漢方薬はアロパシーとホメオパシーの中間か
2017/11/06 00:00:01 |
素朴な疑問 |
コメント:5件
細胞機能の過剰適応に対する治療は、
火事に例えると冷水や消化器をかけたり、薪をくべるのを止めたりする行為になります。
具体的には前者は西洋薬や手術などの治療法で、後者は糖質制限や禁煙などの治療法です。
一方で細胞機能の消耗疲弊は、炎の灯火が消えかかっているような状態です。
この状況で薪をくべるのを止めたところで炎の勢いが戻るわけではありません。ここにやせ型の人が糖質制限だけでうまくいかない理由の共通構造を見ることができます。
ましてや消えそうな灯に水や消化器をかけたりするのは論外です。そんなバカなことは誰もしないだろうと思われるかもしれませんが、
重度のうつ病に対して抗うつ薬を処方する行為はまさにこの状況で、現代の一般的な精神医療ではこのような治療が普通にまかり通っているのが実情です。 だから目の前の患者さんが過剰適応状態にあるのか、消耗疲弊状態にあるのかを見極めるのは非常に大切な観点だと私は考えています。
では消耗疲弊状態にある患者さんに機能を休ませる以外に漢方が有効だと私が考える理由は何でしょうか。
それは消耗疲弊状態にある患者さんに対して、漢方薬が有効性を示す臨床経験を積み重ねてきているからです。
より正確に言えば「可逆的な消耗疲弊状態」に漢方薬は有効です。老衰や脳梗塞後遺症などの不可逆的な消耗疲弊状態にはさすがに漢方でも厳しいですが、
例えばるいそうがあり冷えも強く下痢を繰り返すような患者さんに使う真武湯という漢方薬は、
抗がん剤副作用や重症糖尿病で消耗疲弊状態にあった患者さんの体力を回復させた経験は何度かあります。
他にも補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯など補剤と称する漢方薬群も消耗疲弊状態に使えることがあります。
おそらく消耗疲弊の可逆的な部分に対して細胞機能を賦活させるような作用を通じて回復に転じさせているのではないかと推察されます。
もっと分かりやすく言えば自然治癒力に働きかける漢方薬の効き方です。
最近勉強し始めたホメオパシーにも自然治癒力に働きかける作用があるとされています。
一方で漢方薬には西洋薬のように機能をシャットダウンさせる強い抑制作用がある場合もあります。こむら返りに対し即効する芍薬甘草湯が良い例です。
西洋薬の、発熱に対し解熱で対抗するといった、症状の反対の作用を加える治療のことをホメオパシー(同種療法)に対してアロパシー(異種療法)と呼びます。
そう考えると漢方薬には過剰適応に対するアロパシーの部分と、
消耗疲弊に対するホメオパシーの部分の両方の性質が兼ね備わっているのではないかと私は思うのです。
そして漢方薬のホメオパシー的に作用する部分のメカニズムはいまだ未解明です。
しかし消耗疲弊に対して立ち向かう選択肢が増えれば、
今より救える患者さんが増えるのではないかと私は見通す次第です。
周りからどう思われようと、常識にとらわれずに私はホメオパシーを学びたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
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Re: 先生、こんにちは
コメント頂き有難うございます。
メカニズム不明の事を学んでいくには慎重さも必要です。有益な情報があれば適宜シェアしていきたいと思います。
No title
ホメオパシーは、何世紀過ぎても存在してます。
科学的に解明されていないにも関わらず、
存在し続けるという事実を素直に受け入れたいです。
無知のまま、ホメオパシーを行い、
事故が起こると、ホメオパシーを全否定。
これは、糖質制限でも同じことです。
様々な分野で、コペルニクス的発想が増えると、
世界はもっと変われますね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
御指摘のように、ホメオパシーがただのプラセボ効果なら何世紀にも渡りいくつもの国々で引き継がれるはずもありません。
ホメオパシーにまつわる医療事故としては例えば、「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」が知られています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%96%B0%E7%94%9F%E5%85%90%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3K%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E5%87%BA%E8%A1%80%E7%97%87%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E4%BA%8B%E6%95%85
新生児に対してホメオパシーを指導していた助産師がビタミンK欠乏に対するビタミン補充を行わずにホメオパシーのレメディだけを飲ませ続けていた事に関連したビタミンK欠乏性頭蓋内出血による死亡例です。
しかしこれはホメオパシーが悪かったというよりも、標準的な医療処置を行う事ができなかった指導者側の責任が大きいと思います。抗凝固機能の過剰適応状態にホメオパシーのレメディは無効だったという解釈が妥当であり、決してホメオパシーのせいで死亡したというわけではありません。
「ホメオパシーは非科学的」→「ホメオパシーで医療事故発生」→「事故はホメオパシーのせい」
「糖質制限はガイドラインにない」→「糖質制限で医療事故発生」→「事故は糖質制限のせい」
といった短絡的な三段論法に陥らないように注意したいものです。
カラダにいいイメージです。
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