自然に人為を加える
2016/11/06 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:4件
先日、自宅の給湯器が故障しまして、
シャワーからお湯が出ないという状況に追い込まれる出来事がありました。
最近朝が肌寒い気候の日もちらほら出始めましたが、こういう時に限って寒い日なのです。
しかしシャワーも浴びずに出勤するわけにもいかないので、意を決してえいやっと冷水シャワーを浴びました。
そうすると大変刺激が強くて「ヒイッ、ヒイッ!」などと呼吸が荒くなり、結果として体感的に15秒程度しか持ちませんでした。
これは給湯器が治るまでなかなかきついなと思っていたところ、
そういえば火もまだろくに扱えなかった原始時代の人はこういう場合どうしていたのだろうという疑問がふと浮かびました。 無論、そんな時代には今ほど衛生面への意識があったわけではなかったでしょうから、そもそも身体を洗う習慣はなかったのかもしれませんが、
それにしても生活活動の中でドロまみれになって、身体を洗いたいという場面はあったはずです。
でもその時には火がなくお湯は温泉でもない限りありませんから、先ほどの私のように水で洗うしかなかったのではないかと思います。
ところが、図鑑などで見る原始時代の人類は、今の現代人と比べて体毛が濃かったように描かれています。
体毛が濃ければ水で身体を洗う事自体は、私が経験したほど刺激的ではなかった可能性があります。
火の発見の起源は諸説あるそうですが、約170万年〜20万年前と考えられているようです。
もしかしたら火の発見により、ヒトはそれまでは必要であった体毛を濃くするという機能を退化させ、環境適応を図ってきたのかもしれません。
一方で温かいお湯に身体ごと浸かるという行為は明らかに気持ちがいいですね。
それも体温よりやや高い温度で入るのが絶妙に気持ちいいというのはおそらく誰もが知っている感覚だろうと思います。最初にお湯に身体を浸けようと考えた人類は偉大ですね。
それが素晴らしく気持ちがよかったからこそ、お風呂や温泉などという形でそれが文化として受け継がれていったわけです。
身体を温めるという行為は、単に気持ちがいいだけではなく、医学的にも効能がある事がよく知られています。
いずれこのブログでも「温熱療法」について取り上げようと思っていますが、
本日はそこではなく、「身体を温かいお湯に浸ける」という行為は自然か不自然か、という事を考えてみたいと思います。
というのも、初期人類の誰かが火を発見していなければ、そもそも生じ得なかった行為です。
また火が見つかっただけでも不十分で、それを用いて湯を沸かそうとしなければ、湯を沸かすための水を入れる容器的なものと、その下に火を起こすためのスペースを準備しなければ、
「身体を温かいお湯に浸ける」という行為は成立しない事になります。
何が言いたいかといいますと、ただ自然である事だけでは100点満点ではないという事です。
自然現象に何らかの人為を加える事によって100点満点に近づく事ができるのではないかと私は考えるのです。
自然に人為を加えると言えば、代表的なのは「湿潤療法」です。
怪我をすると出血し、人体の止血機構が働き、その後傷口から傷を治すための滲出液が産生されます。
自然がいいからといってとりあえず吹き出る血を押さえて止め、後はそのまま放置していれば傷口はまず間違いなくかさぶたになります。
しかしそこへ止血作用のある被覆剤や滲出液が乾燥せずに済む被覆剤などで、人為的に湿潤環境を作れば傷はより早くきれいに治り、しかも痛くなくなります。
このように自然をベースに適切な人為を加えていく方法論こそに、
真の健康を目指せる潜在能力があるのではないかと私は考える次第です。
寒中に冷水シャワー浴びてそんな事を考えました。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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口内・腸内フローラと糖質制限
先生のブログでは、様々な角度から物事も見て、考えることの重要性を学ばさせていただいています。
江部先生のブログにもコメントをしたのですが、昨日、世界一受けたい授業で口内フローラについて触れられていました。私も花田先生の「白米が健康寿命を縮める」を読んだことがあります。糖質が口内フローラを乱し、様々な疾患の原因になるということに驚いています。
以前の先生のブログで、「腸内細菌を入れ替えるのは至難の技」について書かれていました。病気には、口内フローラや腸内フローラが関係しているのでしょうか?腸内フローラといえば、潰瘍性大腸炎などでは、便移植で改善するということもあるようです。また、小腸は最大の免疫機構ともいわれているようです。
糖質制限がこれらフローラにどのような影響を与えるのか?好影響を与えるのか?非常に興味があるところです。もっとも、どういうフローラがよいといえるのか、どうなれば乱れているのかがわからなければ、検討することができないのかもしれません。
だらだら記載しましたが、糖質制限の有用性を説明するためには、身体全体に影響を与える可能性が強い、これらフローラとの関係についての検討が進めばいいように思いました。
Re: 口内・腸内フローラと糖質制限
コメント頂き有難うございます。
口内・腸内フローラに関しては御指摘のように重要な視点と思います。
一方で個人差・多様性の大きな領域でもあります。人体と同様、細菌も複雑な有機物複合体であるからです。
複雑×複雑は相当複雑です。フローラを変えるおおよその方向性のようなものは示せても多様性が故の例外も多く、万人に良いというような改善法を見つけ出すのはなかなか厳しいのではないか、というのが現時点での私の見解です。よって月並みな意見ですが、色々試して自分に合った方法を探すというアプローチが現実的と思います。
ありがとうございます
先生の言われるように、個人個人で何が良いのかがわかりませんね。とくに腸内フローラは複雑なように思います。糖質制限が人為を加えるということかどうかわかりませんが(本来の食事ということであれば、それが自然?)、プラスになるような報告が出てくることを期待しています。
Re: ありがとうございます
コメント頂き有難うございます。
糖質制限はどちらかと言えば自然>人為だと私は思います。
これを基本にさらにどう人為を加えていくかという試行錯誤が今後の重要課題と思います。
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