ただの風邪に後遺症を生じさせるメカニズム
2021/09/18 10:50:00 |
医療ニュース |
コメント:5件
「コロナはただの風邪」という表現は、これを捉える立場によって見え方が大きく変わります。
重症例も含めたコロナ患者に対応している医療従事者側から見れば、「何も知らない素人が現状の危機を甘く見積もってしまっている発言」であるように思えるでしょうし、
普段コロナ患者と接する機会はなく、ネット上の情報をもとにコロナがたいした病気ではないと判断している一般人からすれば、「恐れる必要のない取るに足らない病気だと宣言する発言」であるように思えるでしょう。
ですがコロナには、海外でLONG COVIDなどと称される、いわゆる「後遺症」があるということがよく知られてきています。後者の捉え方をしている方も、さすがに「後遺症」があるというのは「ただの風邪」と認識するのに無理が出て来るのではないでしょうか。いわゆる「ただの風邪」に「後遺症」ってありましたでしょうか?
だからこそ、前者の捉え方をしている人は、コロナを軽視する姿勢を非常に問題視しているのだと思います。一方で私のコロナの捉え方は「コロナはただの風邪+α(不安・恐怖情報による修飾)」です。
不安・恐怖情報をコントロールできている人にとってはまさにいわゆる「ただの風邪」で済みますが、不安・恐怖情報に支配されている人にとってはこれがただの風邪では済まなくなってしまうという認識を持っています。そのひとつのパターンが「後遺症」だということです。
先日ネットサーフィンしていたら、たまたまその考えを支持する医学情報に遭遇しました。
COVID-19患者における多様な自己抗体
Nature誌より
2021/07/15
平山幹生(春日井市総合保健医療センター参事)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する液性免疫は、一方で中和抗体として感染から防御するために働くが、もう一方で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において自己免疫疾患における自己抗体のような自己抗体活性が検出されたという報告が相次いでいる。こうした自己抗体が病態の進行に与える影響についてはあまり明らかにされていない。本論文は、Rapid Extracellular Antigen Profilingと呼ばれる高処理の自己抗体探索技術を用いて、軽度あるいは無症状のCOVID-19患者172人と医療従事者22人の計194人のコホートをスクリーニングし、2770種類の細胞外および分泌タンパク質(エクソプロテオーム)に対する自己抗体を検討したものである1)。
検討の結果、COVID-19患者では、非感染者に比べて自己抗体の反応性が劇的に高まっており、そしてサイトカイン、ケモカイン、補体成分、細胞表面タンパク質などの免疫調節タンパク質に対する自己抗体が高い割合で存在することが判明した。これらの自己抗体が、免疫受容体のシグナル伝達を阻害したり、末梢の免疫細胞の構成を変化させたりすることで免疫機能を阻害し、ウイルスに対する防御能を損なわせることが明らかとなった。こうした自己抗体の亢進は、SARS-CoV-2感染モデルマウスを使った検討で、COVID-19の重症度を悪化させていた。また、様々な組織関連抗原に対する抗体が検出され、これらの抗体とD-ダイマー、フェリチン、CRP、乳酸などの炎症性マーカーとの間に相関関係があることも明らかとなった。
以上のことから、COVID-19では、エクソプロテオームに対する自己抗体が、免疫機能に様々な影響を与え、臨床転帰と関連して病態に関与していることが示唆された。
興味深いことに、同定された組織関連自己抗体の中には、post-COVID症候群(PCS)に関与すると考えられるものもあった。例えば、オレキシン受容体HCRTR2 (Hypocretin Receptor Type 2)に対する自己抗体は、覚醒や食欲の調節に重要な役割を果たしていると推定されるオレキシンシグナルを阻害する可能性がある。
(後略)
この医学情報を一般的な医療従事者が見れば、「コロナはなぜか自己抗体まで産生させる恐ろしい病気だ。とてもではないがただの風邪などではない」という認識になってしまうかもしれませんが、
自己抗体が産生されるということは、状態が「自己免疫疾患化」してきているということです。ちょうど私は病気が自己免疫疾患化していく背景にはT細胞の過剰活性化があるという考察をしたばかりでした。
しかももう少し前には、「自己免疫疾患化」していく背景には不安・恐怖情報により免疫システムの攻撃性が高まり続けていくことが深く関わっているということも考察していました。
あとは「不安・恐怖がT細胞の過剰活性化につながる」という事実さえ確認できればつながります。それで調べてみると、「PD-1欠損マウスではT細胞が過剰に活性化し、不安・恐怖が高まる」という研究結果がありました。
おしいですね。これはT細胞の過剰活性化状態を人為的に作ると不安・恐怖を生み出すことができるという話で、今知りたいのは不安・恐怖があるとT細胞が過剰に活性化されるかどうかという話です。
ところがこれまた私の以前の考察で、ストレスに伴って発生する高血糖状態は、T細胞集団をエフェクターT細胞に傾ける、すなわちT細胞を過剰に活性化させるという現象につながるということを指摘したことがあります。
こうなって来ると「T細胞の過剰活性化状態」と「不安・恐怖状態」という2つの状態は表裏一体、相互に関係しあう状態だと言っても過言ではないのではないでしょうか。
それにT細胞の過剰活性化状態を人為的に生み出した「PD-1欠損」という方法、ここに出てくる「PD-1」というのは新規抗がん剤「免疫チェックポイント阻害剤」でブロックする「免疫チェックポイント分子」の一つです。
「免疫チェックポイント阻害剤」は以前にも触れたように、その副作用に「自己免疫疾患」化、ひいては「サイトカインストーム」があります。
ここまでくれば何らかの形でT細胞が過剰に活性化されてしまえば、「自己免疫疾患」や「サイトカインストーム」につながりうるということが立証されたと言っても過言ではないように私は思いますが、読者の皆様、いかがでしょうか。
そしてその「T細胞を過剰に活性化させる要因」として、不安・恐怖情報というのは立派な理由となり得るわけです。
従って、コロナの「後遺症」は、「コロナはただの風邪+α」の「+α」部分が不安・恐怖情報によって肥大化した一表現型だと考えられますし、
その背景には、過剰に活性化されたT細胞が「他者(非自己)」を非常に攻撃し続けるような状況を作り続けた結果、
「自己」さえも「非自己(他者)」だと誤認してしまう現象が起こり、それが自己抗体が産生されるという形で器質化してしまったというメカニズムがあるということも理解できるようになります。
そう考えれば、これまでの「ただの風邪」にかかった人であまり「後遺症」が残るという人を医療現場で見かけなかった理由も説明がつきますし、
コロナは不安・恐怖情報さえコントロールされていれば、原則的に「ただの風邪」だという考えにも医学的根拠を持って納得しておくこともできますし、
ひいてはこの細胞環境における「不安・恐怖」と「T細胞過剰活性化」との間の関係性は、
人類集団全体にも応用することで、「不安・恐怖」を元に他者に対して攻撃的になり続けることは、人類全体の恒常性を保たせることからもかけ離れていってしまうという教訓へもつながります。
ですから私達がすべきことは「恐怖の病気としてゼロコロナを目指すこと」でもなく、
「コロナを軽んじて、コロナを怖がる人達を見下すこと」などでは決してなく、
平等・公平・平穏を胸に他者をむやみに攻撃することなく尊重し、多様な価値観を認め合って共存させるポリフォニーの状態を心がけることなのではないかと私は考える次第です。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
そして、当時を思い出すと、厳寒の中、病院の内外に放置された患者が多数いて、「これじゃあ只の風邪でもバタバタ死ぬんじゃないかな」と感じていました。
あと、感染症学会の方々が、「怖い怖い」と煽っていたことです(煽り続けていますが)。
今回の記事を読んで、「ヒトが自らコロナに対して弱い存在になってしまった」ように感じました。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 人々がコロナを怖がるようになった切っ掛けは、武漢での死者の多さだったと思います。
> そして、当時を思い出すと、厳寒の中、病院の内外に放置された患者が多数いて、「これじゃあ只の風邪でもバタバタ死ぬんじゃないかな」と感じていました。
> あと、感染症学会の方々が、「怖い怖い」と煽っていたことです(煽り続けていますが)。
見えない概念を怖がることが出来る動物は世界広しと言えどヒトだけだと思います。また実際には見ていないけれど、テレビで流れる映像から想像を膨らませて不安や恐怖を感じることができる動物もヒトだけでしょう。
それがよい影響をもたらしたフェーズもあったと思いますが、今は科学の進歩という名の科学の暴走によってその特徴が全体の秩序を保つという観点から見ると大きく歪め続けているというフェーズにあるように思えてなりません。なりゆきに任せると崩壊をただ待つのみとなってしまうので、せめてもの抵抗を、仮に崩壊しつくしたとしても再生できるように、人為には人為で修正し続けていきたいと私は考える次第です。
No title
今回の記事と前回の記事を比較すると、統合失調症の方ほど、主体的に考えることができて、だからこそ対話が効果あるのかと感じました。
(世間的に優秀な人材とのやりとりほど、虚しい対話としか感じられなかった、タヌパパの愚痴です。)
この間先生に教えて頂いたとおり、副反応が強く出たので2回目のワクチンは打たないと言うつもりでした。しかしながら幼稚園から、今後は大型連休の時、親がワクチン接種をした人から優先で預かる事にするかもしれないと言われました。主人は仕事で全国に出張するため、
色々相談した結果2回目を昨日打って来ました。
今朝は腕が上がらず、微熱が出ています。
因みに風邪では無いからなのか?シックデイでは無いようです。
もうワクチンを打ってしまったのだから、余計なストレスを溜めないようにして、糖質制限をして行きたいと思います。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
よく考えられた結果のあっぴさんの選択を私は尊重いたします。
私も同じ立場であればそうするのではないかと思います。
一方でやはり社会の歪みを感じざるを得ません。私としてもこのまま放置するつもりはなく、時間はかかるかもしれませんが「対話」をキーワードに変革のための活動を私のできる範囲で続けていきたいと思います。
あっぴさんは糖質制限食という心強い武器をお持ちなのできっと大丈夫です。
所詮は異物除去反応に過ぎませんので、反応がスムーズに収束できるように引き続き心と身体を整えてもらえればと思います。
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