蛋白癌という考え方
2014/02/27 00:01:00 |
お勉強 |
コメント:6件
私は神経変性疾患にも糖質制限が有効であると考えています.
本日はそんな神経変性疾患の一つであるパーキンソン病の病態機序について勉強してみます.
パーキンソン病と運動異常( Movement Disorders) (アクチュアル 脳・神経疾患の臨床) 単行本 – 2013/12/6
髙橋良輔 (編集), 辻 省次 (編集)
パーキンソン病は90~95%が孤発性(原因不明)と言われ,残りの5~10%は遺伝子が関わってパーキンソン病を発症します.
パーキンソン病では「神経変性」という現象が脳の中の中脳黒質という部位でのドーパミン作動性神経を中心に起こります.その結果,ドーパミンが徐々に機能しなくなり身体がうまく動かせなくなったり手が震えたりするようになっていく病気です.
最近は中脳黒質だけではなく,青斑核ノルアドレナリン作動性神経,自律神経,嗅覚・高次脳機能に係わる神経といった他の神経にも神経変性が及び,体の動き以外にもの忘れや嗅覚の低下,便秘や立ちくらみといった非運動症状も起こってくるということも注目されています.
その神経変性の原因として注目されているのが,αシヌクレイン(アルファシヌクレイン)という異常蛋白質です. αシヌクレインは前の神経から後の神経へ情報を伝える際の前の神経の終わりの部分(前シナプス)に豊富に存在する膜に親和性を持つ蛋白質です.神経伝達物質の調節に関与していると考えられています.
パーキンソン病原因遺伝子の中にはαシヌクレインの凝集性を高めるものもありますので,パーキンソン病においてかなり鍵となる物質です.
このαシヌクレイン以外にも神経変性の原因として以下の要因が考えられています.
①αシヌクレインの凝集
②異常蛋白質の蓄積
③酸化ストレス
④ミトコンドリア
⑤毒物・環境因子
このうち,③④に関してはケトン食で改善させることが可能です.それが糖質制限がパーキンソン病に有効であると考える理由の一つです.
そしてもう一つ注目すべきことは,
このαシヌクレインがさらに病的な構造変化をとることで,神経から神経へ病的な変化が伝わっていく感染症のような現象が起こることが知られてきています.これを「αシヌクレインのプリオン様伝搬」といいます.
プリオン病と言えば,世間的には狂牛病で知られるようになりましたが,プリオンという異常蛋白によって引き起こされる急速進行性の難治性疾患で,感染性があるというのが最大の特徴です.
ただでさえよくないαシヌクレインという異常蛋白が,さらにプリオンのような感染性の異常蛋白に変貌してしまうということで,「蛋白癌」という仮説が提唱されてきているのです.
こうした病的構造を持つαシヌクレインが形成される原因ははっきりしておらず,
今のところはαシヌクレイン遺伝子のミスセンス変異,リン酸化,αシヌクレイン遺伝子の発現を高める内的要因,ウイルスなどの外的凝集因子,などが考えられています.
私はこの中の「αシヌクレイン遺伝子の発現を高める内的要因」の中に,酸化ストレスが大きな割合を占めているのではないかと考えています.
完全に防ぎ切れるかどうかはわかりませんが,
少なくとも糖質を控えて酸化ストレスリスクを減らすことは
パーキンソン病の発症・進展予防に有効である可能性を秘めていると思います.
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
根がSF人間なのでこういう発想は大好きです。コレステロールや中性脂肪、肌のシミ、吹き出物、そしてこの蛋白癌。余計なものが全身の至る所に徐々にたまっていく、やがてそれが深刻な結果になる、面白すぎますね。
そういえばBSEも牛に牛骨粉を食べさせたのが原因だとか言う話ですが、完全草食獣に動物性脂肪や蛋白を食べさせて悪影響がないのかは凄く疑問ですよね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
> そういえばBSEも牛に牛骨粉を食べさせたのが原因だとか言う話ですが、完全草食獣に動物性脂肪や蛋白を食べさせて悪影響がないのかは凄く疑問ですよね。
興味深いですね.不自然な食事が不自然な物質を産み出しているのかもしれません.
父のこと
父は、体(足)を動かすために薬を飲んでいましたが、副作用として幻覚・妄想が出て、息子としては、いたたまれませんでした。
71歳で亡くなりましたが、東京女子医大病院に入院していた時に、40歳台の比較的若い患者さんに会いました。
足が、ぴくぴくと痙攣して気の毒でした。
若年でのパーキンソン病はつらいですね。
あれから20年・・・
>パーキンソン病は90~95%が孤発性(原因不明)と言われ,残りの5~10%は遺 伝子が関わってパーキンソン病を発症します.
>神経変性の原因として注目されているのが,αシヌクレイン(アルファシヌクレ イン)という異常蛋白質です.
こうした病的構造を持つαシヌクレインが形成される原因ははっきりしておらず,今のところはαシヌクレイン遺伝子のミスセンス変異,リン酸化,αシヌクレイン遺伝子の発現を高める内的要因,ウイルスなどの外的凝集因子,などが考えられています.
>私はこの中の「αシヌクレイン遺伝子の発現を高める内的要因」の中に,酸化ストレスが大きな割合を占めているのではないかと考えています.
完全に防ぎ切れるかどうかはわかりませんが,少なくとも糖質を控えて酸化ストレスリスクを減らすことは、パーキンソン病の発症・進展予防に有効である可能性を秘めていると思います.
● 糖質の過剰摂取による酸化ストレスは、ここにもありそうですね。
私は、今年61歳で、父が発病した年齢になります。「糖質オフ」で、さまざまな神経性障害が防げるといいですね。
パーキンソン病の方にも、「糖質制限」を勧めたいですね。
Re: 父のこと
コメント頂き有難うございます.
> 「糖質オフ」で、さまざまな神経性障害が防げるといいですね。
> パーキンソン病の方にも、「糖質制限」を勧めたいですね。
糖質制限をただの糖尿病治療と位置付けているとこうした応用が効きません.
「糖質に多面的な害がある」ということを認識し,その害を極力取り除くという発想が大事だと思います.
Re: No title
情報を頂き有難うございます.後日記事に取り上げて考えてみたいと思います.
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