自己免疫疾患とストレスマネジメント
2017/06/19 00:00:01 |
ストレスマネジメント |
コメント:2件
私は自己免疫疾患にも糖質制限が有効だという考えを持っています。
そのメカニズムはまだ明確にはされていませんが、
少なくとも糖質制限をすることで、動脈硬化や酸化ストレスのリスクが下がります。その事が自己免疫疾患の病態に悪さをするとは考えにくいです。
一方で糖質制限単独では自己免疫疾患の病勢をコントロールしきる事は難しいということも臨床的には感じています。
なぜ自己免疫疾患に対しては糖質制限が十分な効果を示さないのか。
この問題を考える時に、自己免疫疾患の治療で一般的に用いられているステロイドがヒントになります。 自己免疫疾患とくれば、関節リウマチでもエリテマトーデスでも強皮症でも多発性筋炎でも皮膚筋炎でもシェーグレン症候群でも混合性結合組織病でも・・・
とにかく何に対してもステロイド剤の適応となります。
もっと言えば、自己免疫性疾患以外にもステロイド剤の適応疾患は調べてみると非常にたくさんあります。
そしてそれらの病気のほとんどが糖質制限単独ではコントロールし難い注意病態ばかりです。
そもそもステロイドと言えば、もともと私達の身体に備わった重要なホルモンです。
材料はコレステロールであり、ストレスホルモンであるコルチゾールや血圧や水分調整に関わるアルドステロン、
そして性ホルモンとしてだけではなく生命維持ホルモンとしての働きが見えてきたエストロゲンやアンドロゲンなどの総称がステロイドホルモンです。
難治病態のほとんどにステロイドが治療薬になるということは、
裏を返せば難治病態に陥っている患者さんはステロイドの量が絶対的に枯渇しているか、もしくはステロイドがそこにあっても十分に機能を発揮できていない状況なのではないかと推察できます。
前者のステロイド絶対的枯渇状態であれば西洋医薬の解析技術で判断できます。コルチゾールを測定し基準値以下なら「副腎不全」と診断されステロイド剤の適応となるでしょう。
しかしほとんどの場合は後者の病態であって、この場合にはコルチゾール自体を測っても正常値、
しかしながら実際にはそこにあるコルチゾールが十分に働く事ができていない状態に陥っていると、
だからその状況に外因的にステロイド剤を投与してやることで、当座の問題をクリアできているのではないかと思うわけです。
けれども、そもそもなぜステロイドが十分に働かない状況になってしまったのかという根本的な問題が解決できていなければ、
いくらステロイドを補充した所でいつまでたっても治療のゴールにはたどり着けず、やがて今度はステロイドを使い続ける事による様々な副作用に悩まされる転帰をたどってしまいます。
ステロイドがあってもステロイドが働かなくなる原因として最も考えられるのはストレスです。
なぜならばストレスは自律神経を通じてHPA(視床下部-下垂体-副腎)系を中心としたストレス反応系を駆動しコルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を惹起します。
何らかのストレスを受けて、それが正しく処理できない状況が続いていれば、これはストレス反応系が酷使されます。
その状況が続けば、やがてストレス反応系の回転が錆びつき、そこにストレスホルモンの材料があってもうまく回せないという状況が生まれるのではないかと思います。
そして糖質制限はタンパク質・脂質を十分に確保する事でストレス反応系に必要な材料を補っている側面がありますが、
決してストレスを上手に処理する方法を糖質制限が教えているわけではありません。
強いて言えば、糖質を制限し血糖値の乱高下が治まる事で、不要にドーパミンやセロトニンなどが乱高下させられる精神不安定性、いわば疑似ストレスの部分については排除する事ができています。
けれども、本質的にストレス反応系の回転を回復させるためには、ストレスマネジメントの観点がなければ、
いくら材料を補った所で解決はできないのではないか、それが自己免疫疾患を糖質制限だけでコントロールすることが難しい大きな理由なのではないかと私は考えています。
がんも、認知症も、自己免疫疾患も、
全ての内因性の病気はただ運が悪くてなるだけのものではないと私は考えています。
複雑な現代社会の中で知らず知らずの内に無理を続けること、そしてそのストレスに自分が気付かないということ、
その事が、様々な難病が世に出てきてしまう温床を作ってきているように私には思えます。
糖質制限は単にスタートラインに戻したに過ぎません。
その先にも私達が解決に取り組まなければならない問題はまだまだたくさんあると思います。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
時間はかかるが解決は出来る
どちらも健康にとっては非常に大事だというのは、ここで筆舌するまでもありませんが、あえて優先順位をつけるなら、ストレスマネジメントが先かもしれません。
私は自己免疫疾患で、現在漢方だけで体調を維持しています。
もちろん漢方が今の調子を維持していることは間違いありませんが、ストレスを発病時より減らすように意識し続けた結果の今でもあります。
ストレス軽減の方法は世に様々で、私のはここで書くのは控えますが、ただ断言出来ることは、時間がかかるということです。
病態になっなのは、突然なっなわけではありません。少しずつ少しずつ、気づかないうちに、ストレスが積もり積もって、時間をかけて負担を背負い、結果病気を呼び込んだわけです。
ならば、治すには、ストレスを同じ時間をかけて減らせばよいわけです。現に私が薄皮を剥ぐように良くなりました。
現代社会、スピードの時代で、病気を治すのもスピードで治すのが当たり前と感じていないでしょうか?
身体はその主に忠誠で、主が受けた負担を病気という形でサインを出してくれます。そのサインを見逃さず、身体の声なき声に耳を傾けてあげれば、解決の糸口が見えてくるはずです。
そういう意味では、糖質もストレス。
時間はかかりますが、必ず解決への糸口はあるはず。
身体がサインを出しているはずですから。
Re: 時間はかかるが解決は出来る
コメント頂き有難うございます。
> あえて優先順位をつけるなら、ストレスマネジメントが先かもしれません。
そうですね。確かにそうかもしれません。
私は立場上、糖質制限だけで解決できない問題がある方と出会うことが多いので余計にそう感じるような気がします。
> 現代社会、スピードの時代で、病気を治すのもスピードで治すのが当たり前と感じていないでしょうか?
> 時間はかかりますが、必ず解決への糸口はあるはず。
実体験のこもった素晴らしい御意見です。
皆がそういう風に考える事ができれば慢性疾患の大半はコントロールできるのではないかと私は思います。
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