見えない異常がこじれて見える異常となる

2017/11/21 00:00:01 | ふと思った事 | コメント:4件

一般的に高血圧症の9割は原因不明と言われています。

原因がわからないので血圧を上昇させうる塩分を控えるよう指示されたり、

今やその意義さえ見出せないカロリー制限を指導されたり、運動療法を指導されたりして、

よくならなければ仕方がないから血圧を下げる薬が処方され、

原因に対処できないので基本的に一生その薬を飲み続けることになる、というのが悲しいかな日本のほとんどの病院で行われている医療の実情です。

そんな中、残りの1割は明らかな原因のある高血圧症で、これを二次性高血圧症と呼びます。

二次性高血圧症は薬とは別で根本原因に対処することができる場合があるので、これを見逃さないようにと私達は医者になる前に医学部で教育されます。 二次性高血圧症に対して、9割の原因がわからない高血圧症のことを「一次性高血圧症」と言います。

また医学の中には似たようなことが別の言葉で表現されることがよくあって、

二次性高血圧のように何か構造に異常があって病気が起こるものを「器質性」、

「一次性高血圧症」のように構造には異常はないけれど、働きに異常があって病気が起こるものを「機能性」と呼んだりもします。

要するに「見える異常」と「見えない異常」の違いだということです。


さて、原因不明と言われている9割の「一次性高血圧症」ですが、

私はその大半の原因は糖質の頻回過剰摂取、より正確に言えば「高インスリン血症」だと考えています。

インスリンが必要以上に分泌されることで脂肪細胞にはどんどんと脂肪が取り込まれ、

個々人で異なる脂肪細胞のキャパシティを変えれば、インスリンが効かなくなる「インスリン抵抗性」を示し、

それでも出てくるインスリンが酸化ストレスを引き起こしたり、炎症の元となってしまうからです。

その結果、動脈硬化が進行し血管が硬くなり、またインスリンのせいで糖と共に血管内に過剰に取り込まれた水と塩分が血管をパンパンにして血圧が高くなる。

これが一次性高血圧症の病態の詳細だと思っています。

また、太っているかやせているかはインスリンに対する脂肪細胞のキャパシティの個人差によるものなので、

高血圧の人はすべからく糖質制限をすべきだと考えています。

そしてその視点を持って改めて二次性高血圧症を眺めてみると、

一次性高血圧症と二次性高血圧症には密接な関連があるように見えてきます。


例えば、二次性高血圧症にはどんなものがあるかと言いますと、

腎実質性高血圧症:腎臓に器質的な異常がある高血圧症(腎硬化症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症など)
腎血管性高血圧症:腎臓に入る血管に動脈硬化がある影響で、腎臓が過剰に昇圧ホルモンを出してしまう高血圧症
クッシング病:ホルモンを分泌する下垂体に腫瘍が出来、昇圧作用を有するホルモン(コルチゾール)を過剰に分泌してしまう高血圧症
原発性アルドステロン症:ホルモンを分泌する副腎に腫瘍が出来、昇圧作用を有するホルモン(アルドステロン)を過剰に分泌してしまう高血圧症
褐色細胞腫:ホルモンを分泌する副腎に腫瘍が出来、昇圧作用を有するホルモン(カテコラミン)を過剰に分泌してしまう高血圧症


主に腎臓関連の異常と腫瘍系の異常に分けることができます。

一般的な医師は二次性高血圧症のことを一次性高血圧症とは全く別物の病態と捉え、

腎臓の異常があれば腎臓内科に紹介したり、腫瘍が見つかればその場所を専門に扱う外科へ紹介します。

しかし腎臓内科でなされることは生検で診断を確定した後により厳格な降圧薬やカリウムが上がらないようにする薬などを処方されつつ、

治療を受けていてもこのまま行けばあと何年で透析になるかというのを予測されることです。

また腫瘍を外科医に紹介すれば手術で摘出してはくれるものの、

なぜ腫瘍ができたのかについて教えてもらえるわけではありません。

けれどよくよく考えれば、腫瘍ができたのは過剰にインスリンが分泌され、インスリンの細胞増殖作用が出過ぎたためではないのかと、

腎臓の組織が硬くなったり、炎症が起こったり、糖が沈着したり、周りの血管が動脈硬化を起こしたりしているのも、

元はと言えば高インスリン血症にさらされ続けたせいではないのかと、

言い換えれば一次性高血圧症がこじれて二次性高血圧症になったとも考えられるわけです。

見えない異常の原因を取り除かず放置した結果、異常が見えてその時にはこじれて対処困難になっている。

認知症などにも同じ構図が当てはまるように思います。

二次性高血圧症で腫瘍が見つかり、手術で取り除いてめでたしめでたしではありません。

一次性だろうと二次性だろうと、根本原因に目を向けて対処をすべきだと私は思います。


たがしゅう
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コメント

2017/11/21(火) 06:15:24 | URL | T #-
インスリンが過剰に分泌されると、血管内に水分と塩分が増える理由、すみませんが、また教えてください。糖質制限で高血圧が改善された話はよく聞きます。友人もそうでした。けれど糖質制限で何故血圧が下がるのかわからず、その友人は「高血圧には〇〇(酢玉ねぎなど)」に移行、糖質制限から離れました。今回のブログの内容、糖質頻回過剰摂取と高血圧の関係が、私は初めて理解できました。一次と二次の関係もなるほどと思いました。本当にいつもありがとうございます!

Re: タイトルなし

2017/11/21(火) 06:53:56 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
T さん

 御質問頂き有難うございます。

> インスリンが過剰に分泌されると、血管内に水分と塩分が増える理由、すみませんが、また教えてください。

 Wikipedia「インスリン」の中の記載によれば、『インスリンにより交感神経系が刺激され、Na+/H+交換輸送体機能が亢進し、尿細管でのNa+再吸収が増加して、体内のNa+量と水分量が増加して、高血圧や浮腫をきたす』と書かれています。

 インスリンの影響が腎臓に働き続けてしまう事がポイントであるようです。

No title

2017/11/21(火) 09:52:32 | URL | かんな #-
糖質制限歴6年になりますが、一年ほど前から血圧が高くなりました。いつ測っても160/110前後です。
51歳ということもあり更年期高血圧ではないかと思っています。人間ドックでは「要加療」、献血の事前検査では「問題なし」と言われます。
身体の不調はまったくありませんが、高血圧ってほんとうに悪いものなのでしょうか?

Re: No title

2017/11/21(火) 12:52:29 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
かんな さん

コメント頂き有難うございます。

私は基本的に血圧が上がることには意味があると思っています。
御指摘のように更年期ならホルモンを中心に代謝環境が大きく変わり、身体にとってストレスとなりえます。
ストレスを受け続ければ交感神経が活性化し、毛細血管や静脈系を中心に微小循環障害が起こり血液の流れが滞って血圧が高くなります。

しかし裏を返せばそれは滞った血流をなんとか通そうと身体が頑張ってくれている証拠です。
そのことをしっかり認識し頑張っている身体を時々休ませる(マインドフルネスなど)よういたわってあげることさえ忘れなければ、血圧が上がることは必ずしも悪いことではないと思います。

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