そもそもファクターXは存在しないと私が思う理由
2021/03/04 11:30:00 |
ウイルス再考 |
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現在のコロナに関する世界の統計情報をみていると、
中国、韓国、日本、台湾、フィリピンなど東アジアが全体的に死亡者が少ないというデータが見受けられ、特に日本ではコロナに対して免疫力が高い「ファクターX」なる要因があるという仮説がまことしやかに言われています。
で、その「ファクターX」として最有望視されている要素として、前回の記事で触れた「獲得免疫」における「T細胞の記憶」があると、
すなわち、東アジア地域における土着の旧型コロナへの既往歴が新型コロナウイルス感染症の重症化を防いでくれているのではないかという意見があります。
あるいはその「T細胞の記憶」にはBCGワクチンの日本株の接種歴の影響があるのではないかという意見もありますが、私はそのいずれに対しても否定的な見解を持っています。
今回はその理由について説明してみたいと思います。 まず、忘れてはならないのは、この新型コロナウイルスは2019年12月に東アジアの中国で発生した重症肺炎患者を契機に認識されるようになった、ということです。
土着コロナ感染既往歴なり、BCGワクチンなりの「ファクターX」が働いていたであろう地域で、重症肺炎の発生が発生しているというわけですから、
その「ファクターX」はコロナの重症化を防ぐことに対して、少なくともその重症肺炎患者にとってはほとんど無益だったと言ってよいでしょう。
一歩譲って、その中国の重症肺炎患者だけ運悪く「ファクターX」の恩恵を受けていない患者であったとしても、その後中国国内でどんどん患者が広まっていくことは不合理です。全く「ファクターX」の利点が発揮されていない事実です。
また日本でコロナ感染によって重症化したり死亡したりした人達も「T細胞の記憶」を全く持っていなかったというわけではないでしょう。
そうした人が皆、過去に風邪など一切引いておらず、あるいは引いていたとしてもコロナウイルスだけは避けていた可能性は低いですし、ましてやBCGワクチンも受けたことがなかったということは非常に考えにくいです。
つまり現在推定されている「ファクターX」の要因では、これまでコロナで重症化した人達がなぜ重症化してしまったかの理由を説明することができません。
一方でこれまでにコロナで重症化した人達には地域性とは別に、地域を越えて世界的に一定の傾向が認められています。
それは「コロナの重症化は高齢の人に起こりやすく、基礎疾患がある人に起こりやすく、若年齢では圧倒的に起こる確率が低い」ということです。
感染爆発しているように見える国も、「ファクターX」とやらで抑えられているように見える国も、例外なくこの傾向を示しています。
勿論、若干の地域差もないわけではありません。例えばコロナに絡んだ川崎病様の重症化イベントの起こりやすさには先天的な要素が関わっている部分が多く、その点において地域差・民族差がある可能性はあります。
しかしそうしたこどもは全体のごく少数で、どの国も、川崎病様の疾患が問題になっている国でさえも、大半のこどもはほとんど重症化しないという傾向を示しています。
ただ誤解のないようにして頂きたいのは、「T細胞の記憶」という現象自体がデタラメだと言いたいわけではありません。
「T細胞の記憶」自体はあります。ないのであれば、例えば「IGRA」と呼ばれる結核菌の検査は成立せず、誰に検査しても「IGRA」は偽陽性にならないとつじつまが合いませんが、私は医療現場で「IGRA」を利用する肌感覚として確かに「IGRA」は「結核」を鋭敏に検出できているように思います。だから「T細胞の記憶」自体は確かにあります。
一方で「T細胞に記憶」があることで何がスムーズになるかと言えば、「T細胞を中心とした細胞性免疫システムの駆動」がスムーズになるはずです。
しかしながらコロナの重症化の病態として注目されている事象は、「サイトカインストーム」という「細胞性免疫の過剰駆動」状態なので、「T細胞の記憶」によって「細胞性免疫」システムがスムーズに働くことはむしろ増悪因子にさえなりうる出来事なのです。
つまり、「T細胞の記憶」とは、一度接触したことがある「病原体(抗原)」、もしくは類似の「病原体(抗原)」との再接触によって起こる感染症イベントの重症化を抑制するとは限らない、ということなのであろうと推察されます。今回の「ファクターX」の貢献度の乏しさがそのことを実証しています。
「ファクターXが貢献していない・・・?現に、東アジアでは重症者数も、死亡者数も少ないではないか!?」と思われるかもしれませんが、
私が疑わなければならないと思っているのは、むしろ「東アジアでの重症者が軒並み低い」という統計データの方だと思っているのです。
こんなことを言うと、「統計データ自体を疑うなんて信じられない」という声が聞こえてきそうです。
利益相反がありうる医学論文の統計データであればまだしも、公的に公開される感染者数や人口動態統計のデータを疑うというのはさすがに非常識だと思われるかもしれません。
しかし、今は平時ではありません。世はまさにインフォデミックの状態、社会の混乱ぶりが至るところで観察されている状況です。
私は今、「コロナの世界統計自体に国ごとの地域性バイアスがかかってしまている状態」にあると踏んでいます。
例えば、PCR検査のCT値(cycle of threshold:もとの遺伝子断片を何倍に増幅するかの回数)が国ごとで統一されていないという混乱もありました。正確な死因に関わらず、コロナのPCR検査が陽性になればとにかく「コロナ死」としてカウントされるという動きもありました。
あるいはそもそも「コロナ重症者」や「コロナ死」の数は、PCR検査がどのくらいの規模で行えるかというキャパシティにも大きく影響されます。PCR検査を大規模で行えない国はどう転んでも大量のコロナ患者は生まれようがありません。
日本でも「第一波」「第二波」よりも「第三波」の患者数の多さで不安・恐怖を煽られてしまった方も多いと思いますが、感染者数が増えた遠因としてPCRの検査体制が日本でも整った所にあるはずです。
このように、平時であれば疑いの余地がないはずの人口動態統計が、もはや有事と言ってよいほどに混乱してしまった今の社会的状況の中では、国の方針や検査体制、あるいは死生観、文化的な価値観、政治体制などの様々な要因によってブレにブレうる統計データとなってしまっているのが実情であると私は考えています。
となると、このコロナに関する世界的な統計データがありきで判断されている「ファクターX」もその存在が根底から揺らぐことになります。
日本に「ファクターX」が本当にあるのだというのであれば、世界の潮流とは似ても似つかない統計データになっていないと話が合いません。
例えば、日本ではコロナに若年者ばかりが感染したりするようなことがあれば、初めて地域性要因「ファクターX」の存在を考えるかもしれませんが、
グラフの波の大きさが違っても、波の中身や傾向が同じなのであれば、波の大きさの差は地域差を疑う根拠にはなりません。
逆に言えば、コロナ統計の数の違いは全く当てにならないけれど、波の中身や波の傾向は参考にすることができると思います。
つまり高齢者や基礎疾患持ちで重症化が集中するという傾向、冬に顕在化するという季節の影響を受けていそうだという傾向、一人一人丁寧にウイルスが伝達しているというよりは全国に一気に患者が散発している傾向、検査数が多い国ほど感染者数が多いという傾向・・・
そうしたことを踏まえて、私が思うコロナの正体は
コロナウイルス様の「非自己」抗原の処理不全による自己システムのオーバーヒートで、
背景にはインフォデミックがあって、各種メディアを通じて不安・恐怖が過剰に煽られ続けていることが全国一斉拡大の主因であり、
実際に新型コロナウイルスが全国に広まったというよりも、もともと全国に遍在している既存のコロナウイルスもしくはコロナウイルス様の「非自己」抗原に遭遇した人が不安・恐怖も手伝って自己システムをオーバーヒートさせてしまっていると、
病態としては、獲得免疫よりも自然免疫システムの無効化が深く関わっていて、
ストレス関連症状が顕在化する形で症状が現れ、
体質によってストレス心身反応が別れ、ある人には嗅覚障害が出たり、また別の人には味覚障害が出たり、加齢や基礎疾患によってシステムの予備能が失われている人ほど自己修正が効きにくく、
制御困難になるとストレスによって駆動されるサイトカインストーム状態へ至り、血管炎やDIC(播種性血管内凝固)・ARDS(急性呼吸窮迫症候群)様の病態へと伸展してしまうというのが実際のところではないかと考えています。
これを「様々な症状をもたらしうる脅威の新型ウイルス」だと考えている限り本質は見えてきません。様々な症状が観察されるのは、かつてないほど国をまたいで様々な患者に対して調査を行っているからだと考えればつじつまが合います。
そう言えば新型コロナウイルスの潜伏期も1〜14日という、それまでの常識では考えられないほどの幅の広さを示していますが、それも単一のウイルスの性質だと考えると不自然で、かつてないほどのたくさんの人に調査を行ったが故に体質や体調など様々な宿主条件が反映されただけのデータでしょう。
そのように考えれば、「ファクターX」がなくとも、東アジアで感染者数が少ないように見える一方で、
日本でも世界中で共通する傾向を示していることの理由も説明がつくように思います。
そう考えると、生きている限りコロナに限らず「非自己」抗原と遭遇するの避けるのは不可能なのですから、
見えない「非自己」抗原をひたすら避け続けようとするのではなく、「非自己」抗原と遭遇しても「自己」の秩序を保てるように、皆が「自然免疫」を有効に働かせるように生きていくことを心がけること、
具体的には食事管理とストレスマネジメントを中心にして、日々の生活を心がけること、
いたずらに「ウイルスが悪」という概念によって心を揺さぶられないように、ウイルスを誰がうつした、誰にうつされたなどといった概念に支配されることにないように、
いろいろな意味で「我がままに」生きていくということが何より大切なのではないかと私は考える次第です。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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