「体力が落ちている」のではなく、「自然の流れに沿っている」
2022/07/21 12:10:00 |
運動に関すること |
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今年私は齢42歳になりますが、それなりに体力の衰えを感じてきています。
例えば電車に乗り遅れそうだからと駅までダッシュすると、尋常でなく汗をかいたり、息切れしてしまったり、夜ふかしがなかなかできなかったり。
ただその状況を私がネガティブに感じているかと言えば、あまりそのようには思っておりません。
なぜならば走りさえしなければ元気ですし、夜遅くまで起きようとせずに夜になったら大人しく寝れば疲れも回復するからです。
年齢とともに体力が落ちていくのは当たり前の話で、そもそもこの「体力が落ちていく」という表現もどうかと思っています。
落ちていくのではなく、人生のステージに合わせて「体力が変わっていく」というイメージで捉える必要があるのではないかと私は考えています。

人生における体力というのは上図のように山なりの流れで変化していくと私は考えています。
もちろん、山なりにならないように人生の後半期に運動や筋トレを行なって体力を変化させないようにしている人達の努力を私は尊重します。
ただ私にとって上図の流れは、地球が太陽の周りを法則に従って回るとか、季節が春夏秋冬と移り変わっていくというのと同じような自然の流れだと受け止めているので、
これに逆らおうとするよりも、この流れに沿って生き方を整えていく方が私にとっては居心地の良いことに思えます。
また20−30代の体力がピークの状態を基準に考えてしまうから、それ以降の人生を「体力が落ちていく」と感じてしまうわけで、
例えば、同じ体力の低下でも赤ちゃんや幼少期の頃の体力を「体力が落ちている」と感じるでしょうか。
その時期、それ相応の体力が備わっていて、それをありのままに受け入れている、というかそこまでごちゃごちゃ頭の中で考えたりしていないことでしょう。
ところが大人になると色々な知識や常識によって価値観が固定されてきますから、普通に生きていると「体力が落ちている」という解釈を強固に信じて生きていくことになってしまうのだと思います。
その結果何が起こるのかと言いますと、40代以降の人達の中には「今の自分は本来あるべき姿ではない」という思いが頭の中を巡り続けることになり、人によってはその本来あるべきではない状態におかれていると感じることによって慢性持続性ストレスがかかり続けて、
皮肉なことにそのような価値観を持ち続けることがさらに自身のシステムを過剰適応させて、さらに消耗疲弊へと導かれて、余計に体力を低下させていくという流れに進んでいってしまうのだと私は思います。
おそらくですが、例えば老いている動物は人間の目から見て「体力が落ちているなぁ」と思えるような行動をとっていたとしても、
その動物にしてみれば体力が落ちているという意識は全くなく、動かせる筋肉を動かしたい時に動かし、疲れを感じたら休むというサイクルをその状態なりに繰り返しているのだろうと思うのです。
人間も体力のピークを超えていく時期を過ごす際にはそのようにありのままの体力を大事にしていくような生き方を基本におくべきなのではないかと私は考えています。
もちろんそれはあくまでも基本的なことで、人生の中で基本を逸脱せざるを得ないような不意の出来事に遭遇することはいくらでもあると思います。冒頭の私の駅までダッシュするというのはその一例です。
そうした時に息切れや多汗を感じた場合は、「あぁ、今自分は自分の体力に見合わない負荷をかけてしまったんだな」と解釈して、その後の行動を調整すればいいのだと思うのです。
もちろん調整の仕方には様々な選択があります。そんな風に息切れしなくて済むように運動や筋トレ習慣を作ることも一つでしょうし、そもそもダッシュしなくて済むように時間管理を工夫するというのも一つでしょう。
ですが前者の体力を上げることで適応しようとする考え方は、ある意味で自然の流れからは逆らうやり方です。例えるのであれば台風が起こるのを無理やり封じ込めようとするようなやり方だと思います。
言い換えれば上図の山なりのイメージを山なりではなく、図の右側を平坦もしくは右肩上がりに変えていくようなアプローチだと思います。本当に台風を封じ込めることができるかどうかは別として、40代以降の体力を増やそうという行為は、その延長線上に台風を封じ込めることにも通じる無理な行為があるという認識が私にはあります。
20〜30代のピークからまだそんなに離れていない40代、50代の時期はまだそれが努力によって達成できているように思えるかもしれません。しかし時間が経過するにつれて現状を維持するために費やす必要がある労力はどんどん大きくなっていきます。なぜならば人生の体力は山なりに推移するという絶対的な自然法則があるからです。
そうすると現状維持できなくなった際に、それまで現状を維持するために多大な努力を行なってきた中で、その下がっていく状況をニュートラルに受け止めることができるかと言えば、価値観によってはなかなか厳しいものがあるように推察されます。
だからこそ自然の流れに逆らわずにありのままを受け入れて生きていくことは、結果的に苦しみを最小にするための基本ではないかと私は考えているのです。
ですがだからと言って、自然に逆らわずにただただ受け入れるというのは、それはそれで違うと思っています。「調整する」という発想が重要だと思っています。
台風で言えば、台風が来ることは受け入れるけれど、台風が来ても被害が甚大にならないように家屋を補強したり、備蓄を用意しておくような行為は「調整する」ことだと私は考えます。
そういう意味で言えば、運動や筋トレで体力を落とさないこともまた「調整する」行為の一つです。
ただ問題は、上図の山なりのイメージを持った上でそれを行なっているか、いつまでも若い状態を保ち続けることが理想だと思っているかどうかという辺りではないかと私は思います。
同じ「調整する」行為でも、例えば行動範囲を減らす、筋肉を動かす時間と筋肉を休ませる時間の比率を見直すという方法もあると思います。
どちらが正しいという話ではないものの、少なくとも自然の流れを意識できているかどうかは、知らず知らずのうちに自分に不要な慢性持続性ストレスをかけないようにするために重要なことだと私は思います。
歴史上、自然の流れに根本的に逆らおうとすることでろくなことは起こっていません。
がんを手術で取り去ろうとすること然り、除菌・殺菌・滅菌で細菌を死滅させようとすること然り、ワクチンでウイルスを撲滅させようとすること然り、です。
いかに自然の大きな流れを受け止めながら、それに大きく逆らうことなく「調整する」という行為を行い続けるかというところに、
私たちにとって本当の意味で幸せな人生への道が拓かれているのではないかと私は考える次第です。
体力の衰えに悩む人達の助けに少しでもなれば幸いです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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