コロナ感染者の波はなぜ「正規分布」のような形をとるのか

2021/09/29 22:50:00 | 素朴な疑問 | コメント:4件

「正規分布」という用語があります。

正規分布_0-1
(画像引用元サイト:https://best-biostatistics.com/summary/normal_dist.html

「正規分布」というのは一言で言えば、「ある自然界で観察される現象のデータを多く集計すればするほど構築されやすい事象と頻度の分布パターン」です。

上記の図がその「正規分布」と呼ばれる分布パターンを示しています。左右対称の山のような形をしていて、裾野のように端の部分がなだらかに広がっているような形です。釣り鐘のような形にも見えることから「ベルカーブ」などとも呼ばれています。

例えば、ある小さな集団で男性の身長データを集めると、結構人それぞれでバラバラに分布すると思いますが、この人数を増やして、例えば世界の男性全てのデータを集めて集計すると、上記の形に近づいていきます。

大体中央の山に相当する人が約6割で、例えばそこが160-180cmくらいだとすれば、そこから低い方に外れる人が約2割、そこより高い方に外れる人が約2割で、中心部より離れれば離れるほどそういう人の頻度は下がっていくというのがなだらかな裾野の部分が意味することになります。

この「正規分布」は、自然界の現象はもとより、社会活動やビジネスで集団の傾向を考える際にもさまざまなケースで当てはまります。その背景には社会やビジネスにおける集団も何らかの自然の摂理に従って動いているという要素があるからだと言われています。

逆にある集団が正規分布のような分布パターンをとっている時、そこには自然の要素が関わっている可能性が高いと考えることができます。

それを踏まえて、コロナでの感染者数推移のグラフを眺めてみると、まるで「正規分布」のような波の形をしていると私には思えます。

勿論、本来「正規分布」というのは、あくまでも「ある一時点における集団の特徴」を示したもので、コロナ新規感染者のグラフはあくまでも時間経過に伴うある特定の集団の数値を追いかけたものですから、これを単純に「正規分布」と認識するのは正確ではないかもしれません。

ただそもそもなぜ自然の摂理に従った集団は、数が増えれば「正規分布」の分布パターンをとるのかという理由を考えた時に、このコロナの波が「正規分布」様の形をとっていることにひとつの解釈を加えることができます。

「正規分布」の中央部分はある環境における、ある条件において適合した多数の集団(約6割)を意味しますが、何らかの理由でその環境や条件が変化した時に、その6割の適合集団からプラス方向にずれた2割の集団、マイナス方向にずれた2割の集団、それぞれが有利になってくる場合がありえると思います。

つまり、集団が「正規分布」をとる理由は、周囲の環境や条件がどのように変化したとしても、高い確率で集団の中で適合する部分が出て来るようにするための、言わば「自然界の本能的かつ構造的な戦略」だと考えることができます。

ではなぜ、コロナの波が「正規分布」様の形をとっているのかと言いますと、季節変化で一定の気温や湿度などの条件を満たすと、「感染症」イベントを発生する人が出やすくなってきます。

その季節条件には夏には暑さのピークが、冬には寒さのピークがきます。ピーク時というのは言わば集団がもっとも体調不良にさらされやすい時期です。

そのピーク時に発熱をはじめ感染症の症状を出す患者さんがコロナの罹患者の6割を占めているが故に、ピークになるに従って感染者が増えていき、

ピークに達するまでに感染症症状を出すマイナス方向の罹患者が2割、ピーク後に感染症症状を出すプラス方向の罹患者が2割いるが故に、感染者の時間経過とともにまるで「正規分布」のような波を描くという可能性が示唆されます。

この考察がもし正しいのだとすれば、冬には確実に第六波のコロナ感染者の波はきますし、その波の形はやはり「正規分布」の形をとると思います。

そしてもしこの考察が正しいのであれば、今までの前提が大きく崩れてきます。

つまり3密回避、手洗い・うがい、マスク装着、ソーシャルディスタンスなどの標準的とされている感染対策は、感染者数の推移にほとんど影響を与えていない、ということです。

それどころかワクチンの接種でさえ、感染者数の推移にほとんど影響を与えていないということになってしまいます。

なぜならば標準的感染対策も、ワクチン接種も、自然の流れを止めるために打った人為的な処置ですから、

もしもその人為的処置が有効であったと仮定すれば、「正規分布」の形が崩れないと話が合いません。なぜならば、自然の原理に従った結果が「正規分布」であるからです。

問題はなぜ標準的感染対策もワクチン接種も「正規分布」の波を崩せないか、です。常識的に考えれば、人流を抑えれば感染は減るでしょうし、ワクチンを打てば発症は抑えられるはずです。

人流が減っても家庭内感染が増えれば感染者数は増えるという意見も聞きます。そうかもしれませんし、別のどこかで感染したのかもしれませんし、あるいは常在ウイルスを体調の不良により「非自己」と認識してしまったのかもしれません。

いずれにしてもどこでウイルスと接触したかに関わらず、結果的に「正規分布」様の波を示したということは、人流の抑制には感染者数の全体像を変える力はなかったということになります。

コロナワクチンも効いているのであれば、打った人から感染しなくなるはずです。しかし最近ではワクチン2回接種後一定期間経過したのに感染するブレイクスルー感染も結構多く見られていることから、

「コロナワクチンの感染予防効果は確実ではないが、確かな重症化予防効果が認められる」ということがまことしやかに言われています。

しかし重症者、ことに死亡者数の推移を見ても、これまた「正規分布」様の波の形になっているのです。



もしもコロナワクチンに感染予防効果なり、重症化予防効果があるのだとすれば、ワクチンを打った人はかなりの数存在するわけですから、感染者数や死亡者数の波の「正規分布」は崩れないとおかしいですが、

実際には重症者(死亡者)数も「正規分布」様の波をとっています。ということは、「重症者(死亡者)数の推移も自然の摂理に従っている」ということです。

ただ諸外国では、「正規分布」様には見えない波の形をしている国々もあります。例えばロックダウン政策をとったイギリスです。



これは1つ目の波はまだしも、2つ目の波はとても「正規分布」のようには見えません。しかしよく見ると2つの「正規分布」様の波が重なったような波の形にも見えます。

それに厳密なロックダウンを行った1つ目の波では、山の昇りが急峻になっているように見えます。ロックダウンを行うくらいですから、その効果を判定するために相当数のPCR検査を行ったに違いありません。

その努力が山の傾斜が高いことに関与しているのかもしれませんが、逆に言えばそれぐらい強力な人為を加えなければ「正規分布」の波を変えられないと見ることもできます。

日本はいろいろな混乱はありながらも、その時々のルール(例:37.5℃以上が4日間以上続く時にPCR検査、県外をまたぐ無症候旅行者にPCR検査、など)に皆が従って感染者数の把握に努めた結果、「正規分布」に近い感染者推移の波が描出された可能性があると思います。

逆に言えば、これは従来の感染症対策が意味を成していないということを真剣に考えなければならないポイントです。

現に感染症の専門家達は第五波で感染者数が急速に減少している理由をまともに説明することができていません。

ついでに言えば、第五波での死亡者数と第三波での死亡者数を比べると、第三波の方が高いということがわかります。第五波は感染爆発だと叫ばれるほどに新規感染者の数はかつてない多さだったわけですが、

そのほとんどが重症化しておらず、見かけだおしの波だという風にも見えます。けれど見かけだおしにしても水増しのような感染者数の上乗せもありながらも、やっぱり「正規分布」のような波の形にはなっています。

この水増し部分が生まれた背景には、検査体制の拡大や濃厚接触者という名の無症状者への積極的検査勧奨といった人為的処置の影響があると思いますが、

そういう人為を加えるにしても全国満遍なく一定のルールに従って実施されているのであれば、その結果も「正規分布」に従うということになるのであろうと思います。

ある意味で日本人の真面目さが導き出した「考えるきっかけ」だということになるかもしれません。

私は数理モデルや統計モデルに詳しくないので、これにより例えば「〇〇万人感染者が出るかもしれない」という予想を立てることはできませんが、

そんなモデルを使わなくても、この冬にも必ずコロナの波が来て、かつその感染者数推移がおそらく「正規分布」型の波になるであろうという予想はかなり自信を持って立てることができます。

なぜならばこの冬にも寒さのピークは必ず訪れて、その冬の間に感染症の症状を起こす一定の罹患者集団はまず発生するに違いないからです。

そしてその原因はコロナとは限りませんが、コロナを視野にこれまでと同等以上の体制で発熱患者に対してコロナかどうかを調べる試みが一定のルールに基づいて全国で行われるであろうことは容易に想像できるからです。


さぁ、この予想は果たして当たるでしょうか。

もしも当たるようであれば、私達がすべきことは感染症対策の常識を抜本的に見直すことだと思います。


たがしゅう
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コメント

ブルートゥース接続

2021/09/30(木) 18:17:56 | URL | 通りすがり #-
ザウルスさんがワクチン接種でBluetooth接続可能かどうか神社にて検証。

https://blog.goo.ne.jp/zaurus13/e/45810b5d4cb1f5562e44a099e3ca4936

中村先生が自らの患者さんに対して磁石がくっつくか検証。

https://note.com/nakamuraclinic/n/na1cb21434be9

たがしゅう先生も患者さんで検証してみて下さい。

Re: ブルートゥース接続

2021/10/01(金) 10:46:12 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
通りすがり さん

 コメント頂き有難うございます。

 そうですね。自分の目で確認することが大事かもしれません。機会を伺いたいと思います。

第5波の死者数

2021/10/03(日) 00:32:46 | URL | 中嶋一雄 #wKydAIho
 第3波より少ないと言うことは、4/12より始まった高齢者対象の接種の効果とは考えられないでしょうか。感染は防げなくても、重症化や死亡は防げているといえないでしょうか

Re: 第5波の死者数

2021/10/03(日) 10:26:48 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
中嶋一雄 先生

 コメント頂き有難うございます。

 確かに素直に受け止めれば、御指摘のように考えるのが普通だと思います。

 ただ私はこれまでにコロナ禍の一連の現象に対して独自の考察を積み重ねていく中で、統計データは現実を適切に反映していないという考えに至っており、ここのデータだけは現実を適切に反映していると素直に思えないでいます。

 ひとつはオンラインセミナーでも申しましたが、高齢者施設で予防接種を受けた人がはたして予防接種前と同様の頻度で発熱時にコロナPCR検査をきちんと受けているだろうかという問題です。正直言って施設側としてはクラスターを絶対に出したくないという心理が強く働く状況です。仮に予防接種済の人が発熱しても、すでに接種を受けているからという理由でコロナPCR検査を行わないという流れがあっても不思議ではありません。従って、コロナ重症者が少ないというデータをそのまま額面通りに受け止めるのはある意味で危険です。

 一方でコロナPCR検査がきちんと行われたからといって、PCR陽性が本当にコロナによる重症者だと断定できるのかという点にも疑問があります。コロナPCR陽性は、相手のウイルスが生きていることの保証にはならないからです。別の抗原に対する抗原抗体反応が起こっていても、コロナPCR陽性となる可能性は十分にあります。その意味でも統計データは実際の重症者数を反映できている可能性が低いです。だから二重の理由でコロナ重症者の統計データをそのまま額面通りに受け取ることは難しいと私は思っています。

 ただそのようなトリックが起こりえる中でも、全体の波が「正規分布」様になっているという事実は注目に値します。やはりコロナPCR検査は誰に行っても一定の確率で陽性になるわけではなく、発熱患者で陽性となる可能性が高くなる傾向がありますので、発熱患者を中心にPCR検査が行われてさえいれば、おそらく発熱患者の実情に即したコロナPCR陽性者を検出することができるのでしょう。それが本当にコロナを抗原としているかは別としてですが。

 従ってまとめますと、第5波で観察された重症者数は、おそらくは予防接種済の人の数が低く見積もられた上での発熱患者中のコロナPCR陽性重症者を反映している可能性が高いと私は考える次第です。

 一方でワクチンが効いたと考えるとつじつまが合わない現象は大きく2つあると思っています。まず第5波の波の高さです。普通もしも感染が拡大するのであれば、まだ免疫を持っている人が少ない第1波、第2波の時により大きくなり、波を繰り返す度に小さくなっていかなければなりませんが、現実はその逆です。その理由を専門家は「デルタ株の出現」というズルい概念で説明しようとしますが、そのように説明してしまうとその「デルタ株」とやらは、爆発的に感染させる強さを持っていながら、重症化はほとんどさせないという非常におかしな性質を持っているということになります。これがまず非常に不自然です。

 また、第5波の急速な収束をワクチンの効果だと説明する専門家もいますが、ではなぜその効果はデルタ株が出現する前に現れなかったのか、そしてなぜデルタ株による感染拡大のちょうどピークのところで効き始め、そして感染拡大とほぼ対称的なスピードで減少していくのかというグラフの推移がまったくもって不自然な現象となってしまうと思います。

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