ミネラルを食品で補充するアプローチ

2021/05/20 10:50:30 | おすすめ本 | コメント:0件

発達障害とは病気ではなく、その人の個性に過ぎないと私は当ブログで何度も語ってきました

問題は多様な個性を社会が受け止めきれず、画一的な教育システムによって一定のルールを守ることだけが善であるかのような仕組みが出来上がってしまっていることにあるのだと、

そうしたルールからはみ出る個性の持ち主の自由を奪い、さらには本人のみならずその家族にもストレスが加わり続けて、結果として当人に薬剤過敏性を生じてしまったり、あるいは家族が世間からの冷たい目にさらされ続けてしまう構造があると私は感じています。

とは言え、発達障害と呼ばれるこども達の挙動が集団生活に対して和を乱したり、実際に迷惑をかけてしまう結果になってしまう事実がある以上、一概に発達障害と呼ばれるこども達の中にも解決すべき課題があるということでもあると思います。

個性を伸ばすために広くこども達の興味が受け入れられるよう、親を中心に周囲の人間が環境を整えるのはよいとして、

当人の中に潜む問題に対して何とかアプローチすることはできないでしょうか。 私は代謝を安定化させる糖質制限食を、自身が指導する食事療法の基本に据えている立場の医師で、

理論的には発達障害のこどもに対しても糖質制限は有効と考えております。

しかしながら、現実問題として発達障害のこどもに糖質制限食を実践してもらうのは至難の業だと感じています。

なぜなら発達障害のこども達の食生活は極端な偏食が常態化していることも少なくないからです。

具体的に言えば、カップラーメンやお菓子ばかりを食べていて、糖質過多になっているような状況です。発達障害のみならず、繊維筋痛症などの難病にもこうした偏食が関わっているということを私は経験的に知っています

ともかく、糖質に偏った偏食状態にある人に対して、「糖質制限がいいから肉・魚・卵をしっかり食べなさい」と言ったところで机上の空論です。相手が実行に移しそうにないことをいくら言ってもむなしいだけです。

そんな中、私の基本的な考えを大きく揺さぶるような素晴らしい内容の本に出会いました。




食べなきゃ、危険! 【新装版】――食卓はミネラル不足 単行本(ソフトカバー) – 2019/1/20
小若順一 (著), 国光美佳 (著), 食品と暮らしの安全基金 (著)


「食べなきゃ、危険」というタイトルにまず驚かされます。

普通この手の本は、「食べるな、危険!」だと思いますし、私の基本的な考えとしても「プラスの医学」よりも「マイナスの医学」というのがあります。

何かからだによいものを「プラス」しようとする発想は、大抵その場しのぎでゆくゆく問題をこじらせる結果につながるのに対して、

すでに身体をむしばんでいる有害物質を「マイナス」しようという発想は、「プラス」とは比べものにならないほどの治療効果をもたらし、しかも副作用がないし問題をシンプルにするという実感を糖質制限や湿潤療法を通じて医療現場の中で強く持っているからです。

ところがこの本では何かを「プラス」しないと危険だと呼びかけてくるのです。何を「プラス」しようというのでしょうか。


それは「ミネラル」です。

ミネラルとは生体を構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称で、具体的にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄などの元素を指します。

ミネラルというのは酵素や神経伝達物質などタンパク質が主体となって起こす生体内化学反応をスムーズに行うための手伝いをする「補因子」としての働きを持っています。

この本にはその「ミネラル」を摂らないとダメだと書かれているのです。

正直言って、ミネラルは必須栄養素ではあるものの、三大栄養素の中には入っていないし、人体の代謝がうまく働いている限りはそうそう乱れることはないという臨床現場からの実感もあったため、

あくまでも補助的な栄養素だと考えていたところがありました。

しかしこの本の中では、現代人がいかに気づかないうちにミネラル摂取不足にさせられているかということ、

そして発達障害というカテゴリーで扱われるこども達にミネラルを補うというアプローチによって、その問題とされる行動が収まるという実例がいくつも紹介されていました。

注目すべきはその補い方です。例えば冒頭でも述べたようなカップラーメンばかり食べているような子にどのようにミネラルを補うのかと言いますと、

「その食事に天然だしや自作のミネラルふりかけをちょっと足す」という方法で補っているのです。

そんなことで症状が変化するのかと思われるかもしれませんが、この本の中ではこの方法によって少しずつこどもたちが落ち着きを取り戻し、次第に偏食自体も改善されていき、食の好みがミネラル豊富な食品の方へ向かっていくという経過が実にリアルに紹介されています。

本の中にはミネラルを補う方法について、ミネラルふりかけをはじめ様々な具体例が紹介されていますが、ざっくりと言えば煮干しやめざしといっただしもとれる小魚、こんぶやひじきといった海藻類、ごまや雑穀といったタネ類、そしてクルミやアーモンドといった木の実類を活用しています。

これが例えばサプリメントでミネラルを補うというアプローチだと同じようにうまくは行かないかもしれません。なぜならば食材を利用するミネラルアプローチはおいしいので、追加することによって発生しうる嫌悪感を減らすことができるからです。


実はこの本を読むに至った経緯として、私が住む場所の近くに最近できた障害のあるこども達の生活を支援する放課後等デイサービスを提供する施設「All peace」で、

この本の共同著者の一人である国光美佳さんの講演会に参加したのがきっかけでした。

その講演会で国光さんは本の中身を紹介するとともに、実際にその「All peace」を利用している子がミネラルアプローチによって心が落ち着くようになったという実例を、その子が書いた絵の変遷とともに見せて下さいました。

その子はもともと絵を描くことがとても大好きな子でしたが、ミネラルアプローチを行うことでそれまでの無秩序な絵に次第に秩序がもたらされ、希望や愛情に満ちた内容に変化していく様子が非常によく伝わってきました。

さらに講演会にはその子もお母さんも参加されていて、もともと聴覚過敏があってささいな音の変化ですごく興奮してしまうので常にヘッドホンをつけていないといけない状況があったけれど、

ミネラルアプローチによって音に対する過敏さが緩和され、ヘッドホンはまだつけておく必要はあるものの、次第にそこまで興奮しなくなってきたといういきさつについて教えて頂きました。

そこまでの改善の事例を目の当たりにして、ミネラルを「プラス」するという方法に大きな説得力を感じるようになりました

そしてきっと糖質制限に応じてくれないであろう発達障害のこども達に対しても、具体的に改善につなげられる可能性の高い方法として希望を感じるようにもなりました。

それと同時に「もしかしたら自分もミネラル不足かもしれない」と感じる節も出てきました。

というのも医療機関では血液検査でミネラルを測定する機会があります。全てではないですが、ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウムといった主要なミネラルについては受診理由に関わらずルーティンで測定されることも多いです。

おそらく発達障害だと診断されたこども達も一度くらいは血液検査を受けているはずです。しかしそうしたこども達でミネラルの不足が見つかったというような話は医療現場からは一切聞かれません。

数値的にはミネラル不足にはなっておらず基準値なのだろうと推察されます。しかしながら実際にはそうしたこども達にミネラルを補えば症状が改善すると、これは一体どういうことなのでしょうか。

ひとつの可能性は「血液検査の結果が必ずしも実際のミネラル不足を反映していない」ということ、もう一つは「ミネラルの絶対量が足りていても、機能的にミネラル不足の状態が起こりうる」ということです。

いずれにしても補ってみて改善するのであれば、それは「実質的なミネラル不足の状態にあった」と考えるのが妥当であろうと思います。そうした血液検査で身過ごされているミネラル不足が実在するということです。

ということは私自身も血液検査でミネラル不足は特にない(私の場合はかなり細かいところまで調べています)わけですが、だからと言って実質的なミネラル不足がないとは限りません。

というわけで、しばらくミネラル補充生活を心がけてみようと思います。何か変化があれば続報として改めて当ブログで紹介しようと思います。


それはさておき、もう一つの疑問は「なぜ現代の食生活ではミネラルがそんなに不足しやすいのか」という点ですが、

この疑問に関してもこの本は明確に答えてくれているのですが、

その答えをさらに掘り下げてみると、勉強になることがありそうなので、

その点については次回の記事で詳しく述べさせて頂きます。


たがしゅう
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