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過剰適応か、消耗疲弊か
『つぎはぎだらけの脳と心(デイビッド・リンデン、インターシフト)』という本から引用された脳の進化を進めていく上で設定されている2つのルールが紹介されていました。
①古い部品や機能は絶対に取り外さないこと
②新しい部品や機能を付け加える際、その部品や機能は常に「オン」の状態を保ち、「オフ」スイッチはつけないこと
このルールを踏まえて、世の中にある全ての病気を眺めたとき、
怪我や生まれつきの病気を除いた後天的に発生する全ての病気のことを考えてみた時に、
全ての病気は細胞機能の過剰適応か消耗疲弊の2種類に大きく分ける事ができるのではないかと私は考えます。
つまり新しい機能を付けたらずっとオンにし続けなければならないのであれば、
そのシステムに支障をきたしうるのは機能を使い続けてオーバーヒートするか、使いすぎてシャットダウンするかのどちらかしかないということです。
以前、がんと認知症は共存しにくいというBMJの論文を紹介しましたが、
それはがんが糖質摂取に対する過剰適応で、認知症が糖質摂取に対する消耗疲弊であるからと考えれば理解しやすくなります。
勿論オーバーヒートからシャットダウンへの移行期ならがんと認知症が共存しうることになりますが、頻度としては低くて然るべきでしょう。
あるいは肥満とやせの問題もそうです。
肥満はインスリン応答に対する過剰適応、やせはインスリン応答に対する消耗疲弊です。
そしてオーバーヒートもシャットダウンもせずに細胞機能がオンのまま正常に働き続けている状態が、東洋医学で言うところの「中庸(ちゅうよう)」と呼ばれる状態なのではないかと思います。
それ以外にも自己免疫疾患は過剰適応、神経変性疾患は消耗疲弊、
自閉症スペクトラム症候群は過剰適応、うつ病は消耗疲弊、双極性障害(躁うつ病)は過剰適応と消耗疲弊の混在状態、
高血圧、糖尿病は可逆的な過剰適応で、心筋梗塞や脳卒中は不可逆的な消耗疲弊です。
感染症は症状ステージによって過剰適応と消耗疲弊の両方が起こりうると思います。
そして大事なことは、過剰適応か消耗疲弊かで対処法が異なるということです。
過剰適応をきたすか、消耗疲弊に至るかは生来持っている身体の予備力に依存する部分も大きいと思います。
過剰適応に対しては燃え盛る火事に水や消火器をかけるが如く機能を鎮める薬を使えば良いですが、
消耗疲弊に対しては、何は無くとも休ませてあげることが第一義だと思います。それが可逆的な消耗疲弊であればなおのことそうです。
やせ型の人が糖質制限をする時にトラブルに見舞われやすいのも、
消耗疲弊に対する休養という発想が十分でないケースが多いということも理由としてあるかもしれません。
いくら糖質制限でもやせ過ぎを恐れて何度も食べていれば消化管は酷使されて休まる暇がないということです。
そしてこの消耗疲弊に対して休ませる以外のアプローチとして、
漢方やホメオパシーに私は可能性を感じています。
たがしゅう
コメント
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2017-11-05 19:53 編集
No title
細かいことは置いておくと
確かに身の周りでは癌と認知症が共存した例を知らないのです。
どちらも糖質過剰がトリガーとなっているにもかかわらず。
その点に関してとてもスッキリしました。
2017-11-06 13:36 FS URL 編集
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
私達は私達の色眼鏡で世界を複雑に見てしまっている所が多かれ少なかれあると思います。
シンプルに考えれば過剰適応か消耗疲弊のどちらかに当てはまる世の中の病気に対し、私達は勝手に様々な名前をつけて複雑化してしまっているのかもしれません。
2017-11-06 13:56 たがしゅう URL 編集