サラダチキン負荷試験
2017/06/03 00:00:01 |
人体実験 |
コメント:25件
「タンパク質を摂取すればインスリン、グルカゴンが同時分泌され血糖は変動しないと言いますが、
それではタンパク質摂取では、どのくらいインスリンが分泌されるものなのでしょうか。」
以前、糖質制限実践者の方からそのような質問を受けて、その問題には興味を持ち続けていました。
というのも、糖質制限を続けているのに途中でやせなくなる問題には、タンパク質過剰摂取に伴う高インスリン血症が関わっている可能性が考えられるからです。
糖質であれば血糖値の上昇具合からインスリン分泌量を推測する事もできますが、タンパク質の場合はグルカゴンで相殺されるためそういうわけにもいきません。
ならば測って見てみるしかあるまいということで、
先日、サラダチキン負荷試験なる人体実験を敢行致しました。 なぜ、サラダチキンなのかと言えば、
低糖質、低脂質、高タンパク質であり身近に手に入れやすい食材であったからです。
純粋なタンパク質の影響を調べるべく、プロテインパウダーのようなもので実験する事も考えましたが、
スポーツジムなどで用いられているプロテインパウダーをざっと調べていると、やはり少し炭水化物を摂った方がよいと考えられているためでしょうか。タンパク質とともに糖質も結構入っているものが多かったです。
それならば純粋なるタンパク質という事でなくとも、ほぼタンパク質であり、日常生活に即したデータが得られるサラダチキンの方がよいであろうという事で今回の実験に至りました。
また先日紹介したフリースタイルリブレも併用しつつ、リブレでの推定血糖と実測血糖値の比較、
そしてリブレはケトン体も測定する事ができるので、ケトン体も同時に測定する事にしました。
実験は当直明けの休日に33時間絶食の状況で行いました。
近くのコンビニでサラダチキンを購入し、食前と食後30分、60分、120分、180分、240分、300分の計7回のタイミングで採血を行い、血糖値とインスリン値を測定します。

その7回と同じタイミングでフリースタイルリブレでの推定血糖値、簡易ケトン体測定を同時に行います。
サラダチキンの量は75gOGTT負荷試験に準じて、だいたいタンパク質の量が75gになるように3パック食べるようにしました。
私の基礎情報としては身長180㎝、体重100㎏、BMIは30.9です。肥満はありますが、糖尿病ではありません。HbA1c5.3%です。
実験中は水分も飲まずに運動もせずに、机の上で本を読んだり、ネットをしたりでゆったりと過ごしました。
注目の結果は、以下の通りでした。
実測血糖(mg/dL) リブレ推定血糖値(mg/dL)
食前 65 83
30分後 70 85
60分後 84 98
120分後 89 109
180分後 83 102
240分後 79 99
300分後 77 99
インスリン(μU/mL) 簡易ケトン体値(mmol/L)
食前 2.4 4.4
30分後 8.0 4.5
60分後 15.6 3.5
120分後 20.5 2.4
180分後 14.9 1.4
240分後 10.4 2.1
300分後 3.9 1.8
ちょっと私にとって意外な感じの実験結果でした。
というのも私が使用したサラダチキンの糖質量は0.1g/パックです。
正直ピクリとも血糖値が上がって欲しくなかったのに、結果的に24mg/dLも血糖が上がっています。
またリブレとの誤差も20mg/dL以上あるというのも何気に問題です。
食後血糖値のピークも2時間のところにあって、まるで糖質を摂取したかのような血糖の挙動です。
しかもインスリンは基礎値の10倍程追加分泌されています。
これは一体どういうことなのでしょうか。タンパク質でも血糖が上がるという事になってしまうのでしょうか。
そう思ってサラダチキンの栄養成分表示の所を見ると、もしかしたらと思うことがありました。

原材料名の中に、「砂糖」「でん粉」と書かれています。
もしかして糖質0.1gというのは、そうした添加物なしの数値で、実際はもうちょっと糖質が入っているのかもしれないと思いました。
もしそうなら今回の実験はタンパク質のインスリンにもたらす影響を調べる実験として失敗という事になります。
またケトン体の動向に関しても、最初はケトン体がぐんぐん下がっていくのでタンパク質でもここまで下がるのかと驚きましたが、
これがもし糖質の影響だというのなら当然の結果です。
しかし本当に糖質は0.1gだというなら、今回の実験結果はやはりタンパク質の影響を反映していると考えるのが妥当です。
読者の方々の中でコンビニのサラダチキンで血糖値が上昇するという人はおられますでしょうか。
もしいらっしゃれば情報提供して頂ければ幸いです。
そして私は私で、次こそは確実に蛋白質しかないという食べ物を探して、
再度同様の実験を試みたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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生肉を調理が一番かもしれないですね
とても興味深い実験です。
やはり使用する食材は生の胸肉をご用意頂きご自身でゆで鶏などにして頂くのが一番ではないかと思いました。
私も詳しくはないですが、原材料の表記では、『このような場合は明記しなくてよい』と言った決まりがありますから、そう言った明記されてないものの影響も否定出来ませんし…。
でも、個人的にはやはり微量の精製された砂糖が怪しいのではないかと思います…。ヒトが本来摂取するものではないでしょうから…。
次回の実験楽しみにしております。
管理人のみ閲覧できます
Re: 生肉を調理が一番かもしれないですね
コメント頂き有難うございます。
確かに実は糖質が結構入っていたと考える方が妥当なような気がしています。血糖の推移があまりにも糖質摂取後のそれに酷似しているからです。
実験としては失敗ですが、失敗は成功への布石、巷にはびこる低糖質食品の表示が必ずしも真実を反映していないという事を知ることができ、これはこれで学びとなります。
鶏むね肉を購入し自分でゆで調理する方法は確かに良いかもしれません。
食品別成分栄養表示の表と買った鶏むね肉のグラム数を照合すれば、含有タンパク質量も推定できますからね。検討させて頂きます。
偽表示の可能性
Re: 偽表示の可能性
コメント頂き有難うございます。
確かに今回使用したサラダチキンの糖質量0.2gは真実ではない可能性の方が高いと思います。
その表示が意図的か否かは不明ですが、改めて消費者の賢明な行動が必要とされる事を感じた次第です。
断食後の糖質ゼロ
そこから断食をやめて肉だけ食べても、血糖値は90mg/dlぐらいまで戻りましたよ。
肉は塩味のみです。
Re: 断食後の糖質ゼロ
コメント頂き有難うございます。
> 断食していて、血糖値が60mg/dlぐらいで、
> そこから断食をやめて肉だけ食べても、血糖値は90mg/dlぐらいまで戻りましたよ。
今回の観察結果と同様ですね。
ということはやはりタンパク質で糖質様の血糖上昇とインスリン分泌があるという事なのでしょうか。
もう少したくさんのデータを集めたいところですね。
No title
https://optimisingnutrition.com/2015/03/23/most-ketogenic-diet-foods/
https://optimisingnutrition.com/2015/07/06/insulin-index-v2/
食前と食後の血糖値は変わらないですよね。
100mg/dlを越えることもないです。
私は単純に、
断食すれば血糖値が凄く下がるけど、
断食をやめると通常の血糖値に戻るって思ってました。
やはり、断食と糖質制限は全然違うようですね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
おおざっぱに捉えれば、「同量糖質の半分くらい蛋白質でもインスリンは分泌される」ということでしょうか。
しかしそれにしても血糖が24mg/dL上昇したのはやはり腑に落ちません。
今度の実験ではできればグルカゴンも同時に測定してみようと思います。
No title
すでにご存知かもしれませんが、江部先生が似たような実験をされていたのでご紹介いたします。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4100.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3935.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3899.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3893.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2261.html
江部先生のものは血糖値だけなので、たがしゅう先生の実験でインスリンやケトン体がどう反応するのかはとても興味深いです。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
> 断食をやめると通常の血糖値に戻るって思ってました。
もしそうだとすれば糖質ゼロで血糖値が上昇するメカニズムは何なのでしょう。
インスリンとグルカゴンのバランスが崩れて蛋白質でも血糖上昇してしまうのか、はたまた久しぶりに食べられた幸せでドーパミンなどから血糖上昇作用が発揮されるのか。
それなら断食明けに純粋な脂質を摂取して血糖値が上がるのかどうかにも俄然興味が湧いてきました。また色々実験してみたいと思います。
No title
リブレプロの方が若干高めでした。
去年、糖尿病教育入院して、毎食前に血糖測定していたとき、病院の機械(ニプロフリースタイル)と自分の機械(ニプロフリースタイル、アークレイGブラック)の3台で同じ穿刺で採取した血液で測定して、普通に10〜20の差が出ました。最大だと60以上違ったときもありました。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
江部先生の実験でも同じような結果が出ていますね。
こうなると「本当に蛋白質で血糖上昇」の方が信憑性が高くなってきます。今日の私はブレていますね。(^^;;
白黒はっきりつけるにはグルカゴンとインスリンの同時測定が鍵になってくるように思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
リブレの誤差はかなり個人差がありそうですね。
血糖変動のだいたいの流れを掴むというくらいに位置付けておくのが無難かもしれません。
No title
基本、鶏肉しか食べません
タンパク質しか摂っていなければタンパク質を糖質に変える機能が体に備わっているといってました
だからお腹も空かないそうです
でも少しでも糖質を摂ると余計にお腹が空くそうです
たがしゅう先生のブログを読んで主人の言ってることが分かりました
江部先生の記事は糖尿病患者さんにだけ当てはまるのではないでしょうか
たがしゅう先生は、糖尿病ではなく、健常人ですから、江部先生の実験データや解説は当てはまりませんから、今回の実験データを江部先生の記事を根拠に解釈することはできない思われますが、いかがでしょうか?
No title
ケトンは下がりました
『インスリン分泌は覚悟する必要があるようです。 』
この通りだと思います。
国内だとあまり広く知られてないようですが海外だと常識のようですね。
鈴木先生のブログも参考になりました
http://tcm-suzuki.com/2017/04/26/%e9%81%8e%e5%89%b0%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%82%93%e3%81%b1%e3%81%8f%e8%b3%aa%e3%81%af%e7%b3%96%e3%81%ae%e5%81%b4%e3%81%ab%e3%81%82%e3%82%8b%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e3%81%93%e3%81%a8/
Re: 江部先生の記事は糖尿病患者さんにだけ当てはまるのではないでしょうか
コメント頂き有難うございます。
確かに糖尿病であるかないかでインスリン分泌能に差があるので、全く同じとは解釈できません。
しかし江部先生の事例での血糖上昇幅が私よりも大きい(しかも私の方がタンパク質負荷量が多い)ことを考えれば私の延長線上にあるデータとも取れます。
はたして糖質混入があったのか、それともタンパク質でこのような挙動を示すのか、
確かめるにはいずれにしても実験を追加する必要がありそうです。
Re: No title
> ケトンは下がりました
コメント頂き有難うございます。
インスリンを増やすのは間違いないと思いましたが、どれだけ増えるのかはこれまであまり明らかにされていなかったと思います。
血糖の上昇タイミングも糖新生を介すので3〜5時間後に来るのが私の予想でしたが、少なくと今回の私の実験結果とは違いました。実験精度を高めて再検証してみたいと思います。
No title
私は一型糖尿なので勿論、タンパク質上昇があるわけですが、
先生の仰る通り、糖原性アミノ酸、ケト原性アミノ酸があって、栄養学かさっぱり解らない私は、何がどうだとは云えません。
ですが、毎日の糖新生に悩む私は、やっぱり肉と卵の上がりは顕著であるということ。
おから粉や高野豆腐の上がりは数値でも、気付く程ではないです。
インスリンが何れくらい分泌されるのか?
って、糖質摂取と同じで人それぞれなのではないでしょうか。
というのも、私の糖質1グラム摂取の上昇は、7です。
それは血中cペプチドの分泌の関係や、体重などにも相関している訳で…。
でも、下がり幅はインスリン感受性で人それぞれな訳で。
ということは、タンパク質によるインスリン分泌も、上昇幅、下降幅も同じなのかなぁと、思います。
その上で、植物性タンパク質、動物性タンパク質でも、違うでしょうし、答えが出ない気がします。
でも、“タンパク質過剰摂取に伴う高インスリン血症”
は分泌能力がしっかり残っている健康な方や、軽度の二型の方はある。と、思います。
筋トレなどで、骨格筋率が高い方と、低い方でも、インスリン分泌量は違うのかなぁと、思ってみたり、
や、グルカゴン相殺が違うのか?
書いていて全く、解らなくなりました。
じゃあ、書くなよと、自分突っ込み中です。
ちょっと、的はずれな意見ですみません。
食べるにぼし
貴重な実験データをありがとうございます。
実験結果については他の方がコメントされてますので、私は高たんぱく、糖質ゼロ食品を紹介します。
その食品は、株式会社サカモトが製造している「食べるにぼし」です。値段は400円ほどでドラッグストアで売ってます。100グラム当たりの成分は以下の通りです。
たんぱく質=67.8g
脂質=5.8g
炭水化物=0g
食塩相当量=1.8g
食べるにぼしなら、他のメーカーの商品でも炭水化物はゼロだと思います。ただ、ナトリウムが食塩相当量で4gくらい入っているので、塩辛くて食べにくいかと思います。
次回の実験も楽しみにしています。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
糖質制限をしてケトン体代謝主体になれば、空腹感が和らぎます。
これは実践者にしかなかなかわからない感覚だと思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
いえいえ、悩むのも無理はなく、結構難しいグレーゾーンを話題にしていると思います。
勿論、個人差があるのはやむを得ませんが、それでも一つ一つ確かめていく姿勢が大事なことだと私は考えています。
Re: 食べるにぼし
情報を頂き有難うございます。
なるほど「食べるにぼし」ですか。それは思いつきませんでした。近所のスーパーで確認してみたいと思います。
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