全体理解に役立たせる勉強

2017/01/28 00:00:01 | お勉強 | コメント:0件

少し込み入った医学情報を把握する目的で私が愛読している「実験医学」という雑誌があります。

増刊号の今月の特集テーマはズバリ、「糖尿病」でした。



実験医学増刊 年月 Vol.35 No.2 糖尿病 研究の“いま"と治療の“これから"〜 単行本 – 2017/1/25
綿田 裕孝 (編集)


特集の中で東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座特任教授の植木浩二郎先生によって、

現在わかっている範囲でケトン体に関する分子生物学的な事実の解説がなされている事もあって、

「ケトン体=悪者」とされてきた業界の風潮は近年大分様変わりしたことを少しずつ感じられるようになってきています。 ただこうした雑誌を読んで思うのは、「科学が世界をすこぶる複雑にしている」という事です。

AMPキナーゼ、mTORC1、SREBP1cをはじめ、様々な細かい分子名が登場し、それぞれに矢印や抑制印がつなげられ代謝マップのようなものが図示されていて、

科学によってものすごく全体像が明らかにされたのだという印象だけはやたらと読者に伝わってくるのだけれど、

実際の所、細かい分子がわかった所で、「だから何?」のレベルを超える事ができず、構造を分解したせいで余計に全体像が見えなくなっている様相を呈しているようです。

そんな細かい分子生物学的なメカニズムも大事なのかもしれませんが、もっと大事な事はそれを踏まえて全体をどう捉えるかという事です。

インスリンによって動かされる細かい分子の名前を百個も千個も覚えるよりも、「インスリンはエネルギーを取り込むように作用するホルモンである」という大雑把な概念をつかむことの方がよほど重要だと私は思います。

だから私がこうした雑誌を読む時には、書かれている内容を理解するというよりも、

書かれている内容から全体を理解するヒントが隠れていないかを探すというスタンスで読むようにしています。

今回も少し気になる内容が目についたので少し紹介したいと思います。

(以下、p227より引用)

2.肥満脂肪組織における低酸素環境


肥満状態で脂肪組織に生じる変化の1つとして、最近われわれは肥満脂肪組織の低酸素環境の意義に注目している。

肥満状態で脂肪組織の酸素分圧が低下することは以前から知られていた。

ヒト肥満者の脂肪組織では非肥満者と比べ酸素分圧が10~20mmHg程度低い。

また、体脂肪率と脂肪組織の酸素分圧は逆相関し、酸素分圧の低下に伴いマクロファージの集積が増える。

これまでに、肥満脂肪組織での酸素分圧低下に対するいくつかの機序が報告されている。

まず、肥満者の脂肪組織では血流量が少ない。これは、肥満者の脂肪組織では毛細血管が少なく、大型の血管が多いこととも関連している。

また、脂肪細胞の大きさも脂肪組織低酸素と関係する。

組織中で酸素の拡散距離は100~200μmと短いのに対し、肥満脂肪組織の脂肪細胞径は150~200μmにも及ぶ。

そのため、細胞の反対側にまで十分量の酸素が拡散できず、低酸素領域ができる。

さらに機能的には、非肥満者でみられる食後一過性の血流量の増加が、肥満者の脂肪組織ではみられないことも報告されている。

このような複数の理由により、肥満状態で脂肪組織は低酸素に陥りやすい。

(引用、ここまで)



これは、糖質制限をしても肥満が解消しきれない状態への打開策へとつながりうる話だと私は解釈しました。

要するに脂肪組織には血流が少なく、大きくなればなるほど低酸素状態にさらされるという事です。

ということは肥満型の糖質制限実践者にとっては、断食で脂肪の量を強制的に減らさない限り、

脂肪を燃焼させるための糖質制限による代謝変化を脂肪組織の深部にまで起こさせることはしにくいという事ではないかと思います。

そしてない所に血流を持っていく事はできませんから、この状況を打破するにはどうすればいいでしょうか。

それは、通常以上に空気を取りこみ、行き届きにくい脂肪組織の深部へも酸素が届きやすくなるよう呼吸法を利用するという事です。

先日紹介した日野原先生の提唱するうつ伏せ寝健康法でも、横隔膜が引っ張られて睡眠中に自然と腹式呼吸になると書かれていましたが、

これを意識的に行う事でも、普段起こせない代謝変化を起こせるようになるかもしれません。

呼吸法に興味を持っていろいろ調べていると、実は自分が知らないだけで世の中には様々な呼吸法があるという事に気付かされます。

また自分でも実践して、少しずつこのブログで紹介していければと思います。


たがしゅう
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する