同じ条件でもどう捉えるかで人生は変わる
2019/10/15 17:00:01 |
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前回記事でクワシオルコルとクッシング症候群の本質的な病態の共通点について指摘しましたが、
もう一つ、同様の病態を持つ病気として「神経性食思不振症(Anorexia nervosa;AN)」があります。俗に言う「拒食症」と呼ばれる病気です。
「拒食」には反動で生じる「過食」がつきものということもあり、近年では「過食症」とセットで「摂食障害」と捉えられるようになってきています。
このANの病態やそれによりもたらされる現象はクワシオルコルとそっくりです。
クワシオルコルとの違いは糖質を中心とした食糧の物理的不足とそれに由来する餓死への恐怖がストレスを与え続けているか、
食事を摂ることで生じる自分のボディイメージの醜形化に対する恐怖がストレスを与え続けているかの違いだと思います。
いずれにしても物理的栄養失調に加え、ストレスによる糖代謝持続駆動状態があるという事が本質的な共通点だと思います。 というのも両者ともにストレスホルモンであるコルチゾールが高値となりますし、
食べないにも関わらず、肝機能障害をきたすという点も一緒です。ただクワシオルコルの方ではその原因が脂肪肝だと判明していますが、
ANでは20~50%に肝機能障害を伴うとする報告がある一方で、肝機能障害の原因が脂肪肝だと確定されている例はそれほど多くないようです。
その代わり、オートファジーの時に誘導されるオートファゴソームが肝臓の組織内に多く観察されることから、オートファジーの亢進が肝機能障害の主因ではないかとする説もあるようです。
私はオートファジーは酵母から哺乳類までの真核生物に共通する飢餓に対する適応システムだと考えるのが自然なので、
オートファジーの亢進が肝機能障害の原因というよりは、肝機能障害の現場でオートファジーが何とか亢進して事態を克服ようと頑張っている中、肝機能障害の犯人だと誤認されているのではないか思います。
まるで動脈硬化(微小炎症が起こり続けている血管)の現場を修復しようとやってきたコレステロールが動脈硬化の犯人だと誤認されている状況と同じように思えます。
ただオートファジーにしても、コレステロールにしても、その本来の機能が過剰に働いてしまうと本来の目的以上に不利益を起こす側面があるので、原因と言えば原因という見方もできますが、より本質的な原因はそこではないと私は考える次第です。
ともあれ、クワシオルコルにしても神経性食思不振症にしても、似ているのは身体に起こる現象だけではなく、精神状態が健康的でないという点でもそっくりです。
具体的には無気力、食欲低下、怯え・恐怖、不安定感などです。
いずれも時々食事摂取の機会があることもあるとは言え、実質的には栄養摂取がゼロに近い状況なので共通の病態が引き起こされるのも当然と言えば当然に思えるかもしれません。
しかしながらほぼ同じ実質的栄養摂取ゼロの状態であるにも関わらず、
両者の病気とは違って、気力はあり、精神面も安定し、身体面の衰えも起こらないどころか、栄養摂取時の状態よりも体調がよくなっている集団が一定数おられます。
それは不食と呼ばれる行為を行っている人達です。
この人達は物理的にはほぼ同じ条件に置かれているにも関わらず起こっている現象は真逆に見えます。
もっと言えば、長時間絶食すれば誰でもケトン体代謝になるのかと思いきや、クワシオルコル、ANでは長時間絶食状態に置かれているにも関わらずとてもケトン代謝に適応しているとは思えない健康状態です。
物理的な条件が同じであるとすれば、残りの違いは精神的な条件の違いということになるでしょうか。
逆に言えば、精神的に心の在り方を変えるストレスマネジメントには、ANから不食までの差をもたらすほどの治療効果をもたらしうる、という話にもなるのではないかと考える次第です。
「不食の人達が言っていることなんか嘘だ!エビデンスがない!」と言ってしまえばそれまでですが、
実際に断食を経験して、体調が改善することを実感したことがある私からみれば、彼らの話には一理あると思っていますし、
血液検査のデータも見せられていたり、その間の様子が克明に記録されていたり、一蹴するのは早計と思いますし、
他のわかっている事実とリンクして考えれば、本当のことを言っている可能性の方が高いと私は判断しています。
自分が何をどのように考えるかという心の在り方は、
地獄から天国へと、人生の道を180度変えるほどの力があると私は感じる次第です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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