脂肪を残したまま亡くなる理不尽はなぜ起こる

2019/10/16 21:30:01 | 素朴な疑問 | コメント:0件

クワシオルコルとクッシング症候群の共通性について触れましたが、

注目すべき共通点は「そこに脂肪があるにもかかわらず、脂肪が使えない状況にある」ということです。

そのことは何もこうした特殊病態を扱うまでもなく、臨床現場ではよく見受けられる現象です。

何らかの病気の末期で看取り直前の状況にあるという患者さんは多々おられますが、

そうした患者さんが皆エネルギー不足でガリガリにやせ細っているかと言われたらそうではなくて、

今にも亡くなりそうな状況にありつつ肥満状態で皮下脂肪をたくさん有している患者さんは決して珍しくないのです。 そういう方は言ってみれば余分なエネルギーを使わないままに命を終わらせてしまっているということになります。

これはよくよく考えてみれば大変不合理なことです。


もし生物の生命活動が物質の過不足のみで営まれるのだと仮定したら、

脂肪が残ったまま死ぬのはおかしくて、せめて脂肪を使い切ってエネルギー不足となってから死に至るのが筋ではないでしょうか。

しかし現実には脂肪を使うことなく死を選ぶ状況が稀でなく認められます。

この生物学的に不合理な現象を起こしているものは何なのか、という話になってきます。

この終末期状況にもなれば糖質経口摂取の影響もなくて、絶食点滴の状況がほとんどです。

点滴には糖質が入っていることも多いですが、私のような糖質制限推進派の医師は補液中の糖質も極力絞るので、糖質の影響はあったとしてもごくわずかでしょう。

それでも現実にはやはり脂肪を残したまま亡くなる人の姿を私は確認しています。

そうなると糖質以外に脂肪を残したまま死に至らしめる要因があると思います。それが私はストレスなのでろうと考えています。

身体も苦しくなってくるともはやマネジメント仕切れないストレスになってのしかかってくるのでしょうけれど、

そうなる前にも脂肪を使わせない状態を起こす要因がかかり続けてこそ、取り返しのつかないストレス状態へとグラデーション的に移行していくはずです。

生理学的に脂肪を利用して然るべき物理的条件に逆らうほどの影響を、慢性持続性ストレスはもたらしうるのだということだと思います。

これは物質の過不足だけに注目していると、決して気づかない事実だと思いますし、

「足りなければ補えばいい」という発想だけに固執すると超えられない壁が現れることの理由を説明しうる話だと思います。

ただしストレスというと見えないし、評価が難しい。

問診で見えたとしても表面的なストレスのみで、無自覚のストレスに関しては問診やアンケートでは拾うことができません。

そうした捉えどころのなさが、あまり多くの方々の賛同が得られにくい大きな要因となってしまっていると感じていますが、

私は上述のロジックなどで問題の根本に慢性持続性ストレスがあると尻尾をつかんでいるつもりです。

この確かに病気をもたらしていると考えられるストレスの問題に、

徹底的にこだわって、具体的な解決策へとつなげていきたいと私は考える次第です。


たがしゅう
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