科学的事実と事実重視型思考

2019/06/20 11:00:01 | 素朴な疑問 | コメント:0件

科学には再現性と普遍性が大事だと述べました。

しかしながら医学における科学的根拠としては、「○○という大規模研究で△△と□□との関係は科学的に証明されている」というような言い方がなされます。

しかし糖質制限関連の論文しかりスタチン関連の論文しかり、結論は論文によって一定していない実情があります。

結論が一定しないということは、再現性がないということであり、よって「科学的ではない」という結論になってしまいます。

もし科学的に証明されていると言いたいのであれば、誰が何度調べてもその結果が導かれなければおかしいということになるのではないでしょうか。

しかしながらだからと言って再現性がないことは価値がないかと言ったらそうではありません。 再現性がないことは、「現代の科学」で評価できないだけの話です。そこに価値があるのかどうかとは全く別の問題です。

科学へ信頼を寄せること自体は結構なことですが、その科学というものをくれぐれもはき違えないようにすること、そして科学では評価できない世界はまだまだ広いという謙虚な姿勢を持つことが大事だと私は思います。

ここでいう科学とは狭義の「科学」です。即ち、再現性と普遍性が認められる世界の話です。

もしかしたら今現在非科学的と思われている様々な現象も、将来的に科学が進歩すればそのメカニズムが解明される日が来るのかもしれませんが、

そういった将来の可能性をも包含した広義の意味の「科学」ではなく、私達は今ここにある現実の世界を生きているので、実際に使えるツールとして科学を実際問題どこまで信用すべきかのかという事が大事だと思います。

もう少しかみ砕いて言えば、不確かな医学の情報をどうやって自分の中で確かなものとして取り入れていけばよいのかという問題です。

ここにおいて私が重要視するのは、「事実重視型思考」です。

有名医学論文でどのような内容が書かれていようが、偉い先生がどんな怖い事を難しい言葉で表現していようが、

自分の身に起こっている事実こそが全てを考えていく時の基盤にするのが「事実重視型思考」です。

例えば「塩分を取ると高血圧になる」と言われていたら、実際に塩分の高い食べ物を摂って血圧がどうなるかを自分の身体で調べて確認するということです。

一方で「コレステロールが高いと動脈硬化が進行する」というような命題は、実際に確認しようと思ってもできないと思われるかもしれません。

ところが例えば何らかの食事をしてコレステロールが高い状態になったとします。

「動脈硬化が進行する」ということは血管が狭くなり、血流が隅々の組織まで行き届きにくくなる、ということですから、体調が悪くなるはずです。

そうすると、コレステロールが高くなる食事を摂り続けて体調が悪くなるかどうかで命題に準じた内容で事実がどうなるかを確認することができそうにも思えます。

ところがここで問題なのは、コレステロールが高いことが原因なのか、結果なのかがわからないということです。

コレステロールが高いこと自身が動脈硬化を引き起こしているのか、それとも別に真の原因があって、それを防ぐためにコレステロールを増やすことで対応するも対応しきれずに動脈硬化へ進展しているのかがわかりません。

前者ならコレステロールを下げなければならないし、後者ならコレステロールを下げずに真の原因に対処しなければなりません。

従って「コレステロールの高い食事を摂り続けて体調がどうなるかをみる」だけでは、結局コレステロールがよいのか悪いのかを判断することはできません。

そこで重要になってくるのが命題に関連する周辺事実です。

例えば、「コレステロールは全細胞の細胞膜の材料になっている」とか「コレステロールが多い卵からは雛という一つの生命体が誕生する」などの事実です。少なくともコレステロールの物質としての重要性が見えてきます。

また、糖質制限の実践によってコレステロールが高くなるタイプの人がいますが、これで体調がよくなれば少なくともコレステロールの上昇が体調を悪化させる動脈硬化へ寄与しているとは考えにくくなります。

むしろ逆にコレステロールの上昇が動脈硬化を修復する方向へと働きかけていると考えられ、

「コレステロールが高いと動脈硬化が進行する」とされていた理由も、真の原因が放置されているためにコレステロールの上昇による血管修復が追いつかずに結果的に動脈硬化が進行したと考えればつじつまが合ってきます。

このように小さな事実を組み合わせて、現実に即した解釈へと導いていく思考が事実重視型思考です。

ちなみに糖質制限を実践してコレステロールが下がるパターンの人もいますから、上記の解釈に普遍性はありません。そういう意味ではこの事実重視型思考は科学的ではなく、あくまでも個人に当てはまる話です。

ただし糖質制限をしてコレステロールが上がるタイプの人も、糖質制限をしてコレステロールが下がるタイプの人も、

体調が良くなっていくという点では共通しているので、本質はコレステロールが高くなるかどうかにあるのではなく、

糖質制限という介入が総体として体調の改善を導いていくという事実に大きな価値があります。これにはかなり高い確率で再現性があります。例外もあるので科学的とまでは言い切れませんが、そこに迫らんとする信頼性があります。

動かしがたい科学的事実は重視する、結論が一定しない科学的事実と称する非科学的事実はあくまでも一解釈として保留し、

さらに普遍性はなくとも自分の体験を通じて少なくとも自分の中で再現性が感じられる科学的事実に近い事実を重視しながら、

自分の思考やスタイルを確立していくやり方が、すべてを科学で説明しきれない今の世の中で自分にとって良い生き方を見つけるための基本姿勢となるのではないかと私は考える次第です。


たがしゅう
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