事前の想定より事後の柔軟対応
2018/06/29 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:4件
最近医療関係の講演会でも、ネット動画配信の形式がよく見られるようになってきました。
これまでは都心部の講師の講演会は都心部にいる人しか聞きに行けなかったのが、
このシステムによって、講師は都心部にいてもネットでつなぐことによって、地方にいる人も聴講する事ができるようになりました。
インターネットがもたらした新しい情報伝達の在り方のおかげで、情報を入手するのに地理的な不公平性はだいぶ少なくなったように思えます。
ところがこのネット動画講演会、実際に参加してみると私は若干の違和感を覚えます。
一つはその講義に集中しにくいということです。 言い方を変えると、緊張感が生まれにくい、と言うこともできるように思います。
つまり、実際に講演会に参加していれば講師の目線が気になったり、講師の熱量が伝わったりしやすいところが、
ネット動画では目の前に人がいるわけではなく、講師が話す動画という情報が送られている模擬的な状況ですので、
例えば、途中で退屈になりスマホを取り出してネットニュースやSNSを閲覧するという行動をしても、講師に気付かれることがありません。
人間は楽な環境が与えられれば流されてしまいやすいもので、ここでもそういう心理が働いてしまうのではないかと思っています。
あるいはそれに通じることかもしれませんが、質問がしにくい、ということも感じます。
自分で言うのもなんですが、私は比較的講演会で質問をする方の人間だと思うのですが、
そんな私でもネット講演会で質問をしたことはありません。たまたま質問したいことがないだけという可能性も否定できませんが、
やはり振り返れば、質問をする上での無意識のハードルの高さを感じていた可能性はあるような気がします。
今回私が言いたいことは、こうしたネット動画では普通の講演会より質が落ちる、ということではなく、
新しいことはとにかくやってみないことにはわからないことが多いということです。
現在私は遠隔地から当院受診を希望する方々のために、自由診療でのオンライン診療の枠組みを構築しようと鋭意活動中なのですが、
そうした議論の中でも、「もし〇〇になったらどうする?」とか、「△△のケースになったらどう対応する?」などと言った、もしもシリーズが噴出します。
しかし、そもそも新しいことをやろうとしているので、私たちが想定できるもしもシリーズには限界があります。
それこそ上述のネット講演会での違和感のように、事前には私達が予想しえなかった、やってみてはじめて遭遇する事象が出てくる可能性は高いと思うのです。
ということは新しいことを行う際に大切なことは事前のシミュレーションもさることながら、
それ以上に柔軟に対応する力なのではないかと私は思うわけです。
事前のシミュレーションは大失敗をしないための最低限のところにとどめ、
実際はやってみてはじめてわかってきたさまざまな問題と柔軟に向き合い、
徐々に浮かび上がってくるその新しい診療の特徴を把握していくことによって、
事前にあれこれ悩んで対策を立てるよりも、より的確で効率的な対策を立てることができるようになるのではないかと思うのです。
そんなことを考えながら、オンライン診療体制の準備を進めている今日この頃です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
以前、小保方さんのご本の時に投稿させていただいたものです。
たいした提案ではないのですが、動画を視聴するとき、ヘッドホーンを使うと幾分集中力に違いが出てくると思います。
もちろん周囲の環境で難しいことはあると思いますが。
少し前まで語学のレッスンをSkypeで受けていた時の経験からです。
この語学の学習にしてもそうですが、学校のない地方にいても、交通費を使わなくても、選択次第で質の高い授業が(私の場合はマンツーマンの対面で)受けられます。
講師からは少しでも集中力が増すようにヘッドホーンを使った方がいいと言われましたし、経験してみてそうでした。
特に、リスニングに特化したレッスンではなく、普通に日本人の講師でした。
もちろん、医療とは全く違いますが、一度ヘッドホーンを使って視聴されてみてください。
なにか発見があるかもしれません。
宜しくお願いします
私は自分の体は自ら実験して確かめてみたいと思います。ですが医学の素人には危険の無い範囲か判断力が有りません。田頭先生のように患者の話にも耳を傾けて、医療に取り組まれるお医者様は有難いです。
20年以上前のテレビ会議は、画像が粗くて遅れる、緊迫感ないものでしたが、今ではほぼ毎日双方向で会議をしています。どんどんシステムは進化しますので使い方に工夫するとか、新しいことに取り組んで下さい。
今後ともどうか宜しくお願い致します。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 一度ヘッドホーンを使って視聴されてみてください。
> なにか発見があるかもしれません。
非常に具体的なアドバイスで大変参考になります。
今度是非一度やってみようと思います。
考えてみれば、対面でも後ろの方の席に座れば同じように集中力は途切れますね。
ネット動画特有のデメリットではないようにも思えます。
いかに集中しやすい環境を整えるかということが大切なのかもしれませんね。
Re: 宜しくお願いします
コメント頂き有難うございます。
平原さんのように現代の糖尿病診療に疑問を抱き主体的に動こうにも理解してもらえず悩んでいる人は潜在的な人も含めれば相当の数がいるのではないかと私は踏んでいます。
そうした悩める人達が、このネットの力を利用して、主体的医療を展開できるようになるためのプラットフォームを私は作っていきたいと考えています。
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