一度分解して本質を見る
2017/01/20 00:00:01 |
フランスから学ぶこと |
コメント:7件
フランスの哲学者レヴィ=ストロースは100歳で亡くなるまで、
その素晴らしき思考は衰える事はなかったと言われています。
レヴィ=ストロースだけではなく、実はフランスは日本に次ぐ世界2位の長寿大国です。
また、フランスにはフレンチパラドックスという現象がある事が知られています。
あくまで一般的にですが、悪いとされているバターやクリームなどの飽和脂肪酸をたっぷり摂取しているのにもかかわらず、心臓疾患の死亡率が低いという逆転現象の事です。
フランス人が好んでよく飲むワインのポリフェノールが良いからなんじゃないかとか、まことしやかに言われていますが、
糖質制限の観点でみれば飽和脂肪酸を取る事自体が心臓疾患での死亡率を高めているわけではないという事がまずはわかります。
一方で以前ブログ読者のNornさんから頂いた情報によりますと、
フランス人は結構炭水化物もしっかり食べているという状況もあるそうです。飽和脂肪酸が悪くなくても、炭水化物と一緒に食べていたら脂肪蓄積に代謝が動き、心臓にとっても必ずしもよくない事になりそうです。
しからばフランス人の長寿に関しては、レヴィ=ストロースがそうであったように、心の在り方に別の秘訣があるのではないかと考えるようになりました。 そんな事を考えながら、Yahoo!ニュースを見ていると、
あるフランス人女性記者の、日本人女性とフランス人女性の間での結婚に対する価値観の違いについて書かれた記事が目に入ってきました。
今回は少しその記事から抜粋してみたいと思います。
フランス人から見たら日本女性は不思議だ
東洋経済オンライン 1/17(火) 9:00配信
(以下、引用)
私は2009年まで日本の高校のフランス語教師として、日本に住んでいた経験があるが、
住んでいた頃、日本では「結婚」というテーマがどれくらい重大なことか、十分に理解していた。
当時、私は20代だったから、周りの日本女性の友達とお茶することがよくあったが、「結婚」が話題になることが多かったからだ。
(中略)
しかし、フランスの社会では、「何歳までに結婚しないと恥ずかしい」といった暗黙のルールは存在しない。
何歳になっても結婚をせずに同棲を続けるカップルだって多くいる。
フランスでは、結婚をしなくても、ただ単にカップルでいるというステータスが法律で認められており「Concubinage(コンクビナージュ)」と呼ばれている。これは日本でいう「内縁」や「同棲」と同じような意味だ。
さらに、フランス人カップルには結婚以外にもうひとつのオプションがある。
コンクビナージュよりは正式な関係で、結婚と比べると手続きの簡単な選択肢。それは1999年に認められるようになった「PACS(パックス)」だ。
これは、日本語にすると民事連帯契約となるが、簡単に言うと、いざ男女が別れる際に、正式な離婚よりはよっぽど簡単に終わらせることができる「内縁以上、結婚未満」のカジュアルな契約だ。
(中略)
ここまで聞くと「フランス人女性は結婚のプレッシャーを知らない自由人」と日本人女性はうらやましく思うかもしれないが、フランスもそう簡単にはいかない。フランスには日本とは違うプレッシャーが存在する。
私の親の世代が子どもに対して最も望んでいることがある。
それは、結婚という形ではなく、「よい相手を見つけること」「仕事のプロフェッショナルライフを充実させること」「家庭を作ること」そして「よい物件を買うこと」だ。これは重要なポイントだ。
結婚のプレッシャーが存在しなくても、この「完璧な」大人になるための4つの要素「パートナー」「仕事」「子ども」「物件」をうまく組み合わせるプレッシャーがあらゆる方面からかけられる。
(中略)
あまり知られていないが、日本と違ってフランスでは、「結婚と仕事のどちらかを選ばないといけない」ということは存在しない。
逆にリッチな旦那様を見つけたからと言って、玉の輿に乗って仕事をしなくても済むというフランス人女性がいたら、社会的にかなり「厄介者」と見なされてしまう。
子どもがいても、子育てに集中するために働かない女性も、あまりよい目で見られていない。
(中略)
フランスも日本も結婚にまつわる悩みは尽きないが、
日本と比べて、フランスは結婚という制度を一度否定し、そしてカオスを経験し、再構築した歴史を持つだけあって、結婚に対してリアリストのような気がする。
(引用、ここまで)
この記事は、なかなか興味深いと思います。
フランス人と日本人とで「結婚」という事だけで考えてみても、捉え方が随分違うという事です。
特に興味深いのは、フランスでは結婚という「構造」を分解し、再構築した歴史を持っているという事です。
自然界のものが構造と分解の繰り返しから成り立ってきたとするレヴィ=ストロースの構造主義に通じるものがあります。
一度分解することで、日本で見られるような「結婚しないと恥ずかしい」とか、「結婚と仕事のどちらかを選ぶ」といった特定の価値観にとらわれずに済むようになり、
結婚に対してより自由度を持って考える事ができるようにフランスではなっているようです。
しかしフランスにはフランスで完璧な大人としての4つの要素を求められるという別なプレッシャーがかかると記者は述べますが、
それでも日本に比べてフランスの方が自由度が高いように私は思います。
完璧な大人を求められるというのはストレスがかかる事かもしれませんが、
それでも一緒に生きるパートナーがいれば、人生の様々な困難に立ち向かう勇気を互いにもらい、プレッシャーに打ち勝つことができるようになるかもしれません。
そしてそれこそが結婚の本質なのではないでしょうか。
一度結婚という制度「構造」を分解する事によって、
本質が見え、年齢が来たから結婚するのでは決してなくて、
そばにいてほしいパートナーと一緒になるために結婚をするという本来の目的に目が行くようになったのがフランス人であるような気がします。
いわば、既存の固定観念を一回壊して本質を考えてみる事の大切さです。
フランス人の生き方から学ぶべきことはまだまだたくさんありそうです。
折をみて紹介していきたいと思います。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
長寿
そのうち5万人ほどが寝たきりらしいですね。
フランスでは無意味な点滴や胃ロウはしないらしいですね。
寝たきりの少ない本当の意味での健康寿命が長いのでしょうか。
フランス人はうつ伏せ寝が多いと聞きますが本当でしょうか?
うつ伏せ寝を習慣化すると、高齢者の肺炎はなくなるようにも思えますが、どうなんでしょう?
Re: 長寿
コメント頂き有難うございます。
> フランスでは無意味な点滴や胃ロウはしないらしいですね。
> 寝たきりの少ない本当の意味での健康寿命が長いのでしょうか。
私もその可能性があると思っています。
そしてその秘訣がフランス人の一般的なライフスタイルにあるのだとすれば、そこにはおおいに学ぶべきことがあるのではないかと興味を持った次第です。
> フランス人はうつ伏せ寝が多いと聞きますが本当でしょうか?
> うつ伏せ寝を習慣化すると、高齢者の肺炎はなくなるようにも思えますが、どうなんでしょう?
興味深い御指摘です。
うつ伏せ寝と言えば、我々医療従事者としては「乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク」が頭に思い浮かびます。
しかしよくよく考えれば、その常識も原因と結果をはき違えているという可能性が十分にあると思います。
もう少しうつ伏せ寝に関する情報を集めて、何かわかればまた記事にさせて頂きたいと思います。
うつぶせ寝と乳幼児突然死症候群
大昔は眠りが浅いというのはとても重要で、何かあるとすぐ目覚めることが、おそらく生き延びるために必要だったのではないでしょうか?今となっては寝ない赤ちゃんを育てるのはただただ大変なだけですけど。
Re: うつぶせ寝と乳幼児突然死症候群
コメント頂き有難うございます。
うつ伏せ寝に関する実情を教えて頂き大変参考になります。
心地よいことなのに生存に不利に働くという事に私は若干の違和感を感じます。うつ伏せ寝になっても呼吸が止まる赤ちゃんと止まらない赤ちゃんの差はどこにあるのでしょう。たとえ寝返りができずとも、寝苦しさから首を横に向けて気道閉塞を解除する事はできないものでしょうか。
例えば通常なら目覚めるはずの刺激に対しても目覚めなくなるほどの何らかの病的な睡眠状態をきたす要因に本来の原因が隠されている可能性も考える必要があるかもしれません。
No title
結婚とは(全てとは言いませんが)多くは次世代を作り育てるもの、そしてそれは哀しいかな、年齢の制約もあるのはご存知かと思います。
また自由度が高いことが良いこと、とも言い切れないと思います。ましてや自由主義のフランス人に(国家として考えた時)何の問題もないのかというと、、、そうとも言えないのです。
Re: タイトルなし
それは私もそう思います。
良い悪いの問題ではなく、考え方の違いだと思います。
記事の趣旨は日本とフランスの結婚にまつわる価値観の違いを、個人の視点から明らかにしていったものであり、「どうすべきだ」という主張は必ずしも入っていなくてもおかしくないと思います。多様性を理解し、その上で自分の頭の中で再構築して結婚をどう捉えるかを決めるのは自分自身だと私は考えています。
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