具体的なストレスマネジメント法は自分で考える

2018/09/19 00:00:01 | ストレスマネジメント | コメント:2件

私がストレスマネジメントの重要性を説いていると時々聞かれることがあります。

「大事なのはわかりましたけど、具体的にどうすればよいか教えて下さい」

しかし結論から言えば、「自分で考えてもらいたい」です。

それは医者としてうまくいかない場合の逃げの一手を打っているわけでは決してありません。

本当に心底、自分で考えてもらうより他にないと思っています。 なぜならばストレスを感じるか否かには実に多種多様な要因が関わっており、

ものの数分から一時間かそこらでその全てを把握することは不可能に近いからです。

その人の生まれた環境、育てられ方、教育の受け方、

どんなものを食べて、どんなものに心地よさを感じ、どんな人達と接してきたか、

どのようなスポーツをし、どのような文化活動を行い、勉強に対してはどのように思い続けきたのか、

どのような生活を送り、仕事、家庭、プライベートの時間を経てどのような文化的価値観が形成されてきたのか、

その全てを適切に把握して初めて的確なアドバイスを行いうる条件が整います。

しかしそこから先も難しくて、そもそも価値観の違う人間がいくら相手の情報を全て把握したからといって、

適切なストレスマネジメント法を提案できるかといったら必ずしもそうはいかないと思います。

例えば、がんはそもそも気にしないという私にとっての具体的なストレスマネジメント法を伝えたところで、

がんがそこにあること自体が恐怖だという価値観を持っている人には到底受け入れられるものではないでしょう。

その意味で私が具体的なストレスマネジメント法を一生懸命考えたとしても的外れになるということです。

またコメント欄で話題になりましたが、96歳の芸人、内海桂子さんの「あれこれ悩んでも仕方がないから信頼できる医者にすべてお任せ」というストレスマネジメント法は、

内海さんにとって結果を出していてもわたしにとっては受け入れられるものではありません。

それは私自身が医者だからということもあるわけですが、

要するに具体的なストレスマネジメント法は人によって千差万別であるだけでなく、

自分で考えて答えに到達するのが一番有利だということです。

勿論、一緒に考えることはできます。的外れになるかもしれませんが、自分なりに考えてヒントを与えることはできます。

例えば私と内海さんの例からエッセンスを取り出せば、「そもそも不安を作らない」というコツが浮かび上がります。

そこから思考を発展させて、「不安を内省のチャンスとし、自分の思考を整理する」というアドバイスをすることで、

それをきっかけに自分のストレスマネジメントに到達するということは手伝えるかもしれませんが、

「ストレスマネジメント法を教えて下さい」という人の力になることは難しいのです。

そういう意味でパーキンソン病やレヴィ小体型認知症の患者などで、

もはや思考機能が不可逆的な消耗疲弊をきたしてしまっている状況の人に何をどうしてもよくすることができない無力感を覚えることはしばしばあります。

本人の思考があってはじめてストレスマネジメントは成立するのです。


たがしゅう
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コメント

No title

2018/10/09(火) 04:38:22 | URL | 栗田三江(くんだみえ) #U7CTLDyk
たがしゅう先生

このテーマ、以前お会いした時の会話で出てきました。誰かが先生に質問されていたのです。その時から、私は具体的にどうすればよいのかを模索していたのです。

そして最近、その方向性が見えてきました。私の場合、職場でも家庭でも精神的ストレスから逃れられません。逆に逃れようとする事が大きな精神的ストレスになります。

ですから、ストレスを常に感じている事を忘れるくらい、いつも明るく楽しい事を考えるように意識するようにしました。気持ちが穏やかである時では容易です。感情の起伏が激しい時には、先ず気持ちのコントロールからはじめます。

精神的ストレスと共存しても良い、とさえ思え現状を受け入れているわけなのです。

Re: No title

2018/10/09(火) 06:45:21 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
栗田三江(くんだみえ)さん

 コメント頂き有難うございます。

> 職場でも家庭でも精神的ストレスから逃れられません。逆に逃れようとする事が大きな精神的ストレスになります。
> ですから、ストレスを常に感じている事を忘れるくらい、いつも明るく楽しい事を考えるように意識するようにしました。


 ストレスから逃れるべきではありません。
 ストレスとはうまく付き合っていくべきです。だからこそストレス「マネジメント」なのです。
 
 よくも悪くもストレスは人生のスパイスですが、良いように捉えるには自分の心にゆとりがないとできません。本質はストレスを何とかしようとすることではなく、「自分の心にどうやってゆとりを持たせるか」という所にあるのではないかと私は思います。

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