獲得免疫をむやみに活性化させてはならない

2021/09/11 17:45:00 | お勉強 | コメント:0件

自己免疫疾患」というのは、本来は外敵を攻撃システムが間違って自分の組織を攻撃してしまう病気です。

関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、橋本病(甲状腺機能低下症)、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、1型糖尿病、などなど・・・、「自己免疫疾患」とされている病気には様々なものがあり、「難病」だと指定されているものも少なくありません。

さらには「自己免疫疾患」というカテゴリーの中には含まれてはいないものも、病態に「自己免疫」が関わっているとされる病気もたくさん存在しています。「多発性硬化症」という病気もその一つです。

「多発性硬化症」というのは、神経細胞が筋肉や中継ニューロンに電気信号で指令を伝える際の絶縁体部分に相当する「髄鞘(ずいしょう)」と呼ばれる部分に対して自己免疫的な機序で破壊が起こる、というのが主たる病態であり「脱髄性疾患」と呼ばれています。

そんな「多発性硬化症」と同様の病態を実験動物に対してとある操作を行うことで再現することができることが知られています。これを「実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE)」と言います。

その「とある操作」というのが当初は何と、狂犬病の弱毒生ワクチンや、ワクチンのアジュバント、あるいは百日咳の毒素を打ち込むという行為だったそうです。現在では流石に中枢神経に存在する蛋白由来のペプチドに置き換えられています。 数多くの「自己免疫疾患」は世界中の研究者が叡智を集めて原因を調べていますが、はっきりとした原因は特定されておらず、根本的治療法も確立していないというのが実情です。

その一方で、このように「自己免疫疾患を人為的に発症させる」という行為には人類は一部成功しているということが言えると思います。

そう言えば私はもう一つ、「自己免疫疾患を人為的に発症させる方法」を知っています。

それは、免疫チェックポイント阻害剤という末期癌に対して限定で使用することができる新規の抗がん剤です。2018年にこの薬の開発の功績で本庶佑先生がノーベル生理学・医学賞を受賞されたことでも有名です。

この免疫チェックポイント阻害剤のメカニズムの肝は、「T細胞の過剰活性化」でした。つまり普段であれば攻撃しない末期癌になった時だけ出て来て、T細胞から攻撃されることを回避するように仕向けるPD-1、CTLA-4などのがん表面抗原(免疫チェックポイント分子)に、

「いやそれでもアイツを攻撃しなさい」と命じるように免疫チェックポイント分子の働きを阻害して、結果的にT細胞に過重労働を強いるように仕向けているというところにあります。この過重労働指示にT細胞が耐えられた時に、それまでの一般的な抗がん剤では縮小できなかった末期がん細胞を縮小させるという成果をあげることができるという、そんな薬です。

振り返って、「多発性硬化症」ひいては「実験的自己免疫性脳脊髄炎」の中ではどんな病態が起こっているのかについて、

私が時々読んでいる実験医学という雑誌の中に詳しく書かれている論説がありましたので引用してみたいと思います。



実験医学増刊 Vol.39 No.15 神経免疫 メカニズムと疾患〜神経系と免疫系を結ぶ分子機構の解明からバイオマーカー・治療標的の探索まで 単行本 – 2021/9/6
山村 隆 (編集)


(p32-33より一部引用)

(前略)

MS(多発性硬化症)の病型分類としては、脱髄と再髄鞘化が反復する最も典型的なMS病像である再発寛解型MS(RRMS)の他、RRMSに続いて緩徐進行性の神経変性病態へと移行する二次進行型MS(SPMS)、および神経障害が主因となる一次進行型MS(PPMS)がある。

RRMS患者の約半数が、発症後10年前後の期間を経てSPMSに移行する。RRMSでは、いわゆるTh17細胞を含む自己反応性T細胞が中枢神経系に浸潤し、炎症の遷延化を生じることで脱髄やグリオーシスを引き起こす。

(中略)

先行するRRMSで生じる顕著な自己免疫応答は、SPMSへの移行とともに徐々に減弱し、神経変性主体の病態に移行するとされる。

(中略)

SPMSにおける免疫系の関与については、これまでに明確なコンセンサスは得られていない。

それでもCCL2とFlt3 ligandのトランスジェニックマウスを用いたEAEの報告から、自然免疫の活性化による進行型病態が生じる可能性が示唆された。

さらにSPMS患者死後脳解析から得られた局所的な免疫応答を示唆する結果として、髄膜周囲の異所性リンパ濾胞構造が注目されている。

RRMS患者には認められてないこの構造は、T細胞、B細胞、プラズマ細胞や濾胞樹状細胞などからなり、胚中心様のB細胞の増殖が生じていることから獲得免疫応答の活性化が示唆される。

(中略)

SPMSの神経変性病態に対するこれらの神経細胞死の関与は必ずしも十分には検討されてはいないが、これらの実験モデルや病理学的検討から、少なくともT細胞依存性神経細胞死による神経変性病態形成は、十分ありえるシナリオである。

(中略)

SPMSの病態形成過程に獲得免疫系が深くかかわることはきわめて確からしいと考えられる。

(引用、ここまで)




聞き慣れない単語が連発したのではないかと思いますので、

私がこの引用文で大事だと思うポイントをかいつまんで説明します。まずは次の図をご覧下さい。


(※画像がこちらのサイトから引用)

一口にMS(多発性硬化症)と言っても、一時的に悪化するが治療により可逆的に改善する発作を繰り返す経過を示す「再発寛解型(Relapsing-Remitting)」のMS、通称「RRMS」と、

一時的な発作ではなく治療により軽度改善はあるが完全には治りきらず時間経過とともに後遺症が蓄積されていく「一次進行型(Primary Progressive)」のMS、通称「PPMS」の二つが大きくあります。

この2つは、一旦かかっても可逆的に治るいわゆる「風邪」の例と、かかって治療を受けて軽度改善するけど後遺症が残っていく「コロナ重症」の例との関係に似ているところがあります。

そして最初は「RRMS」だったけれど、次第に「PPMS」の要素が強くなっていくというパターンもあって、これを「二次進行型(Secondary Progressive)のMS」、通称「SPMS」と呼びます。

これにリンクする状況は、何度も「風邪」を繰り返しているうちに、だんだんこじれて完全に治らなくなり次第に弱っていくという状況だと思います。

さて、そうした「RRMS」「PPMS」「SPMS」といった3つのMS(多発性硬化症)病型の、いずれにも「T細胞の過剰活性化」が関わっているという内容が、今回私が非常に重要だと考えているポイントです。

そして病気の勢いとして比較的軽い「RRMS」では認めらず、病勢の重い「PPMS」に認められる現象として、

自然免疫系の活性化に加えて、獲得免疫系の活性化があるという構造があることがほぼ間違いないということが書かれています。

しかも獲得免疫系の活性化を経て起こっている現象が神経変性、しかも「T細胞依存性神経細胞死」だという点にも注目すべきでしょう。

要するに「T細胞が過剰に活性化されすぎて過労となった結果、それまでは可逆的であった神経細胞疲労が不可逆的な神経細胞死へと移行してしまう」ということです。つまりMSにおける不可逆的な後遺症は言わば「T細胞の過労死」だということです。

もっと言えば、ワクチンやワクチンのアジュバントを投与する行為が多発性硬化症の発症を実験的に再現できるということは、これが異物除去反応を駆動し自然免疫を活性化する行為であると同時に、特定の抗原だけが不自然なほどに多く入り込んで来ることで「獲得免疫系を過剰に活性化させる」行為でもあるということです。

獲得免疫系を過剰に活性化させる行為は、ワクチンの原理そのものです。近年ワクチンで「ADE(抗体依存性感染増強)」という副作用が取り沙汰されるようになりましたが、

これは獲得免疫の過剰活性化がT細胞依存性神経細胞死につながるプロセスを見ているという可能性があります。

そう考えると免疫チェックポイント阻害剤が自己免疫疾患を発症させるという事実も、この薬が「T細胞を過剰に活性化」させているわけですからある意味必然的な現象と言えます。

さらに言えば、「PPMS」を私はコロナが重症化して後遺症が残っていく状況にたとえて説明しましたが、

振り返れば、コロナの重症例で発生しているサイトカインストームも言ってみればT細胞の過剰活性化状態です。

その意味で、「PPMS」と「コロナ重症例」は単なるたとえでつながった関係ではなく、本質的には「T細胞依存性の不可逆的神経細胞死状態」という共通病態を備えていることになります。これが比較的ゆっくり起こるか急激に起こるか、あるいはどこの部位を中心に起こっているかというだけの違いで本質的には同じことが起こっているように私には思えます。

ちなみにADEは2009年の新型インフルエンザウイルスに対するワクチンや、2014年のデング熱ウイルスに対するワクチンの開発失敗のあたりから注目されてきた現象ですが、

これが本質的には「T細胞依存性の不可逆的神経細胞死」につながるイベントだという観点でみると、麻疹ワクチン接種後に稀に発症するSSPE(亜急性硬化性全脳炎)や、撲滅したとされる天然痘ウイルスへのワクチン接種である種痘で稀に起こっていた種痘後脳炎などの状態にもワクチン接種後のADEが関わっていた可能性が否定できません。

獲得免疫を活性化させる条件はどんな場合かを考えると、特定の抗原が過剰なまでに入り込んでくる状況ではないかと考えますので、ワクチン接種は勿論、コロナワクチンで用いられているmRNAワクチンのように接種後にスパイクタンパク質を不自然に体内で産生させるような行為も獲得免疫系を過剰に活性化させる行為となりえますし、その証として「抗体」が振り切れるくらいに高くなっているのだとすればどうでしょうか。

私達は「抗体が出来てよかった」と喜んでいる場合ではなく、むしろ獲得免疫を過剰に活性化させて「抗体」を過剰に作らせてしまう行為そのものを避けなければならないと考える必要があるのではないでしょうか。

これはワクチンの根本が揺らぐ話であると思います。感染症専門医の先生からは決して出てこない考察だと思いますが、

私はこの考えはかなり芯をついているのではないかと自負します。なぜならば過去の考察と矛盾が生まれていないからです。

そもそもコロナにかかって無症状や軽症で済んでいる人は「抗体」には全く頼っていないことがすでにわかっています。

勿論、そもそもPCR検査が死んだウイルスをひっかけているだけでそもそもコロナですらないという可能性だってあるわけですが、

いずれにしても無症状や軽症のコロナ患者が「抗体」に頼っていないということは紛れもない事実でしょう。


「抗体」神話はすでに崩れ去ったといってもいい状況です。

獲得免疫を不自然に活性化させないことが大事となってくれば、ワクチンの意義も根本から見直す必要があります。

それでもワクチンが信じられる人はそれはそれでいいと思います。でも私は自分が納得できない行為は人から勧められても行いたいとは思いません。

そして単にワクチンを打たないで終わるのではなく、「では、どうする?」という疑問に対する答えは、

単にコロナを予防するにとどまらず、多発性効硬化症をはじめ他様々な自己免疫疾患の発症を予防する行為へもつながっていくと、

そのような構造を私は見通しています。


たがしゅう
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