生まれ持った体質を大事にする
2018/02/19 00:00:01 |
お勉強 |
コメント:10件
いわゆる体質が母親の妊娠周辺期の栄養状態に起因しているかもしれないというDOHaD仮説について紹介しましたが、
その時に紹介した下記の医学雑誌にはいろいろと興味深い話が書かれていました。
本日の注目点は、「やせすぎの状態から急激に体重を増やそうとする行為はどうなのか」という点です。
月刊糖尿病2017年7月号
2017年6月20日発売
A4変型判/112頁
価格:本体2,700円+税
ISBNコード:978-4-287-82097-1
全ページカラー印刷
特集●糖尿病の「体質」:発症する人としない人の違いはなにか?
企画編集/安田和基
Ⅳ.「体質」の解明の展望とその発展
3.DOHaD説からみた糖尿病の体質/福岡秀興
(以下、p85-86より引用)
古くよりヨーロッパでは出生体重の低下は疾病リスクの高いことが経験的に知られていた。
出生体重は胎内栄養環境の間接的マーカーであり、その低下は、劣悪な胎内環境の結果と考えられる。
(中略)
ところが低栄養に加えて過量栄養への暴露も疾病発症リスクは高くなるのである。
すなわち母親が、受精時に肥満であった場合、妊娠中の体重増加量が多い場合、妊娠糖尿病の場合などに
出生児は過体重となりやすく、糖尿病、肥満、心臓循環器系疾患を起こしやすくなる。
2型糖尿病の発症リスクは、大きく生まれても小さく生まれても高くなるU字型を示すといえる。
肥満や耐糖能に強く関連している脂肪の蓄積は胎生25週ごろよりはじまる。
また出生体重の小さい児は脂肪量が相対的に少ないが、生後の短期間に体重が急激にキャッチアップする(small becoming big)のは、
脂肪の増加が中心として起こる現象であって、それは将来的に肥満を起こしやすい。
早産児も出生時は体脂肪量が少ないので、同様に急激な体重増加は、肥満・心臓循環器系の疾病リスクが高くなる(Progect VIVA)。
逆に出生体重が小さくても、急激なキャッチアップが起こらない場合は、
肥満・耐糖能低下のリスクは高くならないことを示唆するデータが報告されはじめている。
(引用、ここまで)
一般に栄養障害といえば、やせの状態をイメージされることが多いと思いますが、
肥満の状態も立派な栄養障害です。肥満は糖尿病や脳心血管疾患など生活習慣病のリスクであることはよく知られていますが、
実はやせていても、太っていても2型糖尿病のリスクとなるということが引用記事には書かれています。
ということは、やせであろうと肥満であろうと、2型糖尿病発症における共通の栄養学的な病態基盤があるのではないでしょうか。
裏を返せば、肥満でも低栄養なこともあれば、やせでも栄養は足りていることもある、ということでもあります。
DOHaD仮説に従って母親の栄養エネルギーの利用状況がそのまま児に伝わるのだとすれば、
その伝わった健康・疾病素因は、見た目がやせか肥満かということだけにとらわれてはいけないという警鐘を鳴らされているように私には思えます。
そしてもう一つ引用文の後半から非常に示唆的なメッセージを受け取ることができます。
小児へのケトン食の実践時に問題となる副作用として低身長が挙げられますが、
その際に途中でケトン食を中止すれば、一時的に低かった身長は通常食と同様の身長へとキャッチアップできるというデータを以前紹介しました。
成人と違い、小児時代の急激な食事変更は、体質を規定する腸内細菌叢の改変を来しうるのかもしれません。
しかし、そのような急激なキャッチアップは身体に負担をかけてしまうことを、
ひいては生まれ持った体質をむやみに変えようとしてはいけないということを教えられているような気がします。
肥満体質、やせ体質、それぞれ受け入れて、
その上で体調をベースに大事に身体を使っていくことが大事だと思います。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
栄養などにきをつけて体調を整えていきたいです。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
子供の身長
Re: 子供の身長
御質問頂き有難うございます。
> 糖質制限すると子供の身長の伸びが一時的に悪くなるというのと、昔の人の方が大きかった、というのはあくまでも子供の事でこの農耕時代の現代だからでしょうか。
私は栄養の観点で身長に最も寄与するのは「タンパク質がしっかり代謝できているかどうか」という点にあると考えています。
糖質制限で低身長というのではなく、「糖質制限+タンパク質制限」=「ケトン食」で低身長となりうるという事です。
脂質、蛋白質をしっかり摂る糖質制限で低身長の心配は基本的にないと思っています。
だから農耕開始前の自然糖質制限食状態では身長は伸びるし、農耕開始後に食事全体に占める比率の炭水化物が増え、蛋白質が減ったら身長が下がるし、高度経済成長を期に蛋白質摂取を加えやすい状況になって再び高身長、という流れがあると思います。
うちの6歳の長男について
うちの長男(幼稚園年長)ですが、スーパー糖質制限母乳のみで育ち、1歳で断乳してから幼稚園まではスーパー&スタンダード糖質制限でした。今は幼稚園の給食の関係でスタンダード位の糖質制限です。生まれた時は3000g以下で小さかったのですが、よくミルクを飲みよく肉・卵を食べて今では2年先の体型になりました!もちろん幼稚園でも一番大きいです!家系的に誰も大きい人はいないので、糖質制限のお陰かと思っています。1歳の長女も肉・卵をよく食べるので、すくすく大きくなっています。因みに2人共筋肉質で太ってはいません。
訂正 身長の件
ケトン食はタンパク質も制限するというところが問題なんですね。
Re: 訂正 身長の件
訂正およびコメント頂き有難うございます。
> ケトン食はタンパク質も制限するというところが問題なんですね。
そういう事です。
糖質制限だけならまだしも、タンパク質を制限するという行為は、ちょっと自然の中では起こりにくい人為的な方法なんですね。だから健康食というよりも治療食という位置付けが的確になると思います。
ただ正確に言えば糖質制限+タンパク質制限のケトン食の事を古典的ケトン食と言いますが、実はケトン食にはいろいろ種類があります。例えば、ケトン食の中でもタンパク質を制限しないものを「修正アトキンス食」と言いますが、これは江部先生のスーパー糖質制限食のスタイルにかなり近いものです。
ケトン食を採用している小児科のある病院でも、古典的ケトン食の実施はあくまでも一時的で病状が安定したら修正アトキンス食などの続けやすい方法へ移行するというパターンが多いようです。
2014年1月5日(日)の本ブログ記事
「ケトン食の種類」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-142.html
も御参照下さい。
Re: うちの6歳の長男について
コメント頂き有難うございます。
糖質制限ですくすく育っておられるようで何よりです。成長が楽しみですね。
No title
私は出生時2800gと大きくはありませんでしたし、中三までは痩せ型でした。
一方一つ下の妹は出生時3000g以上で幼児期はぷくぷくしてましたが、その後一転し、痩せのがりがりです。
私はA型で妹はB型、私は母系が、妹は父系の影響が大きいのかも知れません。
(父方は肥満者無し、母方は晩年太るタイプのようでした。)
お互いの出生時のことを考えますと、
私のときは母はまだ本家住まいで農作業等かなりの重労働を強いられていたとのこと。
一方妹のときは妊娠後に新居へ移ったため、母は重労働から解放されていたとのことです。
その辺のストレスによる母体への影響も小さくないのではないかと思います。
私は何でも食べるのに対し、妹は偏食傾向強く、
とにかく食後からばったりと倒れ込んで良く眠ってました。
食べても太らない見た目綺麗な妹を羨ましく思っていましたが、神経質で病弱な体質で今後が非常に心配です。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
自分の経験からは体質の固定性にはかなり強固なものがあると感じるのですが、
どのくらい強固なのかに関してはある程度個人差もありそうですね。
抗生剤など人為的な要素を使わずに、自然経過で体質が変わるという人がいれば、その特徴や要因については興味があります。
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