胃下垂は先天的か、後天的か
2018/03/17 00:00:01 |
素朴な疑問 |
コメント:2件
本日は胃下垂について考えてみたいと思います。
胃下垂とは、その名の通り「胃が正常な位置よりも下まで垂れ下がっている状態」の事をいいます。
(画像はこちらのサイトより引用させて頂きました)。
「胃を支える筋肉や脂肪の少ないやせ型で長身の人」に多いとされ、高度のやせ型体質の人には割とセットで観察される現象です。
ひと昔前の胃の検査がバリウムで行われた頃は、この胃下垂が偶発的に見つかることも多かったですが、
今は胃内視鏡検査が主流となって指摘しにくくなったことや、それが見つかったからといって西洋医学的には特別治療対象とも考えられていないために特に気にも留められていない状況ではないかと思います。
ちなみに東洋医学的には胃下垂や胃アトニー(胃壁の筋肉の緊張が低下し、胃の働きが鈍くなる状態)は立派な治療対象であり、対処するための治療選択肢がいくつかありますが、
今回はその話ではなくて、胃下垂が先天的か後天的かという事について考えてみたいと思います。 先日自分は胃下垂だというやせ型の女性と話をする機会がありました。
なぜ自分が胃下垂だとわかったのかを尋ねると、昔バリウム検査をしてもらった時にわかったからだという事でした。
胃下垂と言えば生まれつき、つまり先天的な体質だと捉えている人も多いかもしれませんが、
その人の胃下垂がはたして本当はいつからのものなのか、はっきりとした事は言えないのではないかと私は思います。
その人がもしも赤ちゃん時代にバリウム検査をしていて胃下垂を指摘されていれば別ですが、
そうした検査は多くの場合行われませんので、胃下垂が先天的か後天的かの判断は多くの場合難しいという事になります。
ただし、ここからは私の個人的な意見ですが、
胃下垂は多くの場合後天的に、すなわち生まれた後の環境要因によって起こるものではないかと私は考えています。
なぜならば胃下垂のその形状自体が、もともとあった正常の胃の形が何らかの原因によって引き伸ばされた形であるように見えるからです。
胃下垂状態の胃がデフォルトだと仮定すれば、それは生命維持において欠陥だと思います。
胃下垂があれば食物を十二指腸へ送り込むのがスムーズに行かなくなったり、それゆえに食塊が必要以上に胃酸を浴び続けて胃粘膜にも支障をきたしやすくなるからです。
それであれば最初は普通の胃の形であったけれど、
何らかの原因で胃が引き伸ばされて後天的に胃下垂になったと考えるのが自然だと思います。
では胃が引き伸ばされた原因は何かと言えば、真っ先に思いつくのは「食べ物の消化吸収機能が低下したために胃に長く溜まり続けた食塊の重みで胃が引き伸ばされる」ということです。
つまりは胃下垂の原因として消化吸収障害があるのではないかという事です。
その消化吸収障害は体質と言えば体質かもしれませんが、ここでストレスの問題が関わってきます。
暴飲暴食、過労、不安などによるストレスは消化吸収機能を低下させます。
即ちストレスマネジメント不足が消化吸収障害をもたらし、消化吸収障害が結果的に胃下垂をもたらし、
さらに言えば胃下垂である事やストレスマネジメントが不十分な事が機能性低血糖症を起こしやすくしているとも考えることもできます。
つまりは病的なやせ型体質の問題にはストレスマネジメント不足を起点にして、それに付随する様々な問題が起こっているという構図も読み取ることができるように思います。
何でもかんでもストレスかと言われてしまいそうですが、
そう考えるとやせ型の人にLow T3が起こりやすいことも、プチ断食を頑ななまでに拒む人が多いことも、
糖質摂取による代理ストレス反応で緩和的に感じられる事が多いことも、いろいろな事が一本の線でつながってくるように私は思うのです。
ただしストレスマネジメント不足があるからやせるのか、
やせ体質があるからストレスマネジメント不足になりやすいのか、
ニワトリが先か、タマゴが先かの問題に関して結論づけることはできません。
しかし少なくとも胃下垂が先ではないと私は思います。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
胃下垂の原因として長時間の食物の停滞というのは、なるほど、と膝をうちました。
それで思い出しました。忘れられない研修医のときの受けもち患者さんがいます。自己免疫疾患でステロイドがっつり入ってる典型的な方でした。(そういう方は「どういう性格」であるか確固とした傾向ありますよね、明言は避けます。インパクトありました)
彼女がいつも胃もたれの苦痛をとうとうと述べる(当方は歯科!治せません!!)のを聞いていたのですが、
ある日
「病院にいって胃カメラしたら前の日の夕食が残ってた。ごはん残ってるんだからあなたは食べなくていいんですよ、っていわれたのよ!!」と言われました。朝ごはん抜いているのですから食べて最低12時間以上経過しているのですよ。(そんなに長時間胃に停滞したら当然もたれます。これが彼女の日常であるのです。その苦痛は大変なもの)
12時間胃の内容物を抱えている人というのも世の中に存在する、であれば当然重さで引き伸ばされるということも、納得がいく理屈である、そう思いました。
胃下垂については
糖反射による胃内容物の停滞時間延長、高血糖による結合組織の糖化
も関連していると考えております
まだお話してみたいことがありますので
お会いした折に是非☆
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
まさに私の仮説を実証しているような症例を紹介して頂き深謝申し上げます。
性格、心理傾向の面でも参考になりそうです。
> 胃下垂については
> 糖反射による胃内容物の停滞時間延長、高血糖による結合組織の糖化
> も関連していると考えております
これも非常に興味深い御指摘です。
そうなると「そもそもなぜ糖反射が起こるのか」とか、「やせ型の人のインスリンや筋肉以外の血糖処理法」についても興味が広がっていきます。また意見交換させて頂ければ幸いです。
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