前提が崩れたまま突き進むことの怖さ

2021/10/06 13:42:00 | 医療ニュース | コメント:0件

以前マスクの感染予防効果は証明されていないという記事を書きましたが、

また新たにマスクの有効性を示す医学論文が発表されたようです(Jehn M, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub: 24 September 2021. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7039e1)。

内容をざっくりと紹介しますと、アメリカのアリゾナ州にあるマリコパ郡とピマ郡における幼稚園から12年生(日本での高校3年生に相当)までの就学児を調べた調査で、

同地域は2021年7月上旬にそれまでのオンライン授業体制から対面式の授業を再開させるという節目があったそうですが、生徒にマスクの装着を義務づける学校とそうでない学校とで分かれていたそうです。

そこでマスクの装着を義務づける学校の生徒と義務づけない学校の生徒とで、コロナ感染率に差があるかということを2021年7月15日〜8月31日の期間で調べたと書かれています。

またマスクを義務づけた学校の中には対面授業再開時からマスク着用を義務づけた学校と、再開後しばらくして(中央値15日)マスク着用が義務づけられた学校とがあったそうです。

そして各学校内でPCR検査もしくは抗原検査でCOVID-19と確認された症例が、14日以内でかつ対面授業再開から7日以内に2例以上発生した場合は「学校のアウトブレイク」と判定すると定義づけられました。

その結果、学校のアウトブレイクは、マスク装着を早期に義務づけた学校の中で16件(全体の8.4%)、途中からマスク装着を義務づけた学校で62件(全体の32.5%)、マスク装着を義務づけなかった学校で113件(59.2%)であったということで、

マスク装着を義務づけなかった学校は、義務づけた学校に比べて3.5倍アウトブレイクが起こりやすいという結果」が報告されていました。 さてこうなると、普通に考えればマスクが学校のアウトブレイクを防いでいると思うのが筋でしょうけれど、

そう判断するにはわからないことがたくさんあります。まずPCR陽性、抗原検査で陽性になったという生徒達の症状はどうだったのかという情報がないです。

学校でどのような基準でPCR検査を行うことになったのかわかりません。ひょっとしたらマスクを義務づけない学校ではマスクによる不自由を強いらない代わりに、頻回のPCR検査で生徒の安全を確認しようとしたかもしれません。

逆にマスク装着を義務づけた学校では、保護者からの非難を避けるために、徹底して生徒を管理し、少しでも体調が悪いという生徒がいたら必ず学校を休ませるというような措置をとっていたのかもしれません。

そうなると前者では無症状者に対するPCR検査が積極的に行われ、後者ではよほどの発熱状態になり医療機関を受診したケースでしかPCR検査陽性と判定されなかったかもしれません。

ともかくそれらの情報が欠如したまま、PCR検査で実験室的に証明されたデータの正しさが前提となって、今回の結論が導かれてしまっているように思えます。

PCR検査の問題点については過去にも触れたので詳細は過去記事をご覧いただくとして、その最大の問題点は「相手が本当に新型コロナウイルスなのかどうか、あるいはコロナウイルスだったとしてもそれが生きている(増殖能を持つ)ウイルスかどうかがわからない」という点にあります。

それゆえPCR陽性者をそのまま感染者と判定してしまうとどうしても真実と一致しないデータ、少なくとも真実と一致しない可能性を除外できないデータになってしまうという構造があるのです。

それなのに「このデータは紛れもない真実だ」という前提で調査されるものですから、その調査で得られた結論もまた真実ではない可能性を拭えないものになります。

ちなみにこの論文、調査となった学校は全部に1,020校とそれなりに多い人数が調査されています。海外で行われた大規模調査ということだけ見るとその信頼性を無条件に感じてしまうかもしれませんが、

原著を調べてもらうとわかりますが、なんとページ数にして2枚分の短い論文となっています。

それに調査といっても、予め公開されているデータベースから該当データを抽出して、統計ソフトにかけるだけなので、大規模調査といってもそれほど負担のかかる研究ではありません。だからこそのその短さなのでしょう。

けれど、これを海外の信頼のおける医学論文として紹介されると、これは「マスクの効果を決定づける科学的根拠だ」というように印象だけが一人歩きしてしまいます。すでに同様の出来事は幾度となく現実で起こっており、これを私は「科学の暴走」と呼んでいます。残念ながら科学の暴走は絶賛進行中です。

前提が間違っているままに突き進む科学の暴走ほど怖いものはありません。間違った前提が疑われることなく強い確信を持ったまま先に進められ続けて、歪みは次第に大きさを増していき誰も止めることができなくなります。

そして行き着くところまで行った時に、暴走はようやく止まりますが、その時にもともとあった世界はすでに崩壊してしまっており二度と元には戻せない不可逆的な状態となってしまっているという構造があるように私は思います。

この暴走を止められる方法があるのかどうかはわかりません。しかし少なくとも前提が疑わしいということに気づけた人は、なるべくこの暴走に巻き込まれないようにすることです。

具体的にはこうした前提ありきで公開されている情報は、確信が持てるまで保留のスタンスを貫くことです。

あるいはデータではなく、事実に注目して世界を観察することです。

そうすれば、たとえ科学が暴走して世界が崩壊したとしても、また一から世界を作り上げていくことができるかもしれません。


たがしゅう
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