「炭水化物が人類を滅ぼす」書評
2013/12/24 00:01:00 |
おすすめ本 |
コメント:10件
私が糖質制限の存在を初めて知ったのは,
夏井睦先生が運営されている「新しい創傷治療」というサイトでした.
「傷には消毒をする」「傷にはガーゼを当てる」という従来の医学界の常識を疑い,全く新しい治療方法を世界で初めて確立された夏井先生.
そんな夏井先生が糖質制限に興味を持ち,自ら実践され,サイトでの話題に取り上げていきました.
その輪は瞬く間に広がり,今や同サイトで湿潤療法と並ぶ二本柱の話題に昇華しています.
その夏井先生が糖質制限について考え,まとめられたのがこの『炭水化物が人類を滅ぼす』という衝撃的なタイトルの本です.
先日この本をようやく読み終えました.少し感想を書き記してみたいと思います. 全体的にみて「さすが夏井先生!」の一言に尽きる内容です.
最初は実体験の報告から始まり,糖質制限の基礎知識,糖質制限に関わる問題,糖質制限体験者の声など現状のありのままを紹介されるところから,
次第に糖質制限をすることによって見えてくる医学全体に関わる大きな問題点に迫っていきます.
その中で「糖質は嗜好品」という考え方には私は非常にしっくりきています.
なぜなら糖質は必須栄養素ではなく,なくても生きていけるものであり,摂りたい人だけ摂ればいいというものだからです.この性質はタバコやアルコールなどと共通しています.
またカロリーという概念の怪しさにも科学的に考察を加えておられます.これを読めば世の中にはびこる「カロリー神話」がいかにおかしいか,ということに誰もが気が付かされると思います.
そしてこのカロリーから先の話が夏井先生の真骨頂です.
「人体にとってブドウ糖とはどういうものなのか」ということについて生命の起源,進化の歴史,農耕の起源などから読み解いていき,ある仮説を提唱されています.
その仮説は仮説の域を出ないものですが,十分な考察の上に立てられた仮説であり,読んでいて非常に納得がいくものでした.
後半の内容では「偽りの神」という言葉が非常に印象に残りました.
また「パンダがササを食べた日」や「1日青汁1杯」の森美智代さんの食事への考察は非常に勉強になりました.
同じ糖質制限について考えるのでも,背景となる知識が違うと導き出すものがここまで違うものかと驚きを禁じえません.
逆に言えば,医学の事だけでなく,幅広い知識を持って物事を見つめることの重要性を感じます.
そして最後は「仮説は公開されて第三者の目に触れて初めて命を得るが,自分の頭の中にしまっておくだけでは単なる死蔵である」という言葉に心動かされました.
私が見える世界は,きっと夏井先生が見える世界よりもずっと狭いものでしょうけれど,
生きてきた歴史,背景が違うわけなので,少ないかもしれないけれど,私に見えて夏井先生に見えていない世界もきっとあるはずです.
ならば,糖質制限を教えてもらい人生を救われた者として,少しでも自分が見えた世界を伝える義務があるのではないかと,
勝手ながらそう思い,このブログで想いを書き続けています.
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
読後 感想
・じつは糖尿病も高血圧も高脂血症も、医者はなおしていないのである。
投薬で糖尿病や高血圧を抑えているだけなのだ。
・「薬もインスリンも不要な糖尿病の根本的治療」が糖質制限だ。
そして、後半に書かれている、人類史的考察。農耕の起源・歴史。
・穀物に支配された人間たち P516
・穀物という神は・・・現代社会に、肥満と糖尿病、睡眠障害と抑うつ・・
などをもたらした。現代人が悩む多くのものは、大量の穀物と砂糖の摂取が原因だったのだ。
・私たちは21世紀になってようやく、穀物なし、糖質なしの食生活が、人類本来のものであることに気づいたのだ。
・人類はもう少し長生きするのか、それとも穀物と人類は同時に黄昏を迎えるのか・・・
スケールの広がりを感じさせる考察です。社会的背景の分析も素晴らしいと思います。
夏井先生。Good Jobですね。
たがしゅう先生
>ならば,糖質制限を教えてもらい人生を救われた者として,少しでも自分が見えた世界を伝える義務があるのではないかと,勝手ながらそう思い,このブログで想いを書き続けています.
今後の活躍を期待しております。
経験を生かす。
人間にとって一番の財産は経験だと思います。
1歳と50歳ではそれだけの知恵の差があります。
でも経験しても、それを生かさなければ経験とはいわない。
医師は経験した症例から学びその経験を生かし、新しい治療法を探して対処する。
大変な職業だと思います。
先生のようなドクターが増えることを願っています。仲間作り頑張ってください。
もとつむり
Re: 読後 感想
いつもコメントを頂き有難うございます。
夏井先生の本を読むと、様々な知識を持っていることがいかに有益な事かを考えさせられます。
私もこれからできる限りいろいろな知識を吸収していきたいです。
Re: 経験を生かす。
いつも応援して頂き本当に有難うございます。
新しい治療法を提唱できるのはほんの一握りの有能な医師だけですが、
新しい治療法を受け入れることは私のような凡人医師にも可能と思います。受け入れてこれからも新しい医療を心がけていきたいと思います。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます.
> 夏井先生の本ですが、ちょっと難しいかったけど勉強になりました。カロリーの概念がこんなにいい加減とは思いませんでした。
同感です.カロリーのところも非常に興味深かったですね.
管理人のみ閲覧できます
Re: No title
コメントを頂き有難うございます。
それは私も実践に際して参考にさせて頂いております。私も勉強中の身ですが、非常に奥深いですね。
読みました
僕がいちばん頷いたのは、吐瀉物には肉はなく米や麺ばかりというところです。確かに自分の経験上も嘔吐したときにはそうだなと思いました。それで消化によい食べ物がお粥というのは眉唾なのだなと思いました。
ところで船瀬俊介氏というなかなか面白い本を書く人が『やってみました! 1日1食』
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F-1%E6%97%A51%E9%A3%9F-%E8%88%B9%E7%80%AC-%E4%BF%8A%E4%BB%8B/dp/4883206181/ref=la_B001I7PRPW_1_5?s=books&ie=UTF8&qid=1459475325&sr=1-5
において、夏井氏を無知であると揶揄し江部氏をこき下ろしています。その文脈で登場した『チャイナスタディ』も読みましたが、時代遅れな本でした。
船瀬氏は別の本ではケトン代謝を基礎とした食生活を称揚してもいますが。
Re: 読みました
コメント頂き有難うございます。
船瀬俊介さんの本はわたしも何冊か拝読しましたが、糖質制限には批判的なようですね。
糖質制限から入って絶食療法を学ぶと非常によくつながる事がわかりますが、船瀬さんに限らず絶食から糖質制限を俯瞰すると理解しづらい方が多い印象です。
その理由の一つに古来から受け継がれてきた絶食(断食)のノウハウはあくまで経験に基づくもので理論が不足しているという事が挙げられると思います。食べない事が良い事なのに、肉を多く食べてしかも断食のような効果を得られるというのが邪道的に映るのかもしれません。
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