手術をしたらがんが暴れるのではなく、巨大なストレスに細胞が立ち向かっている

2022/10/13 06:00:00 | がんに関すること | コメント:0件

医療界広しと言えども、現代のがん医療をはじめ医療全体に対する問題指摘にとどまらず、

それを長きにわたって言葉にし続けてきた医師は、近藤誠先生安保徹先生をおいて他にいなかったのではないかと思えます。

パイオニアの宿命なのか、異端視され続ける中で両先生ともに平均寿命を前にしてのご逝去でその心労はいかばかりだったであろうと推察します。

医学界からは異端視されていても、全国に両先生の支持者がたくさんおられることが、お二人の主張に一定の合理性があったことをよく物語っているように私は思います。

奇しくも、両先生が亡くなられて以降、私はお二人が書き残された文章を改めてよく読むようになりました。

例えば、近藤誠先生の近著である次の本にはこんなことが書かれていました。




医者が「言わない」こと 単行本(ソフトカバー) – 2022/7/4
近藤 誠 (著)


(以下、p57, p123-125より部分引用)

(前略)

僕はこれまで激しいバッシングを受けてきました。

ただ唯一、医者たちから反対されなかった事項があります。

手術をしたら「がんが暴れる」。手術をしたために早死にするケースがある。

このことです。

(中略)

手術をすると眠っていたがんが暴れ出す可能性があると述べましたが、その主役となるのが「休眠がん細胞」です。

(中略)

では、手術すると休眠がん細胞が暴れ出す理由はなにか。

たとえば包丁で指を切ったような普通のケガでは、傷ついた正常組織をもとどおりにするため、

白血球から「成長因子」や「増殖因子」と呼ばれるサイトカイン(=たんぱく質)が分泌され、正常細胞が活発に分裂して傷を治します。

臓器を摘出する手術は、大ケガをさせるのと同じことなので、サイトカインも大量に分泌されます。

他方でがん細胞は正常細胞から分かれたものなのでサイトカインに反応し、活発に分裂を始めるのです。

これらサイトカインは、血流にのって全身をめぐり、からだのどこに休眠がん細胞があっても、分裂・増殖させることができます。

(引用、ここまで)



まず、この「手術でがんが暴れる」という現象があること自体は、近藤先生のみならず、多くの医者が認めているというわけです。

ただ一般的な多くの医師はこの現象が起こるのはごく限られた進行期がん(例えば胃がんの腹膜播種)に限られた現象であって、

まさか早期がんにおいても同様の現象が起こっていると認識していることはないはずです。

ところが引用文で紹介した「なぜ、手術するとがんが暴れ出すのか」についての近藤先生の見解は、早期がんであろうと進行期がんであろうと通用する理屈ではないでしょうか。

忘れがちですが、手術は人為的に大ケガを負わせることでもあります。もしも麻酔なしで同様の介入を行えば死んでもおかしくないくらいの巨大な侵襲(ストレス)です。

これがそのストレス対抗システム(組織損傷修復システム)を強烈に活性化し、その結果大量分泌させられるサイトカインが血流に乗って全身に細胞分裂・増殖のシグナルを送るように促しているのであれば、

手術で安全領域も含めて大幅に取り切ったにも関わらず、再発するという事態がまれでなく起こっているのは、

もともと目に見えないレベルで隠れていた病巣や転移巣があったからというのではなくて、

その手術という巨大な侵襲を加えさえしなければ分裂・増殖することのなかった細胞をがん化させてしまうということでも、少なくとも理屈上は説明がつきます。

そうなると例えば、「早期がんなので小さいし、さほどの心配はしていないけど、万が一に備えて念の為手術で取ってもらっておいた方が安心」という理由で手術を選択する人にとっては、

本当にその選択でよいかどうかについて考える余地が出てくるのではないでしょうか。

なぜならば、がん細胞を取り切ったはずの手術後に新たながんの病変が出現した際に、本当は手術の巨大侵襲で新たな休眠細胞ががん化したのかもしれないのに、

「残念ながら再発です。手術で取りきれない微小な病巣が隠れていたようです。抗がん剤で叩きましょう」などと言われながら、より深刻な流れへと進んでいってしまうからです。


もっと言えばこの「がんが暴れる」という表現自体も適切だろうかと私は思っています。

一般的な医師はがんを根絶すべき敵役のように見ているので、「(特にタチが悪くなる末期において)がんが暴れる」という表現はしっくりきます。

近藤先生はがんを避けられない運命(老化現象)のように見ているので、「(眠っていた)がんが暴れる」という表現はこれもまたしっくりきます。

ただがんを身体からのメッセージ(環境変化に対する正当な適応反応)とみなす私から見れば、手術侵襲を加えた後の細胞の変化を「がんが暴れる」と表現することは適切ではありません。

「がんが暴れている」のではなく「手術という巨大なストレスが加わり激変した環境を乗り越えるために何とかして細胞が立ち向かっている」という風に私は見えます。

これが交通事故のように不可抗力として起こる大ケガであったとしたら避けようがないわけですが、

手術という人為的な大ケガは自分次第で避けることができる巨大ストレスです。

そもそも本当にその手術という巨大ストレスを加えてまでやるべきことなのかどうかということをより強く考えさせられます。

異端を排除する以外の方法は他にないものか

ここでもそのことを強く考え直させられます。


たがしゅう
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