なぜSARSはワクチンなしで終息したのか
2022/01/23 12:30:01 |
ウイルス再考 |
コメント:0件
ワクチンで唯一撲滅できたとされるウイルス感染症として「天然痘」の話を時々聞きますが、
ワクチンを開発していないのにまるで撲滅されたかのような状況にあるウイルス感染症があります。
それは2002年に中国で流行した「SARS: severe acute respiratory syndrome(重症急性呼吸器症候群)」です。2003年7月5日にWHO(世界保健機関)が封じ込め成功を発表し、その後も2004年頃までは散発的に症例が確認されましたが、以降はただの1例もSARSの症例は確認されておらず、事実上の撲滅状態にあると言ってよいウイルス感染症ではないかと思います。
でも「撲滅」ではなく、あくまでも「封じ込め」なんですね。なぜならば、SARSウイルスはコウモリを自然宿主としていると考えられており、コウモリの中で生き続けるSARSウイルスがいつまたヒトの間で感染するともしれないと考えられているからです。
一方で、SARSウイルスは、今なお私達の社会に混乱を引き起こし続けている新型ウイルス、通称「コロナ」と同様の性質を持っていると言われているウイルスです。それ故「コロナ」の正式名称は「SARS-CoV-2」です。
一体なぜ、SARSウイルスではワクチンなしで「封じ込め」が成功しているのに、「コロナ」ではワクチンありで「封じ込め」を行うことができないのでしょうか。 マスク装着、アルコール消毒、ソーシャルディスタンス確保など基本的な感染対策が不十分なのでしょうか。いやいや、歴史上、今よりも感染対策を全国民が徹底して行った時代は過去にないのではないでしょうか。それは最初の症例が発生している中国においても同様だと思います。しかもSARSに対してはワクチンも開発されていません。
であれば、SARSが「封じ込め」に成功した理由は感染対策やワクチンとは別のところにあると考える必要があるのではないでしょうか。
この疑問に対する私の回答を披露する前に、予備知識として確認しておいてもらいたいことがあります。
それは「PCR検査の陽性は、その症状との因果関係を必ずしも証明しない」ということです。
「コロナ」と診断するためには必ずPCR検査を受ける必要がある、と専門家の人達はよく言います。ところがそのPCR検査が陽性であったとしても、その人の症状が「コロナ」が原因だとは断言できないのです。
なぜならば、「コロナ」のPCR検査はアイスクリームでも陽性になることがすでに確認済です。アイスクリームでも陽性になるということは、このPCR検査は相手のウイルス(特定遺伝子配列を持つ何らかの構造物)が死んでいる(増殖活性を失っている)としても陽性になることを示しているからです。
勿論、アイスクリームに付着して間もない時期の、まだ死んでいない(増殖活性を失っていない)ウイルスを検出している可能性もゼロではありませんが、付着したばかりのウイルスを検出する可能性と、付着してある程度時間が経って失活したウイルスを検出する可能性とを比べたら、後者の方が蓋然性がはるかに高いですから、PCR検査は死んだウイルスでも陽性になるという可能性は極めて高いということになると思います。
死んだウイルスでもPCR検査が陽性になるということは、今風邪のような症状があって、「コロナ」のPCR検査が陽性になったとしても、その風邪の症状が「コロナ」との接触で引き起こされているかどうか断言できないということです。「RSウイルス」なのかもしれないし、「ライノウイルス」なのかもしれないし、あるいは「花粉」なのかもしれないし、他の予想外の異物抗原なのかもしれません。
この事実を踏まえた上で、SARSがなぜワクチンなしで「封じ込め」に成功したのかを考え治してみましょう。
まずこれを考える上で、ワクチンによって撲滅できたと考えられている「天然痘」のケースも比較してみたいと思います。
「天然痘」がワクチンによって撲滅できた理由として考えられているのは大きく以下の3つにまとめることができます。
①ヒトのみが自然宿主である
②「天然痘ウイルス」がDNAウイルスであり構造が安定しているから
③顕性感染率が高く、感染者はおしなべて重症を呈し隔離対象者がわかりやすいから
SARSの場合は自然宿主がコウモリと推定されていますし、SARSウイルスはRNAウイルスですから変異もします。
それがゆえにワクチンは開発しにくいし、開発したとしても自然宿主の動物の中では生き続けるので撲滅は到底難しいという話になると思います。
しかし現実は、SARSは疑似撲滅状態です。なぜことごとく撲滅要因を満たしていないのに、疑似とは言え撲滅に近い状態を維持することができているのでしょうか。たまたまヒトに害をもたらさない変異を運良く繰り返し続けているのでしょうか。
そこで注目したいのが、もう一つの用件③です。SARSも日本語訳が「重症急性呼吸器症候群」というくらいですから、重症となるウイルス感染症です。ここでSARSの特徴を確認しておきましょう。
WikipediaにはSARSの兆候と症状として、次のような説明が書かれています。
最初の症状はインフルエンザ様で、発熱、筋肉痛、無気力状態 (Lethargy) 、咳嗽、咽頭痛、その他非特異的症状が見られる。全患者に見られるのは38 °C (100 °F)以上の発熱だが、始まるまでには2〜7日の潜伏期間が存在する。この病気では粘膜病変を伴わず、咳嗽は乾性咳である。SARSでは呼吸困難や肺炎、またはその両方が見られることがあるが、これは一次的なウイルス性肺炎、また細菌性肺炎双方の可能性が考えられる。発熱に伴う肺病変は間質性肺炎であるが、これにはウイルスが誘導する免疫・サイトカインの関与が考えられている。喀痰には10億コピー/mLのウイルスが排出されるとされ、この状態では感染性が非常に高い。またウイルス血症も起こしうる。
まず気になるのは、「最初の症状はインフルエンザ様」という部分です。SARSの初期症状はインフルエンザと似ていて区別がつかないというのです。
しかしインフルエンザ様の症状を訴える患者を診た時、SARSのPCR検査もしようと思う医師はまずいないと思います。
なぜならば、「日本ではSARSは流行していない」という事前情報が医師の頭の中にあるからです。つまり検査というよりも事前情報でSARSかどうかを判断している側面が強いということです。
逆に「今まさにSARSが流行しているという状況」でインフルエンザ様の症状の患者を診たら、医師の方もまずSARSのPCR検査を行うと思います。
実際、「コロナ」で今日本全国そういう状況になっていると思います。今この状況下でインフルエンザ様の症状をみた時に、「コロナ」の検査をしない医師は逆にほとんどいないのではないでしょうか。
ということは、「SARSが流行している」という状況がない限り、「SARSの検査をやってみよう」という動機はまず起こらないということです。
さらに「PCR検査の陽性は、その症状との因果関係を必ずしも証明しない」という話を思い出してもらうと、
この「SARSが流行している状況」によって生み出された「SARSのPCR検査をやってみよう」という行動が何を意味することになるでしょうか。
SARSのPCR陽性者が生まれることによって、「本当はSARSが関わっているかどうか因果関係が証明できていないPCR検陽性集団を、SARSの患者集団だと判断してしまう可能性が生まれる」ということになります。
従って、SARSがワクチンなしで「封じ込め」に成功した、いや成功したと思われている理由は、「SARSだと思える状況が生まれなくなったから」だと私は思います。
では、SARSだと思える状況がなくなり、SARSのPCR検査が行われなくなったのだとすれば、本当はSARSなのにSARSだと判断されずに見過ごされてしまい、実は世界のどこかで知らず知らずのうちにSARSの大流行が起こっているということなのでしょうか。
SARSが初期のインフルエンザ様の時期を超えて進行するとどのような症状が出るのかと言いますと、「発熱、筋肉痛、無気力状態 (Lethargy) 、咳嗽、咽頭痛などの非特異的症状、粘膜病変を伴わない、呼吸困難や肺炎(間質性肺炎)」だと書かれています。
これは、SARS特有の、SARSにしか現れない症状なのかと言われたらそんなことはありません。
サイトメガロウイルスやインフルエンザウイルスなど他のウイルス感染症でも起こりますし、感染症でなくても特発性間質性肺炎と呼ばれる状態でも同じような状況は起こります。
もっと言えば、マイコプラズマ肺炎やカリニ肺炎のようにウイルス以外にも細菌が原因でも起こりえる状態ですが、この細菌が原因で起こっているとされている間質性肺炎は、原因と結果が取り違えられている可能性があると私は考えていますが、ややこしくなるのでそれはひとまずさておきましょう。
要するに私が言いたいのは、「SARSが見逃されたとしてもいくらでも別の病気と解釈されうる」ということです。
実際、SARSの「封じ込め」に成功する前と成功した後で、中国の年間の死亡率はほとんど変化していません。「SARS」は「封じ込め」られたはずなのに、年間死亡する人の数は変わっていないのです。
そう考えると、SARSは「封じ込め」たのではなく、「認識しなくなった(別の原因だと認識するようになった)」だけなのではないでしょうか。
さて、もしもそうだとすれば、新たに二つ大きな問題が出てきます。
一つは「今の「コロナ」でも同じような状況が起こっているのではないか」、もう一つは「天然痘もワクチンで撲滅したと思われているけれど、同じように「天然痘」だと認識しなくなっただけではないか」という点です。
後者は以前詳しく考察したことがあるので、ここでの掘り下げは控えておきます。しかし前者に関しては十分に検討しておく必要があります。
なぜならば「コロナの流行がPCR検査の実施によってそうだと思い込まされているだけ」であれば、これからとるべき行動が全く変わってくるからです。
なぜ風邪のような症状で「コロナ」だと判断されている人の症状の原因が「RSウイルス」や「ライノウイルス」が原因でないと言い切れるのでしょうか。
なぜ肺炎や呼吸困難の症状で「コロナ」だと判断されている人の症状の原因が「SARSウイルス」や「サイトメガロウイルス」が原因でないと言い切れるのでしょうか。
「コロナのPCR検査が陽性になっているからだ」と。でもその「PCR検査の陽性」は死んだウイルスを検出している可能性もある以上、なぜそれが原因だと言い切れるのでしょうか。
「周囲でコロナが流行っているからだ」と。でもその「コロナが流行している状況」というのは、何を根拠にしているのでしょうか。
「コロナのPCR陽性者がたくさん出ているからだ」と。でもその「コロナPCR検査の陽性者」がたくさん出ている状況が、死んだコロナウイルスを検出しているだけかもしれないのに、どうしてコロナの感染者だと言い切ることができるのでしょうか。
結局、この度の騒動は「PCR検査」というものを信用し過ぎたことによって生み出された虚構だと私は思うのです。
そうなると、「RSウイルス感染症」とか「ライノウイルス感染症」、「サイトメガロウイルス感染症」なども同様の問題を生じてきます。なぜその感染症だと断言できるのでしょうか。
それは、「その感染症だと信じて疑わない状況があるから」ではないでしょうか。その信じて疑わない状況に「検査への盲信」が関わっていることは間違いないと思います。状況が確からしくて検査結果が後押しすればそれは確からしいと考えてしかるべきでしょう。
結局、私達は現実の事象を「感染症(学)」という物差しで、一面的な見方をしているに過ぎないのだと思います。
今でも「SARS」のPCR検査を無症状者に実施したら、陽性者が現れる可能性は十分にあると思います。しかし誰もそれをしようとしないから、「SARS」はこれからも「封じ込め」された感染症のまま認識され続けることでしょう。
ならば「SARS」を見逃しても、何も変わらなかったという事実を、今の「コロナ」に当てはめてみるのはどうでしょうか。
どうせ「PCR検査が因果関係を証明しない」のであれば、同じ風邪症状を「コロナ」だと思わずに、「風邪」だと思って対処するのがよいのではないでしょうか。
その方が余計な不安を煽られず、むやみに他人に迷惑をかけることなく、平穏に過ごしやすくなるのではないかと私は考える次第です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
- 2023/11 (7)
- 2023/10 (8)
- 2023/09 (5)
- 2023/08 (9)
- 2023/07 (4)
- 2023/06 (5)
- 2023/05 (5)
- 2023/04 (7)
- 2023/03 (7)
- 2023/02 (5)
- 2023/01 (7)
- 2022/12 (5)
- 2022/11 (4)
- 2022/10 (11)
- 2022/09 (6)
- 2022/08 (6)
- 2022/07 (5)
- 2022/06 (6)
- 2022/05 (4)
- 2022/04 (5)
- 2022/03 (5)
- 2022/02 (4)
- 2022/01 (7)
- 2021/12 (14)
- 2021/11 (4)
- 2021/10 (10)
- 2021/09 (10)
- 2021/08 (8)
- 2021/07 (14)
- 2021/06 (11)
- 2021/05 (17)
- 2021/04 (9)
- 2021/03 (8)
- 2021/02 (9)
- 2021/01 (14)
- 2020/12 (9)
- 2020/11 (7)
- 2020/10 (6)
- 2020/09 (9)
- 2020/08 (11)
- 2020/07 (20)
- 2020/06 (22)
- 2020/05 (18)
- 2020/04 (22)
- 2020/03 (10)
- 2020/02 (7)
- 2020/01 (5)
- 2019/12 (9)
- 2019/11 (19)
- 2019/10 (31)
- 2019/09 (6)
- 2019/08 (7)
- 2019/07 (7)
- 2019/06 (13)
- 2019/05 (21)
- 2019/04 (9)
- 2019/03 (13)
- 2019/02 (15)
- 2019/01 (28)
- 2018/12 (9)
- 2018/11 (2)
- 2018/10 (11)
- 2018/09 (30)
- 2018/08 (31)
- 2018/07 (31)
- 2018/06 (31)
- 2018/05 (31)
- 2018/04 (30)
- 2018/03 (31)
- 2018/02 (29)
- 2018/01 (31)
- 2017/12 (31)
- 2017/11 (30)
- 2017/10 (32)
- 2017/09 (31)
- 2017/08 (31)
- 2017/07 (32)
- 2017/06 (31)
- 2017/05 (31)
- 2017/04 (31)
- 2017/03 (31)
- 2017/02 (29)
- 2017/01 (32)
- 2016/12 (31)
- 2016/11 (30)
- 2016/10 (31)
- 2016/09 (15)
- 2016/08 (11)
- 2016/07 (5)
- 2016/06 (10)
- 2016/05 (8)
- 2016/04 (5)
- 2016/03 (5)
- 2016/02 (10)
- 2016/01 (10)
- 2015/12 (7)
- 2015/11 (8)
- 2015/10 (7)
- 2015/09 (6)
- 2015/08 (6)
- 2015/07 (5)
- 2015/06 (5)
- 2015/05 (5)
- 2015/04 (3)
- 2015/03 (10)
- 2015/02 (28)
- 2015/01 (31)
- 2014/12 (31)
- 2014/11 (31)
- 2014/10 (31)
- 2014/09 (29)
- 2014/08 (53)
- 2014/07 (31)
- 2014/06 (30)
- 2014/05 (31)
- 2014/04 (30)
- 2014/03 (31)
- 2014/02 (28)
- 2014/01 (31)
- 2013/12 (32)
- 2013/11 (30)
- 2013/10 (33)
- 2013/09 (39)
カテゴリ
メールフォーム
スポンサードリンク
検索フォーム
ステップメール
リンク
QRコード

コメント
コメントの投稿