見解が正しいとすれば「もともとのシステムは関節の破壊を抑制しない」のだと、

考えようによっては「もともとのシステムは関節を破壊させる方向へと導いている」ということにさえなってしまいかねないわけですが、

実はその通りだと私は考えています。
            
関連記事
            
                

続きを読む

                 
        

強い薬の間欠的投与はより強い反動を引き起こす

category - ウイルス再考
2021/ 01/ 19
                 
前回のブログ記事で実は2つの疑問を先延ばしにしました。

一つは関節リウマチの早期の治療として使われている「DMARDs」という薬についての疑問です。

「DMARDs(Disease Modified Anti-Rheumatic-Drugs:疾患修飾性抗リウマチ薬)」とは、「関節リウマチの免疫異常を修飾することによって、関節リウマチの活動性をコントロールする薬剤」の意味です。

「DMARDs」には大きく免疫調整剤と免疫抑制剤の2種類があります。免疫調節薬(immunomodulaters)とは正常の免疫能には影響せずに異常な免疫機能を正常化する薬剤です。

具体的にはD-ペニシラミン、金製剤、サラゾスルファピリジン、ブシラミンなどの薬剤があります。これらの薬は確かにリウマチの活動性は抑えるものの、どのような作用機序で抑えるかについては実は明らかにはなっていないという謎の薬です。

ですがDMARDsについて取り上げたい疑問はそれではありません。もう一つの免疫抑制薬(immunosuppressants) とはすべての免疫機能を非特異的に抑制する薬剤のことなのですが、

その中に「メトトレキサート(MTX)」という薬がありますが、葉酸というビタミンの働きに拮抗して細胞の増殖を止める働きを持つ、抗がん剤としても用いられている免疫抑制薬です。

抗がん剤的に全細胞攻撃するので過活動状態のリンパ球も多分に漏れず攻撃されるので結果的に免疫も抑制されるわけですが、実はこのMTXの稀でない副作用として「間質性肺炎」があるのです。
            
関連記事
            
                

続きを読む