栄養ドリンクの真実
2013/11/25 00:01:00 |
素朴な疑問 |
コメント:6件
世の中には誤った栄養学がはびこっていると思います.
まず三大栄養素という概念から抜本的に見直さなければなりません.
糖質制限の理論を学んでわかることは,三大栄養素の中の炭水化物は必須栄養素ではない,ということです.
ブドウ糖は身体にとって必要な物質ですが,これは「糖新生」という糖質以外の物質からブドウ糖を作り出すシステムが人体に備わっているので,わざわざ外部から糖質として摂取する必要はないのです.
だから私に言わせればヒトは脂質とタンパク質の2大栄養システムです.それらを補うようにミネラル,ビタミンなどが配置されますが,糖質の役割は一種独特です.
外部から摂る必要はないのに,摂ると急峻なブドウ糖の一時的上昇をもたらす性質を持っています.
ブドウ糖は手っ取り早いエネルギー源として利用できるので,スポーツに関わる栄養素として重要視されていますが,そこから生まれた考え方が,科学的根拠のないカーボローディングであったりするのだと思います.
もう一つ手っ取り早いと言えば,疲れた体を改善させる「栄養ドリンク」です.
栄養ドリンクを飲んだら元気が出るという人は多いと思います.
実際にそういう効果があるからこそ,そういう場面をよく見かけるのだと思いますが,
はたしてこれはどういう仕組みなのでしょうか.
主要な栄養ドリンクの公式サイトを覗いてみると,その即効性の理由として「エネルギー産生に役立つビタミンB類が多く含まれている」と書かれているものが多いです.
なかでもビタミンB1については特に重要視されているようです.
ビタミンB1というのはブドウ糖を代謝してエネルギーを産み出す過程である「解糖系」と呼ばれるシステムで使われる補酵素です.
すなわちビタミンB1がなければ解糖系がうまく回らず,乳酸という疲労物質がたまります.だからビタミンB1を補充すれば疲れがとれるという理屈です.
ただビタミンB1は精製されていない穀類,根菜やジャガイモ,肉類,種実類,豆類など多くの食品に含まれています.普通に食事をしている人がまずビタミンB1欠乏になることはないと思います.
一方栄養ドリンク会社のサイトでは「ビタミンB1は欠乏しやすい」と書かれ,その理由として「ビタミンB1は水溶性なので、洗うことによって流出してしまう」「水道水中の残留塩素によって分解されてしまう」「加熱調理によって破壊される」などが挙げられています.
でもそれはビタミンB1欠乏の人が多くないと困るという立場である栄養ドリンク会社の作為を感じますし,私自身が臨床で携わっている印象では,ビタミンB1欠乏の人がそんなにたくさんいるようには思えません.
では実際にビタミンB1欠乏に陥っている人にはどういう人が多いかといいますと,極度の栄養不良やアルコール中毒の人です.
食事がろくに食べれていない人は当然ビタミンB1が不足しますし,アルコールは分解する際にビタミンB1を必要としますのでビタミンB1が枯渇します.
ただそれも普通にお酒をたしなむ程度ではビタミンB1欠乏にはなりません.我々の元に運ばれるビタミンB1欠乏患者の飲酒量は相当大量であることが多いです.
というわけでビタミンB1のおかげで栄養ドリンクで元気が出るというのは私にとって眉唾です.ではどうして栄養ドリンクに即効性があるのでしょうか?
それは「糖質の即効性」だと私は考えています.
液体の糖質で血糖値が急峻に上昇しますが,この時にドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質が賦活され,人はやる気や快感を覚えるというメカニズムがあります.
栄養ドリンクを飲むと元気が出る仕組みは,この糖質による効果だと思います.
その事を裏付けるように主要な栄養ドリンクの成分を調べてみると以下のようになっています.
1本あたりのカロリー74~79kcal
炭水化物 18~19g
脂質 0g
蛋白質 0g
このように栄養ドリンクの栄養は「炭水化物」のみで構成されているのです.
言ってしまえば栄養ドリンクでの改善効果は,ジュースでの効果と一緒ということになります.
もっと言えば,改善しているのではなく血糖値の上昇で一時的にごまかされているだけです.
糖質の付け焼刃的な効果はその場しのぎにはなりますが,底力をつけることにはなりません.
それがわかって栄養ドリンクを飲むのは良いですが,糖質の中毒性にも注意しないと栄養ドリンクにはまることにもつながりません.
栄養ドリンクに頼ることなく,ビタミン類は食事からとるのが一番だと思います.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
栄養ドリンクについてですが、私はちょっと違う考えを持っていました。
ほとんどのドリンクには、カフェインが入っているので、その作用で飲んでしばらくすると頭がすっきりすると思っていました。
また、ちょっと高めのものには、防腐剤を兼ねて(生薬入りのドリンク剤)アルコールも入っているので、カフェインの作用に合わせてアルコールの作用で体がポカポカしてきて元気になった気がすると考えていました。
いずれにしろ、水溶性ビタミンが分解されないように入っている添加物を見たら体に悪そうと思いますが、体にいいと思って飲む人は飲んでいるのでしょうね。
No title
とてもわかりやすく、参考になるこのブログいつも感謝しながら拝見しています。
栄養ドリンク みるみる疲労回復とかパワーアップなんて書いてありますから、何だか飲むと元気が出る気がしますよね。 精神的な作用も大きいかなと思います。
単純な私なんてすぐ信じてしまいます・・。
長い目でみると仰る通りです。
日々の食事を充実させて 糖質制限食を楽しく美味しく食べる工夫をすることが一番ですね。
Re: No title
コメントを頂き有難うございます.
> ほとんどのドリンクには、カフェインが入っているので、その作用で飲んでしばらくすると頭がすっきりすると思っていました。
> また、ちょっと高めのものには、防腐剤を兼ねて(生薬入りのドリンク剤)アルコールも入っているので、カフェインの作用に合わせてアルコールの作用で体がポカポカしてきて元気になった気がすると考えていました。
なるほど.そういう要素もあるかもしれませんね.
よく考えたら緑茶にもコーヒーにもコーラにもカフェインはあるから,糖質ばかりに気をとられていると確かにこの点は盲点になりそうです.教えて頂いて有難うございます.
いずれにしても,「栄養ドリンク」の不自然な栄養,見直すべきだと思います.
Re: No title
はじめまして.コメント頂き有難うございます.
> 栄養ドリンク みるみる疲労回復とかパワーアップなんて書いてありますから、何だか飲むと元気が出る気がしますよね。 精神的な作用も大きいかなと思います。
イメージって怖いですよね.
栄養ドリンクだって,低脂肪食品だって,みんな身体にいいと思って買っていると思いますが,
糖質制限の理論を知れば,真実は逆だということがわかります.
ゆめゆめイメージに騙されないようにしたいですね.
あまり戦線を広げないほうが
Re: あまり戦線を広げないほうが
コメント有難うございます。
> 「現代栄養学はおかしい!」ですか。糖質制限食論者は医学界で、ただでさえ少数派なのに、他の分野でも色々異議を挟んでいる人が多いですね。最近出た、夏井睦氏の著作しかり。「独自説」の人が多すぎるのです。これでは糖質制限療法にも「キワモノ」というレッテルが貼られかねない。
「仮説を世に出すことを恐れてはいけない」
これは私に糖質制限を知る機会を与えて下さった夏井睦先生に教えてもらった考え方です。これに私は共鳴しています。
大多数の人にキワモノ扱いされるからといって、自分の考えに反して「現代栄養学が正しい」と言うことは私にはできません。現代栄養学を見直すことで自分も自分の患者さんも明らかに良くなってきているからです。
伝わる人に着実に伝わっていけばいいと思っています。
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