エボラ出血熱と新型コロナウイルス感染症との共通点

2020/05/08 05:30:00 | ウイルス再考 | コメント:0件

前回、エボラ出血熱に対する新規治療薬「レムデシビル」の問題について触れましたが、

不十分な臨床効果でありながらも、確かに新型コロナウイルスの増殖を抑える働きを示しているということは、

エボラウイルスと新型コロナウイルスには共通点があるということになると思います。

それは抗HIV薬が新型コロナウイルスに効果があるかもしれない、という話にも通じることなのですが、

今までの感染症学において私の認識では、抗ウイルス薬は特定のウイルスに効果をもたらす薬であって、

「ヘルペスウイルス属(単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルスなど)」のように同じカテゴリーに属するウイルスに対してでさえ、

それぞれのウイルスに特異的な薬を区別して使わなければならないという感覚でおりました。

ところが、ここに来て新型コロナウイルス騒動を受けて、「あるウイルスに効く薬が別のウイルスにも効果を示すかもしれない」というウイルスの種を超えた抗ウイルス薬の効果を見直す動きが活発化してきています。 ということは、今まで特定のウイルスだけに効くと思われていた抗ウイルス薬の特異性は、そこまで強いものではなかったという考えにもつながってくるわけですが、

逆に言えば、今まで全く別物だと考えられていたエボラ出血熱を引き起こすとされるエボラウイルスという存在が、

これまで当ブログでもさんざん検証してきた新型コロナウイルスと共通する要因があるという可能性が見えてきましたので、

その視点でこのエボラウイルスというものについて改めて考えてみようと思います。

まず前提としてエボラ出血熱という病気は、日本の感染症法という法律で「1類感染症」というカテゴリーに属する感染症です。

感染症法では「1類感染症」とは、「感染力と罹患した場合の重篤性等に基づく総合的か観点から見た危険性の程度に応じて分類する」という考え方の中で最も危険と判断される感染症のことです。

「2類感染症」「3類感染症」と数字が下がるにつれて危険認識度は下がっていきます。ちなみに毎年冬におなじみのインフルエンザは「5類感染症」です。

それ以外に既知の感染症が変異などで危険な感染症に変化したといった状況があった場合に用いる「指定感染症」というカテゴリーもあり、今回話題の新型コロナウイルス感染症はこの「指定感染症」の枠組みに入っています。

「1類感染症」にはエボラ出血熱の他に、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱ウイルス、マールブルグ熱、ラッサ熱、あとはワクチンで唯一撲滅したとされる天然痘(痘そう)があります。

そのエボラ出血熱がどんな病気かと言われると、ともかく致死率の高さが特徴的でエボラウイルス属の中の種類によっては致死率は80-90%にも至ると言われています。

潜伏期間は2〜21日間とかなり幅があります。対して新型コロナウイルスの潜伏期間は現時点で1-12.5日(多くは5,6日)とされている(厚生労働省サイトより)ので、幅が広いという意味では似ているようにも思えます。

典型的な臨床経過としては、発病が突発的で発熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などを生じ、腹痛、嘔吐、下痢、結膜炎などの症状が継続し、脱水症状や播種性血管内凝固症候群(DIC)という病態が発生して多くの臓器が機能不全に陥ることが原因で死亡する、という流れをたどります。

ちなみにエボラ「出血熱」という病名なので、罹った患者は皆が皆出血するのかと思いますが、出血症状は一部の患者にしか見られないそうです。

これはおそらく上述の「DIC」と呼ばれる病態が起こった時に限り、出血症状が発生すると考えてよいと思います。

なぜならばエボラ出血熱で出血症状が見られる時はもれなく重症例で、軽症だけど出血だけしているという症例は認められないからです。

「DIC」というのは、多くはがんや白血病などの基礎疾患がある人において感染などを契機に、切り傷などで出血した場合に直ちに血が止まるようにするための血液凝固システムが過剰に駆動されてしまい、

その結果出血もしていないのに全身の至るところで無秩序に血管内凝固が起こってしまい、

その結果、必要以上に凝固因子や血小板という血を固める成分が消費されてしまい、結果的に全身の至る所で外傷がないにも関わらず出血をきたしてしまうという病態のことです。

別の側面で言うと、新型コロナウイルス感染症の病態として注目される「サイトカインストーム」、そのなれの果ての病態の1つが「DIC」だと表現することもできると思います。

事実、新型コロナウイルスでもDICの病態を生じることが言われており、新型コロナウイルス感染症でも重症例ではエボラ出血熱のように出血症状をきたすということが理解できると思います。

ちなみに、最近アメリカで新型コロナウイルス感染症にかかった30−40代の男性で脳や足に血栓ができるようなケースが報告されていて、新型コロナウイルス特有の症状ではないかというような話がニュースとなっていましたが、

DICのような病態でも脳梗塞をはじめとした全身に血栓塞栓症は起こりえます。そしてその特徴は全然関係ない病気と思われていたエボラ出血熱でも認められる症状でもあるわけです。

それと症状が突発なのがエボラ出血熱の特徴とも言われていますが、よく考えると新型コロナウイルス感染症でニュースになっている人で急に病態が悪化して検査が受けられずに自宅で死亡というケースもありました。これも症状が突発した例と考えて矛盾はありません。

要するに、エボラ出血熱の典型的な臨床像と、新型コロナウイルス感染症で不幸にも重症化するケースの臨床像が似ているように思えてくるのです。

新型コロナウイルス全体の中で重症化する率は、中国武漢のデータで致死率2-3%程度(2020年2月1日時点)だと言われていますが、これはあくまでもその時点で把握できた患者の中での話です。

典型的な症状を呈していない軽症例でウイルスの存在が確認されていなければ、実際の死亡者/患者で算出される致死率は分母が増えれば増えるほど小さくなることになります。

もしもエボラ出血熱に対する私達の持つ重症のイメージが、全体のエボラ出血熱の中でのごく一部の症例だけの話であって、

本当はエボラ出血熱にも新型コロナウイルス感染症と同様に、その背景に無数の軽症者がいてそれらの患者が見過ごされているのだとすればどうでしょう。

私達のエボラ出血熱に対するイメージは大きく変わってくるのではないでしょうか。

だいたいよくよく考えれば致死率80−90%のウイルスという事は、エボラウイルス自体にとっても致命的な性質です。

なぜならばウイルスは原則単独で生きることはできず、必ず宿主に感染している事が生きるための大前提条件です。

それなのに感染する人する人が80−90%の確率で宿主が死亡するようであれば、ウイルスとしても感染を拡大させる前に生きる場を失ってしまいます。

しかもエボラ出血熱が怖い病気だと人間側に思われているわけですから、人間側はエボラ出血熱の患者と感染していない(と思われる)人が接触する機会を全力でヘ減らしにかかります。

であればその時点で2002年のSARSウイルスが終息できたように、エボラ出血熱も封じ込めに成功できるはずです。

でも実際には、エボラ出血熱はいまだに根絶されず、直近では2014年、2018年、2019年と西アフリカを中心に散発的なパンデミックを起こしています

エボラウイルスは一度パンデミックを起こして終息し、その後再びパンデミックを引き起こすまでの間、一体どこに潜んで生きてこられたというのでしょうか。

気になってエボラウイルスの感染経路を調べてみますと、「エボラウイルスの感染力は強いものの、空気感染をせず、感染者の体液や血液に触れなければ感染しない」と記されています。

確かに新型コロナウイルスのように呼吸器症状が起こることはないようなので、飛沫感染という事は起こりえませんが

下痢症状があるので、ノロウイルスと同様に糞口感染は十分にありえます。

糞口感染というのは、トイレ後に糞便に汚染された手を洗いきれずに微小な病原体が残存した状態の手を介して自分の口、または手すりやドアノブなどどこかしらの部位に付着してまた誰かの手でそれを触ることで手が口に当たったり、その手で食べ物を触りその食べ物を食べることで口から感染する、といった感染様式のことです。

呼吸器症状がなくても、この糞口感染が起こりうる以上は、無症状の人がエボラウイルスに感染していないとは言い切れません。今回の新型コロナウイルスのように無症状感染者が大いにありうるということがわかったわけですから。

実はエボラウイルスに感染したけど軽症で済んでいて潜伏感染から持続感染への移行が成立したけれど検査がされていないという人の中でウイルスは生存し続けていて、

ひょんな拍子でその人から糞口感染経路で別の人に感染成立し、その人の免疫状態によって重症化事例が発生しパンデミック騒ぎになる、という可能性はゼロではないように思います。

致死率2-3%と致死率80-90%では両者がまるで別の病気だと捉えられてしかるべきです。

しかし死亡者が固定だとしても、分母である患者数が正確に把握できていなければ、この数字はいくらでも変動しうるということに注意しなければなりません。

そして新型コロナウイルス問題により無症状感染者の存在が明らかになった以上、

この致死率、重症化率、感染者率といった「率」を表す数字は、基本的に真実よりも高く見積もられる数値となるということを頭に入れておく必要があると私は思います。


さて、そんな中でエボラウイルスと新型コロナウイルスとでは決定的に違う点があります。

それはエボラウイルスが属するフィロウイルス科の形態的な特徴は「細長い」ということです。

細菌でたとえるのであれば梅毒などの原因菌が属する「スピロヘータ」、寄生虫で例えるなら「糸状虫」のようなひょろ長い糸のような形をしています。その中でひも状、U字型、ぜんまい型など若干のバリエーションが存在しています。

「ウイルスとは動植物細胞の複製エラー」という私の仮説で考えますと、フィロウイルスはそうした細菌や寄生虫の複製エラー、もしくは細長い糸状の動物細胞(筋紡錘細胞?繊維芽細胞?)の複製エラーとかなのかもしれません。

そして新型コロナウイルスは「1本鎖RNA +鎖(プラス鎖)ウイルス」で、エボラウイルスは「1本鎖RNA -鎖(マイナス鎖)ウイルス」です。

RNAウイルスの「プラス鎖」と「マイナス鎖」という言葉の違いは、本来は2本あるDNAの鎖(塩基配列の並び)のうち、遺伝情報がコードされている鎖の方を「プラス鎖」、そのプラス鎖に対応する相補的な並びとなっていてプラス鎖の遺伝情報をコピーするときの鋳型になる鎖の方を「マイナス鎖」といいます。それらのどちらの鎖の特徴を持つRNAであるかによってRNAウイルスの鎖の呼び名が変わります。

ただ、プラス鎖スタートでも、マイナス鎖スタートでも結局RNAウイルスはそれを自身の遺伝情報として増幅していくので、そこに本質的な違いはあまりありません。

ともかくウイルス学的な特徴がエボラウイルスと新型コロナウイルスとで異なっている、ということです。

しかし逆に言えば、違うのはその辺りくらいで、あとの臨床的特徴はよくよく見れば新型コロナウイルスと大いにかぶるところがあります。

挙げ句の果てに対エボラウイルス用の抗ウイルス薬が、新型コロナウイルスの増殖も抑制しているということになれば、

そのようなウイルス学的特徴の違いが、ウイルス感染症をもたらすという点でそれほど大きな臨床的特徴の違いをもたらさないのではないかという可能性が見えてきます。

もしこの私の考察が正しければ、ますますウイルス感染症はウイルスがもたらす病気ではなく、ウイルスきっかけで異常駆動された自分自身のシステムオーバーヒートの病気だと考えて矛盾はないように思います。


たがしゅう
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