自律神経は橋渡し役

2014/12/05 00:01:00 | お勉強 | コメント:3件

今日は自律神経について考えます。

「自律神経」=「交感神経+副交換神経」です。

アクセルの役割を持つ交感神経と、ブレーキの役割を持つ副交感神経を、

うまく組み合わせることによって、人体は恒常性を保っています。

当ブログでも何度か取り上げていますが、深く学ぶと非常に奥が深いものです。

私が購読している神経内科専門誌の今月のテーマが「自律神経」でした。

Clinical Neuroscience(クリニカルニューロサイエンス) 2014年12月号
『自律神経系の最新情報』


様々な事が書かれていてとても興味深かったのですが、

その中で自律神経とインスリンの関わりについてまとめてみます。 まず「食事摂取」→「血糖上昇」→「インスリン分泌」→「満腹感」→「血糖正常化」という流れがありますが、

実は私たちは食事をとって、摂取した食物がすべて消化吸収される前、およそ30分程度で「満腹感」を感じています。

この急速かつ短期的な満腹感の創出に自律神経が関わっているというのです。

その時、以下のような様々な因子が直接自律神経に作用しています。

①胃の伸展刺激
②消化管ホルモン(コレシストキニン、GLP-1、ペプチドYYなど)
③膵ホルモン(インスリン、膵ポリペプチド、アミリンなど)
④食事成分(糖質、脂質、タンパク質など〉
⑤その他(レプチンなど)


例えば、食べ物を食べて胃が膨張すれば、

その刺激を自律神経(求心性迷走神経)が感知して、脳へ満腹感を与え食欲を抑制する事が報告されています。

しかし、それならばという事で胃を人工的に風船で膨らませたら満腹感を生じるのかどうかも調べられましたが、

風船で膨らませただけでは満腹感は誘導されず、同時に栄養素による刺激が必要だと言う事が示されました。

栄養素でいえば、グルコースは肝臓を支配する自律神経(迷走神経)ニューロンを抑制し、上部消化管を支配する自律神経(迷走神経)ニューロンを活性化する事が報告されています。

迷走神経はブレーキに当たる副交感神経にあたるので、

言い換えれば、グルコースがたくさんはいってくれば肝臓は活発に働き、上部消化管は活動を低下させるということになります。

一方で脂質の場合は、脂質分子もしくはその消化産物が、

腸管内分泌細胞からのコレシストキニン、ペプチドYY、GLP-1などの分泌を誘導し、

これらが自律神経(迷走神経)に作用する事で摂食量を抑制するという事が関わっています。

さらに肝臓での代謝変化を自律神経(交感神経〉が感知し、その情報が脳へ伝えられ、

中枢の副交換神経からの刺激が膵臓に伝わり、インスリン合成量が増加するというシステムもわかっています。

そしてそのインスリンがまた自律神経(迷走神経〉を刺激し、満腹感の誘導に関わっていたりもするわけです。


・・・ややこしいですよね。私も全容を把握するの難しいです。

でもとにかく食事摂取から満腹感を生じるのに自律神経が複雑に関わっているという事は伝わるのではないでしょうか。

私流に解釈すれば、「自律神経は外界と内面との橋渡しをしている」とも言えそうです。

例えば機能性低血糖症があります。

あれは食事によって上昇した血糖値に対して、インスリンを作りすぎてしまい遅れて低血糖をきたすわけですが、

これも自律神経の働きがスムーズでないために、「上昇した血糖値に見合ったインスリンを作りなさい」という伝達がうまく伝わらないために起こってしまう現象ではないかと思うのです。

では自律神経を整えれば機能性低血糖症はよくなるということになりますが、自律神経障害はどのように治療をすればよいでしょうか。

冒頭にも述べたように、自律神経は交感神経と副交感神経の二重支配です。

交感神経を高めようとすれば副交感神経を犠牲にしなければなりませんし、逆もまたしかりです。

だから自律神経相手に一方向性の性質を持つ西洋薬は、実は無力に近いのです。

私は自律神経を整えるには、「自律神経にとって有害になるものを取り除く」ことが一番だと考えます。

糖質摂取がその最たるものですが、それ以外にもストレス、過度な運動、飲酒、睡眠不足などいろいろあります。

糖質制限をベースにそうした要因をコントロールして

自律神経がきちんと働く環境を整えていく事が重要だと思います。


たがしゅう
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コメント

糖尿病による自律神経障害

2014/12/05(金) 15:40:28 | URL | アンチスタチン主義 #-
たがしゅう先生
私はかつて糖尿病の自律神経障害を研究テーマとしていたので、自律神経の重要性は人一倍承知しているつもりです。自律神経症状というのは臨床現場ではきわめて軽視されがちですが、ほとんどの薬剤が自律神経に何らかの作用を及ぼしています。それは時には自律神経の生理的反応を妨げる有害な物質になっている事も少なくないわけです。たとえば認知症によく使われるアセチルコリンを活性化させる薬剤で嘔吐や下痢をきたしたり、ひどい場合は脈拍が低下して重度の徐脈性不整脈を引き起こす場合すらあります。「物忘れ外来」という名目で患者を誘導し年齢相応の物忘れでも安易にコリンエステラーゼ阻害剤が処方されてしまい、嘔吐・下痢・頻尿・徐脈(場合によっては心停止)などの自律神経失調症を続発させている現状はCRAZYとしか言いようがないですね。



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2014/12/05(金) 22:11:28 | | #
このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 糖尿病による自律神経障害

2014/12/06(土) 00:37:01 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
アンチスタチン主義 さん

 コメント頂き有難うございます。

> ほとんどの薬剤が自律神経に何らかの作用を及ぼしています。それは時には自律神経の生理的反応を妨げる有害な物質になっている事も少なくないわけです。

 なるほど、勉強になります。

 多剤内服で調子を崩すのは薬の相互作用以外にそういう所にも原因があるのかもしれませんね。

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