本来胃が果たす役割
2014/10/06 00:01:00 |
素朴な疑問 |
コメント:7件
やせ型の人に起こりやすいという機能性低血糖症と、
胃切除後の人に起こるダンピング症候群は、
病態がよく似ていると以前から思っていました。
いずれも摂取した糖質によって上昇した血糖値に対して、
それを下げるためのインスリンの分泌タイミングが合わない事によって低血糖症状をきたす病態だと思います。
つまりやせ体質の人は胃の働きが十分でないかもしれない、ということです。
この事をよくよく考えると、糖質の害から身を守るためには「胃」の果たす役割が大きいという事実が見えてきます。 たとえば高度肥満の人に対して胃縫縮術という外科手術をする事があります。近年糖尿病の外科療法としても注目される手段です。
要するにこれは胃の働きを強制的に弱める事によって消化吸収を悪くする、「人工的やせ体質化」とでも言えるような手術です。
裏を返せば栄養の吸収において、胃がそれだけ重要な役割を果たしている、ということになるのではないかと思います。
ダンピング症候群は胃がないわけなので、ある意味やむを得ない状況ですが、
やせ体質の人の場合は、そこに「胃が在りながらにしてあたかも胃がないように胃が働いていない状態」なのではないかと思うのです。
従ってやせ体質の人は胃の本来の働きを取り戻すというアプローチも、改善のための対策として大きなものになってくるのではないかと思います。
例えばやせ体質の人がでんぷんのような多糖類を食べたとします。
それらは通常、唾液、膵液に含まれる消化酵素によって二糖類まで分解され、
最終的に小腸の粘膜上皮細胞でエキソグルコシダーゼとエキソペプチダーゼといった酵素により二糖類が単糖類のグルコースまで分解され吸収されるという流れです。
その流れの中で胃では糖類は分解されませんが、少しずつ次の十二指腸へ送り出すという言わば「溜まり場」のような役目をしています。
そうやって適切な量を少しずつ十二指腸に送り出す事で、身体に無理のない影響吸収が行われているわけです。
そしてその胃の働きを調整することにも自律神経が関わってくれています。
自律神経が働いていないと、胃に食事を溜め込むこともなく、すぐに十二指腸に流してしまったりする事が起こりえますが、
それはあたかも胃がなかったかの如く、胃を素通りしてしまっているということになります。
しかもその時十二指腸に入り込んだ食事が不消化であったりした日には、
小腸で一生懸命分解しなければならず、その過程の中で予定より多くのグルコースが急に入ってきたり、
急激な血糖変化に対応しようとしてインスリンを出しすぎてしまうこともあるかもしれません。
その事によって、まさにダンピング症候群のような「機能性低血糖症」を起こしてしまうのではないでしょうか。
となれば、私が考えつく解決策は大きく2つです。
一つは「よく噛む」ことです。噛むことの重要性については以前も触れましたが、
よく噛んで、口の中でできる限り消化を済ませておくことで、
小腸での仕上げ作業の負担をできるだけ減らす事ができれば、予想外の血糖上昇やインスリン分泌が起こらなくてすむのではないでしょうか。
もう一つは「プチ断食」です。
やせの人は断食したらヘロヘロになるのではないか、という事を恐れられますが、
体脂肪率10%の人でも理論上は1ヶ月間水だけで生きられる脂肪が蓄えられています。
しかも糖質制限中であれば、ケトン体を有効に利用できるので普通食よりも安全に断食できます。
胃の働きが弱っている人は、たとえ糖質制限食であっても(特にタンパク質)が胃への負担を与え続ける可能性があります。
そんな胃の状態では本来の役割が果たせず、なかなか体重を増やすことは難しいのではないでしょうか。
少し胃を休ませてやることで、胃が修復する時間を与える、その事によって再び胃が動き出し、本来の働きが戻ってくるのではないかと私は思うのです。
どれくらい胃を休ませたらいいかというのは、おそらく個人差もあるでしょうから、
自分の身体とのクロストークが必要になってくると思います。
あくまで仮説ではありますが、
糖質制限で体重を増やす事ができないと悩んでいるやせ体質の人には、
体調をみながら是非とも一度はトライしてほしいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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やせ型の人が消化吸収を良くして燃費の良い身体になるにはどうしたら良いか、私もいつも自分の身体と試行錯誤しています。
胃腸に優しい食べ方はやはり1日1食のプチ断食でしょうか。
ただ、1日1食だとたくさん食べてもどうしても全体量が減り結局のところ痩せてしまいます。
出来れば全体量が減っても痩せずに体調がキープできることが目標ではありますが、なかなか難しいです。
しかも食べ過ぎて余計に胃腸が疲れ切ってしまう感じがします。
そこで、1食にたくさん食べるのも胃腸に負担がかかってるのかな、とも考え、
少しの量をちょこちょこ食べる食事回数を増やす方法はいかがなものかと検討中です。
先生は、このちょこちょこ食べで食事回数を増やす方法についてはどのようにお考えでしょうか?
やはり胃腸を休ませることを考えるとあまりよろしくはないでしょうか?
1日1食で、しかも胃腸に負担がかからない腹八分目程度の量で食べ続けていれば最初はやつれてフラフラになってもしばらく我慢して続けるべきでしょうか。
先生の考えをお聞きしたいと思います。
宜しくお願い致します。
Re: タイトルなし
御質問頂き有難うございます.
私見ですが,たとえば毎日1日1食でなくても,胃を休ませるという意味合いで時々1日1食にしてみるというやり方でもよいのではないかと思います.
一方,ちょこちょこ食いは結局胃に負担がかかり続けるので,胃の弱い方はやめておいた方がよいのではないかとも思います.
ただ個人差も大きいと思いますので,私の意見も参考程度にとどめ,いろいろ試行錯誤して自分の合ったやり方を探して頂くのが一番だと思います.
No title
先日のTV(主治医が見つかる診療所)で、健康系の番組としては初めて!?かもしれませんが、糖質制限ダイエットとして取り上げていました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/shujii/backnumber/141006/index.html
この中で、タレントの原口あきまささんが、中村整形外科リハビリクリニック 院長中村巧先生の指導を仰ぎ糖質制限に臨み、1ヶ月で6.1㎏減と成功されていました。
この番組の中(今回はダイエット特集でした)で、最後に挙げられていたのが、「自彊術」という大正5年に創案されたもので、硬くなった関節をほぐし、ゆがんだ骨格を改善するものなのだそうです。
ラジオ体操よりハードに見えましたが、やられている中年・ご老人の方々は皆さん若々しい動作でびっくりさせられました。
その中である男性がおっしゃったことが気になったのですが、その方は痩せ形だった(17Xcm、50数㎏)のが、自彊術のおかげで数㎏太ったというのです。
おそらくインナーマッスルが鍛えられたこと、緩んだお腹が絞まり血流が良くなることで腸の機能が回復したこと、と思うのです(ご本人もそのようなことをおっしゃっていました)。
自分は体育会系で育ったため、例えば少しぐらいの痛みや体調不良でも休まず動いていればそのうち良くなるといった考えになりがちなのですが、逆も真なり的な考えも時には有効なのかなと思うのです。
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
「自彊術」,良いそうですね.まだよく勉強できてはいませんが,興味はあります.
肥満にしてもやせにしても,体質の克服には様々なところに気を遣う必要があるのかもしれませんね.
自彊術と調脳
心療内科の池見酉次郎先生の本には<座禅でα波が強くなるが、そこに上達するのに訓練が必要だけれど、自彊術ならもっと容易にそういう状態になれる。自彊術では全身の関節をくまなく動かすために自律神経の各所が刺激されて脳幹の活性化が促がされるから>と言った内容が書かれています。
もちろん運動効果があり一石二鳥以上に心身に良い健康体操です。
機会があったら試して見てくださいね。
Re: 自彊術と調脳
コメント頂き有難うございます.
自彊術,面白そうですね.私も時間ができたら是非勉強してみたいと思います.
管理人のみ閲覧できます
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