あえて糖質を利用する戦略
2017/06/24 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:7件
糖質制限推進派医師の立場でいると、
糖質に対するネガティブなイメージを患者さんに伝える機会がどうしても多くなります。
しかし時には自分を振り返る作業も必要です。自分の理論が完璧だとあぐらをかいたままではいつかきっと足元をすくわれます。
自己批判の意味を込めて、本日は糖質制限推進派医師の視点で糖質のポジティブな側面について考えてみたいと思います。
一つのきっかけとなるのは、近頃話題となっている将棋界の新星、藤井聡太四段です。
2017年6月23日現在、14歳という若さで、公式戦負けなしの28連勝記録を飾っています。凄まじい才能の持ち主ですね。
そんな中、彼の対局中の食事が俄かに注目を集めています。 プロの将棋の世界では、退局が朝から夜遅くまで長時間に及ぶことも稀ではないそうです。
そのため退局の途中で別室に移動して食事を摂る事が通例のようですが、
正午の昼食、18時の夕食以外にも、対局中にもその場で糖分補給のためお菓子を食べるという棋士の方もおられます。
藤井聡太四段においても例外ではなく、ニュースで取り上げられている藤井四段の食事内容を見ていると、
例えば肉ぶっかけそば、 カレーうどん、チャーシューメンなどと、麺類を中心に好んで食べられているそうです。
また対局中にチョコレートを食べるという事もあるそうです。かなり炭水化物中心の食生活と言えますが、藤井四段は太っている風には見えませんし、
何より前人未踏の将棋界連勝記録を叩き出しています。これがもし糖質制限をしたら藤井四段はもっと良い成績を出せるのでしょうか。
私は藤井四段においては糖質が良い方向に作用していると考えます。
糖質を摂取し、ドーパミン分泌が刺激されますが、ドーパミンが分泌される事により人は多幸感とともに意欲がもたらされます。
従って、短期集中型の決戦において糖質を摂取して意欲を高める行為は良い戦略となりうるということです。
おそらく藤井四段は糖代謝がメインの代謝システムで、糖質を摂取することで急峻にドーパミン分泌量が増えていることでしょう。
言い換えれば糖質摂取はドーパミン分泌における合法的なドーピング行為とも言えますが、
普段から糖質摂取によりドーパミン分泌がドバっともたらされることに慣れている人が、いきなり糖質制限をしてしまうと代謝の急ハンドルを切る事になります。
糖質制限状態でも食べる事によりドーパミン分泌は刺激されますが、糖質摂取と比べるとその程度は弱く中毒的にはなりません。
従って、もし藤井四段が糖質制限に取り組めば、それまでに得られていたほどのドーパミン刺激が得られなくなるために、
おそらく成績は一時的に下がるということが予想されます。
しかしその後もし糖質制限を継続していれば、適量のドーパミン刺激で集中力を発揮し、
ケトン体代謝の長持ちエネルギーでそもそも間食せずとも対局で集中力を発揮し続けることができるようになる可能性はあると思います。
短期的に集中を高める糖質摂取生活か、長期的に安定した集中を維持する糖質制限生活か、
適材適所があるとは思いますが、その辺りを理解した上で糖質摂取を利用するという選択肢はあっても良いように私は思います。
とはいえ藤井四段は、糖質主体の食生活でも太ってもいないし、素晴らしい成績を出していたりするところをみると、
もしかしたら腸内細菌が糖質過剰に適応しているのではないかという可能性さえ見えてきます。
しかしそれでも長期的にそういう生活を続けていれば、どこかで消化管のキャパシティを超えて弊害を生じる時期が来るとも知れません。
彗星の如く現れた将棋界の期待のホープには、是非とも息の長い活躍をしてもらいたいものです。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
問題は、人工甘味料含めて砂糖やハチミツで甘く味付けした、ふたを開ければすぐに飲める飲料だと思います。スポーツドリンクも問題だと思っています。
私は銭湯が好きなので行ってますが、フロ上がりにお母さんが、幼児に「ポ何とか」を飲ませているのを見て、牛乳か100%ジュースにした方がいいのに・・とついおせっかいを焼きそうになるのをグッと堪えています。
昔は「お風呂上りにビン牛乳」だったのですが、今は甘いスポドリ。
幼いころに覚えた味は大人になってもずっと続くから、コワいです。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 糖尿病や肥満などで困っていなければ、特に若い人は糖質制限しなくても良いのではないかと。いろんな食材を偏らずに食べれば良いと思います。
私は老若男女、健康のための基本として糖質制限の考えを取り入れるべきだと思っています。
なぜならば糖尿病や肥満は糖質の害の形としてわかりやすいだけであって、実際には動脈硬化、アレルギー、自己免疫疾患、神経変性疾患、精神疾患など様々な病に糖質過剰の影響があるからです。
ただ皆が皆、糖質制限をしなければならないとまでは思っていません。糖質の害についてわかった上で利用するのはあってよいと思います。アルコールの害がわかった上で飲酒するのと同様です。要は選択肢が与えられるべきだと考えています。
先生 こんにちは
私は糖質を摂ると気分の上下が激しくなるので
糖質制限は精神安定の為に良かったのですけど
糖質オンリー(?)の食生活でもいつも朗らかな人もいますし
次の記事のバターの実験、お疲れ様でした
でも「バターの単独食べは不味かった」ですか?
私は 200gでも食べれてしまうほどなので
買わないようにしている位ですのに (^-^:
Re: 先生 こんにちは
コメント頂き有難うございます。
糖質に適応しているように見える方々は確かにいます。
しかしそれでも理論的には身体に無理がかかっている事が推定されるので注意が必要だとは思います。
みきさん以外にもバター単独食べ大丈夫だという方は確かにおられました。そういう方でも同じ検査結果が出るのかどうかは少し興味のあるところです。
でもバター大丈夫な人も、オリーブオイルをぐびぐび飲むのは流石に無理でしょう。ケトン体産生の為に脂質ばっかり摂るという方法はやはり人為性を感じるところです。
No title
私も藤井四段の食生活が気になっていました。糖質過多でも相当な集中力で素晴らしい結果を出されている事の理由を色々考えていました。
フルーツだけを召し上がり、自身で人体実験をしている男性も居るわけですから、そのあたりにヒントがあるのかなあ・・・とも。
しかし藤井四段の例で、糖質が脳の栄養素として必要。チョコレートを常食すれば集中力が高まるという誤解をされるヒトも出てくるような気がします。
控えめで謙虚な人柄を見ると、将棋に関心ない私でも応援したくなります。同時に糖質も悪い側面ばかりではないのかなあ・・と思ったりします。藤井四段の食事、私には絶対真似できませんが・・
くんだみえ
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
「糖質はエネルギー源」
「糖質は摂りすぎると害になる」
両方の側面があるという事ですね。
糖質はエネルギー源で集中力が高まるもの、とだけ解釈して誤解してしまう人は、
もとより自分の都合の良いフィルターで世の中を眺める事が癖になっている人ではないかと思います。そのような思考パターンは糖質のこと以外でも誤解を招くリスクが高いと思います。
物事を多面的に捉え、公平に情報を集める事が大事です。
糖質の害をわかった上で利用するのはアリです。しかし不幸なのは糖質を良い物とだけ認識したまま糖質の害を受け続ける事だと思います。糖質の良い面だけが殊更強調され偏った情報に溢れていた現代社会の情報バランスを整えていく必要があると思っています。
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