遺伝子治療ってそんなものじゃない
2022/02/03 12:55:01 |
よくないと思うこと |
コメント:4件
コロナワクチンで初めて臨床応用されることになった「mRNAワクチン」は俗に「遺伝子ワクチン」と呼ばれています。
コロナへの免疫を誘導するためにコロナの擬似抗原をワクチン接種で注入するという従来のワクチン学の原理とは異なり、コロナの擬似抗原を作らせる遺伝子(mRNA)をワクチン接種で注入するという原理となっているわけですから、
これは一種の「遺伝子治療」だと言える医療行為だと思います。
一方で遺伝子治療の技術は遺伝性疾患の分野で非常に大きく進歩してきています。
先日、私の専門である脳神経内科の専門書籍に遺伝子治療についての現状が記された記事がいくつか書かれていました。
Annual Review神経 2021 単行本 – 2021/5/31
鈴木則宏 (著), 荒木信夫 (著), 宇川義一 (著)
例えば、1型脊髄性筋萎縮症(1型SMA)という遺伝性疾患があります。
これはSMN(survival motor neuron)1遺伝子という責任遺伝子と、SMN2遺伝子という修飾遺伝子の異常を生まれつき持っていることによって
筋肉の運動に関わる神経細胞(ニューロン)が生後まもなくから急速に変性していき、生後6ヶ月までに進行性の筋力低下をきたすようになり、90%以上が2歳までに死亡するか、人工呼吸器による永続的な呼吸管理が必要となる稀な遺伝性疾患です。
原因不明な病気が数多く占める中で、原因が「遺伝子異常」だとはっきりしているこの病気に対して、「遺伝子治療」が光明をもたらすようになってきたのはつい最近の話です。
2020年5月に遺伝子治療薬「onasemnogene abeparvovec(商品名:ゾルゲンスマ)」が保険収載され、1型SMNの治療が大きく発展しました。
「ゾルゲンスマ」はアデノ随伴ウイルス9型という中枢神経に親和性のあるベクターウイルスを用いて、SMN遺伝子を人体に注入する作業を1回の点滴で行う治療薬です。
これまでも2017年に登場したSMN遺伝子の異常発現を抑制するアンチセンス核酸医薬「nusinersen(商品名:スピンラザ)」はありましたが、髄腔内投与という少し侵襲性の高い方法でないと投与できず、しかも4ヶ月に1回投与しないと継続的な効果が得られないというデメリットがありましたので、1回だけでしかも点滴投与でいいという「ゾルゲンスマ」はかなりメリットの大きい画期的な治療であるように思います。
一方で1回の投与だけでよいと言うと完全に患者の遺伝子が書き換えられるイメージを持つかもしれませんが、詳細資料によりますと、どうやら注入されたSMN 遺伝子は,患者の染色体には組み込まれず細胞の核内にエピソーム(細胞が本来もっている染色体とは別に,比較的短い環状DNAが独立した染色体として安定的に維持されたもの)として留まり,運動ニューロン又は筋細胞のような分裂終了細胞に長期間安定して存在するということのようです。
それでこの「ゾルゲンスマ」を1回投与することによって、1型SMAの患児はどうなるのかと言いますと、
2014年にアメリカで行われた1型SMAの患児15名に対して「ゾルゲンスマ」が投与された治験の結果によれば、20ヶ月の時点で全例が生存するという驚きの結果が書かれていました。
生後24ヶ月までに90%以上が亡くなる病気で20ヶ月以上生存させたことはまず評価に値すると思いますし、どうやら神経の変性が進行する前の早い段階であればあるほど効果も高いようで、11名は支持なしで座れるようになり、9名が寝返り可能となり、11名は口から食事が取れるようになり、2名は歩けるようになったと報告されていました。
そんな当事者にとって見れば非常に救いとなる治療法が稀な遺伝性疾患の世界では密かに確立されていたことにまず驚きを覚えます。
この治療困難な遺伝性の神経難病に光明をもたらした「ゾルゲンスマ」ですが、なんと薬価は史上最高の億超え、1億6700万円に設定されているそうです。個人的にはめちゃくちゃ高く感じますが、この薬のもたらすインパクトのことを考えると高いと考えるかどうかは意見の分かれるところかもしれません。
ところが、薬価の高さはさておき、実は夢の薬だと喜んでばかりもいられない負の側面があります。
一つはその高い有害事象の発現頻度にあります。先述の2014年の治験に参加した患児15名のうち、13名(86.7%)に重篤な有害事象を認めたと報告されています。
また重大な有害事象の詳細を確認しますと、15名のうち3名が低用量投与、12名が承認用量投与であり、3名の方は100%に重大な有害事象が発生、12名の方は10名(83.33%)に重大な有害事象が発生しているとあり、この重大な有害事象の発生が用量に依存しない可能性が示唆されます。
重大な有害事象の詳細は、それぞれインフルエンザウイルス感染症、パラインフルエンザウイルス感染症、RSウイルス性気管支炎、アデノウイルス感染症などウイルス感染症に伴って呼吸困難に陥っている例がほとんどです。そしてこれらはステロイドの治療によって回復したというのです。
興味深くないでしょうか。厳重に感染症管理がされているはずの体制で施された遺伝子治療で、なぜかほとんどのケースで重篤なウイルス感染症が発生し、しかもそれはステロイドで治療されているのです。
なぜそんなことが起きるのかを考える上でヒントになるのは、この遺伝子治療薬の構成成分です。
実は「ゾルゲンスマ」の添付文書をみてみますと、この薬には「ポリエチレングリコール」と言う物質が含まれていることがわかります。
ポリエチレングリコールに関しては、以前記事にしましたが、化学的に非常に安定性の高い構造を持っていて、遺伝子(mRNA)のような体内に入ると速やかに分解されてしまう物質を目的地まで安定的に運ぶために、遺伝子治療においてはどうしても添加せざるを得ない物質であるようなのです。
「ポリエチレングリコール」は口から入る分には分解されることなく、さらに保水性も伴うことから便に水分を与える下剤としても使用されているくらい安全なものですが、これが血管の中に入ってくるとなると一転して人体に対して猛威を振るってくることになります。
なぜならば、血管内には異物除去システムの要であるリンパ球が巡回しており、ポリエチレングリコールは分解しにくい異物としてリンパ球によってダイレクトに認識されて、強烈な異物除去反応が引き起こされてしまうからです。
そしてポリエチレングリコールと言えば、思い返されるのは「コロナワクチン」です。話題になった「コロナワクチン」の遅発性のアレルギー反応、通称「モデルナアーム」は、「コロナワクチン」の筋肉注射によって血管内に一部遺伝子(mRNA)と一緒に入ったポリエチレングリコールがリンパ球によってなかなか分解されないことによって引き起こされる異物除去反応の遷延化だと私は分析しました。
もしこの考察が正しいと仮定すれば、「ゾルゲンスマ」の場合は点滴投与です。筋肉注射以上に血管に直接的にポリエチレングリコールが侵入しうる投与経路なので、これは言って見れば輸血の拒絶反応と同じような状況が引き起こされていると考えることができます。
そして「ゾルゲンスマ」投与に伴う重篤なウイルス感染症がどうやって診断されたかは不詳ですが、もしもコロナと同様に因果関係を証明しないPCR検査によって判定されているのだとすれば、
本当はポリエチレングリコールに対する全身性の異物除去反応が強制駆動されているだけなのに、それぞれのウイルスに対するPCR検査が陽性であるが故に、「これはウイルス感染症である」と誤認されている可能性があるのではないかと思います。
そう考えると、ステロイドが有効である理由も説明がつくわけです。ウイルスがいるとされながら、免疫力を弱めるステロイドがウイルス感染症に効くという話はかねてより納得のいかないところがありました。その「ウイルス感染症」とされている現象が、自身の免疫システムそのもののオーバーヒートだとなれば私は腑に落ちます。
以上を踏まえますと、「ゾルゲンスマ」は遺伝子を意図通りに改変し、致死性疾患の生存・機能回復に多大な貢献をもたらすけれど、非常に高価で恩恵を受けるためには重大な有害事象を乗り越える必要のある薬、ということになるでしょうか。
もう一つの不安要素は、「ゾルゲンスマ」の効果がいつまで続くのか?という点です。
何せ承認されたばかりの新薬です。患者数も非常に少ない稀な疾患です。理論上は生涯効果が持続する可能性はありますが、本当にそう言えるまでにはこれから先長い時間をかけていかないことにはわからないことだと思います。
ただ、たとえ効果がどこかで切れてしまうものだとしても、それでもこの薬に価値があると私には思えます。
それは何もしなければ死んでしまうしかない病気の、しかも生まれて間もない時期のこどもの生存を可能にするという他に変え難い効果をもたらすことができるからです。その延長された時間は当事者やその関係者にとってかけがえのないものであろうことは疑いの余地がありません。
逆に言えば、このくらいインパクトをもたらさない限り「遺伝子治療」を行うことのリスクは許容し難いものがあると風にも言えると思います。
振り返って、同じ「遺伝子治療」に相当する「コロナワクチン」はどうでしょうか。
まず「コロナワクチン」の対象者は健康な人も病気な人も含む全ての成人です。今はこどもにさえその対象が拡げられてしまっている状況です。
対象の遺伝子に異常があるわけではありません。それでも遺伝子の異常に無理矢理介入しようとしています。
mRNAはすぐに分解され長期間身体に残らないとする専門家もいますが、遺伝子が直接的に書き換えられているわけではないものの、「ゾルゲンスマ」の経験を踏まえると、少なくともその遺伝子改変効果は2年以上は持続することが示唆されています。
しかも筋肉注射によって血液と直接接触しうる投与方法によって、注射の具合や免疫システムとの相性如何によっては激烈な異物除去反応が惹起されてしまう可能性も大いにあります。
そして世界各国においてコロナワクチン集団接種後に例外なく大きなコロナ感染者の波が襲ってくるという事実、
この事実も、もしもコロナワクチンのポリエチレングリコールと血管内でリンパ球が接触したことによる全身性の異物除去反応が、因果関係を証明しないコロナPCR検査によって「コロナウイルス感染症」であると誤認されているのだとしたらどうでしょうか。
少なくともそう考えることに、今のところ現実は大きな矛盾を示していないように私は思います。
どうしても「遺伝子治療」を実行するのであれば、その強烈なデメリットを引き受けても余りある大きなメリットが確実に得られるという限られた時だけではないかと。
「遺伝子治療」は決して誰に対しても実施していいような安全な治療ではないと私は考える次第です。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
SFの実現化
今回の遺伝子医療の記事を拝見し、世界は映画のSFの世界を本気で実現化しようとしているのではと感じました。
サイエンスフィクションはあくまで空想であり、確かに空想が進化の足掛かりになるのは間違い無いのですが、進化に人為的操作が加わると破滅に向かうのではと危惧されます。
「生物体は小宇宙」と言います。
太陽系の8つの惑星同士が絶妙な力加減で引っ張り合い、お互いを「居るべき場所」に維持しています。
もし仮に、たった一つの惑星が何かしらの外的な要因により、位置や傾きが若干でもズレたら、太陽系は破滅するとも言われます。
私は遺伝子操作はそれに相当する危険性を孕んでいると思うのです。
「居るべき場所」は、神が与えたプレゼントで、有り難く受け取るだけで、そっとしておくことが既に幸せである事を知らなければなりません。
大切な人がくれたプレゼントに色を塗り替える傲慢は恥じるべきです。
Re: SFの実現化
コメント頂き有難うございます。
そうですね。色々な面で何かしら人為的な介入を加えた方がより過ごしやすくなるように思える瞬間はある一方で、結局ありのままが一番良かったと思うことも多々あるように感じています。例えば私が興味を持った無農薬・無肥料栽培などもそんな感じです。
不毛な破滅につながらないためにも原点を忘れないようにしたいものです。
ポリエチレングリコールについて
Re: ポリエチレングリコールについて
コメント頂き有難うございます。
ポリエチレングリコールは保存・安定化・粘性変化など用途の広い非常に便利な物質ですが、その安定性が仇となる構造があることにも注意が必要ですね。私もコロナワクチンの件がなければ知らないままでいる所でした。何が学びのきっかけになるかわからないものです。
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