がん標準治療抵抗性は細胞が必死に環境へ適応しようとしていることの裏返し

2023/06/14 18:00:01 | がんに関すること | コメント:1件

糖質制限ががんに効く」と「抗がん剤・放射線療法ががんに効く」の本質的な違いについて考え続けています。

ここまでのおさらいを軽くしておきましょう。

人間を構成する最小単位である細胞は、生きていく中での環境変化に対して環境適応を起こします。

その環境適応のパターンには大きく2つがあり、①細胞増殖性の環境適応と②細胞死抵抗性に分類することができます。

世間的には前者は良性腫瘍(化)、後者は悪性腫瘍(化)と認識されているけれど、本質的にはどちらも変わりゆく環境に対する同じ「環境適応」であるということです。

そして①と②は多くの場合、混在しているし、肉腫やホジキン病のように悪性腫瘍と位置付けられているものの中にも①のパターンがあり、①のパターンに対しては細胞増殖作用のあるインスリン分泌が関わるもの、すなわち高インスリン血症に由来する腫瘍には糖質制限食が著効する可能性があります。

そして①パターンの場合は糖質制限食のみならず、抗がん剤や放射線療法まで有効であるという可能性があります。

なぜならば①パターンの不完全型、すなわち細胞増殖性の環境適応で比較的細胞構造の秩序は保たれているものの局所に留まらず全身へと拡大していく腫瘍として悪性リンパ腫があり、かつその不完全性が小さいホジキン病において抗がん剤と放射線療法は著効するからです。 従って、私の仮説が正しければ、大腸ポリープや脂肪腫といった純粋な良性腫瘍には糖質制限食も、抗がん剤・放射線治療も著効するのではないかと考えます。

ですが、大腸ポリープは見つかったらすぐに内視鏡的に切除されますし、脂肪腫も局所麻酔で切除されることが多いですから、

糖質制限食や抗がん剤・放射線療法の効果が検証されたケースは、少なくとも医学論文上にはほとんどないのではないかと推察します。ブログ読者の方でもしも糖質制限食や抗がん剤・放射線療法で良性腫瘍を縮小・消失させた経験がおありの方は是非コメントを頂ければ幸いです。


さて、ここまでの流れ、すなわち細胞の環境適応パターンを細分化してまとめるとこうなります。

①細胞増殖性の環境適応(良性腫瘍化)(高インスリン血症が関与):
 
 ⅰ)完全型(①のみ)(良性腫瘍全般):秩序を持って細胞増殖し周囲組織を圧迫するが侵食はしない
 →糖質制限食が著効(低インスリン化が直接効く)するし、細胞障害性抗がん剤・放射線療法も著効(細胞増殖サイクルを停止)する

 ⅱ)不完全型(①>②)(ホジキン病など):少し秩序を残しながらもやや無秩序に細胞増殖し、周囲組織を圧迫し、時に周囲を侵食する(異型化の影響が周囲の細胞にも及ぶ)
 →糖質制限食は有効(低インスリン化の効果は限定的)だが、細胞障害性抗がん剤・放射線療法はかなり有効(①>②なので細胞死抵抗性がまだ小さいため)


②細胞死抵抗性の環境適応(悪性腫瘍化)(自律神経過剰刺激が関与):

 ⅲ)不完全型(②>①)(悪性リンパ腫全般):細胞増殖性の変化が乏しいが異型性が大きくなり細胞死抵抗性を少し獲得する。また細胞増殖しないものの全身に張り巡らされる自律神経が関与するため、まるで周囲へ侵食したかのように広範囲に同様の細胞変化が発生する(場合によっては「転移」と認識される)。
 →糖質制限食はあまり効かない(高インスリン血症の関与小さいため)し、細胞障害性抗がん剤・放射線療法の効果も限定的(②>①で細胞増殖性の変化が小さいため)。

 ⅳ)完全型(②のみ)(癌全般):細胞増殖ではなく、過剰に刺激された自律神経でつながる全て細胞への異型化に伴う細胞死抵抗性の変化。まるで全身に広がったように見えこともある(遠隔転移)があくまでも最も強い影響を受けた細胞の異型性変化が反映される(原発巣が認識できる)。
 →糖質制限食は無効(高インスリン血症による細胞変化ではないから)で、細胞障害性抗がん剤・放射性療法の効果も乏しい(効果があるかどうかは細胞死抵抗性変化の強さ次第)。


ややこしい内容で恐縮ですが、要は全ての腫瘍はこのようにⅰ)〜ⅳ)のグラデーションで表現されるのではないかというのが私の考えです。

例えば、ⅱ)の代表状態としてホジキン病を挙げましたが、あくまでもこれは典型的なホジキン病の場合であって、

前回記事で取り上げたように、一口にホジキン病と言っても、局所にとどまり続ける限局型から全身へと拡大する全身型まで様々です。

ただ限局型の細胞は「Reed-Sternberg細胞」と名付けられた比較的秩序の保たれた形態をしており、その細胞の秩序が崩れていくにつれて全身型へと変化していく対応関係はどうやらありそうです。

また同様にⅲ)の代表状態としてホジキン病以外の悪性リンパ腫全般と書きましたが、

これも悪性リンパ腫自体も幅のある概念なので、適切ではないかもしれません。しかし抗がん剤や放射線療法が有効なものも結構あるということ、そして異物除去システムの要であるリンパ球の腫瘍性変化であることから、

ここを起点にして考えると全体像が見えやすいのではないかと思い、このようにまとめてみた次第です。


さて、ここで一つの疑問が生まれます。今回の考察のきっかけとなった「肉腫に糖質制限食が著効する」という話を思い出しましょう。

上述の仮説は糖質制限の効きやすさと抗がん剤・放射線療法の効きやすさは大体リンクしているという結論を導いています。

なのに、肉腫は糖質制限食は効くことが示されましたが、抗がん剤や放射線治療はあまり効かないことがよく知られている腫瘍です。その一方で手術療法は第一選択であり、それで西洋医学的に根治に至るケースも珍しくないと聞きます。

となれば、糖質制限食と抗がん剤・放射線療法の効きやすさが連動していないということになります。いきなり例外だということになるのでしょうか。例外の多い理論は、その理論的根拠が根底から間違っている可能性も考える必要があります。

ただそれについてはこんな風にも考えることができます。

そもそもなぜ肉腫で手術療法が第一選択に選ばれるかと言えば、転移が少なく、比較的塊を持った細胞集団となっているからだと思います。

これは言わば秩序を持った細胞増殖性の環境適応であり、上記仮説で言えば肉腫の代表状態はⅱ)の状態に該当するのではないかと思います。

ⅱ)であれば理論上、抗がん剤や放射線療法は効くはずです。しかしそれが実際に試みられることはありません。なぜならば手術で取りきれて、根治が目指せるからです。

ところが稀に手術では取りきれなかったりする場合があり、肉腫でも抗がん剤や放射線療法が試みられる場合があります。

日本整形外科学会が策定した「軟部腫瘍診療ガイドライン2020」には、肉腫とほぼ同義の悪性軟部腫瘍についての治療方法や治療成績が詳しく記載されています。

例えば「手術可能な高悪性度軟部腫瘍に対して周術期化学療法による生存の改善効果が 6%と小さいことから,軟部肉腫全般に対してルーチンに周術期化学療法を行うことは推奨されない」などと抗がん剤の効果が限定的であることも書かれていますし、

放射線療法については「わが国では併用すべき症例のコンセンサスが確立していないことや,局所制御率の改善はあるものの予後の改善が明らかでないこと,副作用の増加が避けられないことより,対象を慎重に検討することが通常である」となかなか厳しい書き方です。

こうした文章を読むと肉腫への抗がん剤・放射線療法の効果は限定的だと思えてしまうかもしれませんが、ここでグラデーションの存在を意識すると次のように考えることができます。

1つは「そもそもⅱ)ではなくⅲ)の状態へと移行した肉腫に対して手術を行ったために、残ったがん細胞は抗がん剤・放射線療法に抵抗性を示した」という可能性、

もう1つは「もともとはⅱ)の状態にある肉腫だったけれど、手術という巨大な侵襲によって強烈に自律神経が乱された結果、術後にⅲ)へと進展してしまった」という可能性です。

つまりいずれにしても手術というプロセスを経て抗がん剤・放射線療法の効果を検討しているので、上記の2つのパターンでいずれにしても治療抵抗性のがん細胞を相手にしてしまっているのではないかということです。

もしかしたらⅱ)の状態にある肉腫に対して、手術を行わずに抗がん剤や放射線療法を施せば、確かに腫瘍を縮小させることができたという未来が待っているのかもしれませんが、

手術が第一選択になっているが故に誰も確認したことのない未来となってしまっているのかもしれません。

そしてこれから手術前であれば抗がん剤や放射線療法がよく効くのかどうかを確かめようとしても、すでに診療ガイドラインで手術が第一選択になってしまっているので、誰も確認することができません。

こうして肉腫に対する抗がん剤・放射線療法の本当の効き方が闇に葬り去られてしまっているのかもしれません

そして皮肉なことにエビデンスばかり見ているとこの可能性に決して気づくことはできないのです。

でも仮に手術前に抗がん剤・放射線療法が効くのだとしても当然私はお勧めしません。なぜならば肉腫には糖質制限食が効くことがわかっているからです。

でもよく考えれば手術が第一選択になるのは肉腫に限った話ではありませんよね。

またほとんどのがんは抗がん剤や放射線療法の治療効果は限定的です。一時的には小さくなったとしてもかなり高い確率で再発しますし、次第に効かなくなり同時に副作用も積み重なっていきます。

そのほとんどのがん患者さんがたどる経過は、細胞目線で言えばひっきりなしに襲ってくる巨大な細胞へのストレスに対して何とか生存できるように秩序を乱してでも細胞死抵抗性の環境を行い続けている結果のようにも私には見えます。

そして細胞目線でそのような悲劇を避けるためには、高インスリン血症を避けること(糖質制限食)と、自律神経過剰刺激状態を整えること(ストレスマネジメント)で、細胞が①細胞増殖性の変化も②細胞死抵抗性の変化もしなくて済んで元の細胞に戻ってもらうということに私は可能性を感じます。

「ごめんね。もうそんなに頑張らなくっていいんだよ」って細胞に教えてあげるという主体的医療からのがん治療アプローチが、

もう一つの選択肢として一人でも多くの人に選ばれる世界を目指して普及活動を続けます。


たがしゅう
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2023/06/14(水) 18:49:49 | | #
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