筋肉を増やすBCAA
2017/05/24 00:00:01 |
運動に関すること |
コメント:6件
運動で筋肉量を増加させようという際に、
一般的にプロテインをサプリメントなどで摂る事が勧められています。
中でも効率的に筋肉量増加に寄与すると言われているのが「BCAA(分枝鎖アミノ酸;branched-chain amino acids)」です。
今回はこのBCAAについて考えてみたいと思います。
なぜBCAAの摂取が筋肉量増加に寄与するのかについて、
まとめて書いてある医学雑誌がありましたので、まずはそれを引用するところから始めたいと思います。 Modern Physician Vol. 37 No.5 2017-5
BCAA・HMB・ビタミンDとサルコペニア治療
藤原大(坂総合病院リハビリテーション科)
(以下、p435-436より引用)
【BCAA】
ヒトの生命活動に必要な蛋白質は、20種類のアミノ酸で構成されている。
アミノ酸は、体内で他の栄養素から合成できる「非必須アミノ酸(11種類)」と、
体内で合成できず体外から摂取する必要がある「必要アミノ酸(9種類)」に分類される。
必須アミノ酸の中で、側鎖をもつロイシン、イソロイシン、バリンの3種類がBCAAである。筋蛋白質の必須アミノ酸の約30〜40%を占める。
骨格筋の量は筋蛋白質合成(同化)と筋蛋白質分解(異化)のバランスにより調整されている。
骨格筋量が減少するのは、骨格筋蛋白質の合成量が分解量を下回るからである。
空腹安静時の骨格筋代謝については、若年者と高齢者では顕著な差はない。
栄養摂取や運動などは同化刺激となるが、高齢者ではこれらの蛋白質同化刺激に対する反応が低下することで、骨格筋量減少が起こる。
その原因として、高齢者では筋蛋白質同化を促進するテストステロンやエストロゲン、グレリン、成長ホルモン、インスリン様成長因子(IGF-1)の血中濃度が低下するだけでなく、
骨格筋細胞におけるそれらの受容体も減少していること、
インスリンによる血管拡張作用が加齢により減弱するため筋血流量が低下して、十分なアミノ酸供給ができないことなどが考えられている。
筋蛋白質合成は血中のアミノ酸濃度に影響される。
若年者では、運動により骨格筋蛋白質合成と分解が促進し、合成と分解の差が負に傾くが、
運動後にアミノ酸を投与すると骨格筋蛋白質合成は促進したまま分解が抑制されて、ネットバランスが正となり筋肉量が増加する。
高齢者でも、若年者に比べて緩慢ではあるが血中アミノ酸濃度上昇がみられ、骨格筋蛋白質合成が増加する。
必須アミノ酸のみの摂取と非必須アミノ酸・必須アミノ酸を併せて摂取した場合、
筋蛋白質合成の促進作用は同等であることから、アミノ酸による蛋白同化作用は主に必須アミノ酸によるものと考えられる。
必須アミノ酸・BCAAは、蛋白合成の起点であるmTOR(mammalian target of rapamycin)を刺激する。
mTORは蛋白質合成を促進するだけでなく、グルココルチコイド受容体の抑制を介して、異化プロセスを抑制する。
(引用、ここまで)
なるほど、BCAAは筋肉量増加に直接影響を与えるアミノ酸で、
その血中濃度が高ければ代謝が蛋白質合成へ傾くので、運動の際にBCAAを積極的に摂取する事には意義があるわけですね。
確かに周りを見渡しても、若年者でこれを実行して筋肉質な体型を維持している人は結構いますので、これは説得力があります。
ただここで思うのは、「BCAAだけ摂っていていいのか」ということです。
確かにBCAAは筋肉量を増やすという目的には沿っているかもしれません。
しかしだからと言ってBCAAだけ摂るというのは身体に歪みを来たすことにはならないかという懸念があります。
自然界においてはアミノ酸がBCAAだけを含む食べ物はありません。
必ず蛋白質という形で存在し、それを食べれば消化管で消化され、必須も非必須も含めて様々なアミノ酸の形まで分解されて体内に取り込まれるというのが普通だと思います。
化学の力で筋肉量増加に直接寄与するアミノ酸がBCAAだと同定されたのは素晴らしい進歩だけれど、
だからと言ってBCAAだけ摂るのは不自然で、筋肉だけではなく身体全体のことを考えると蛋白質の形で様々なアミノ酸を摂り、
その中にBCAAも入っているという食べ物でBCAAを摂取する方が歪みをきたしにくいのではないかと私は思います。
それともう一つ、この考え方で言えば、筋肉量を増やすにはBCAAを摂れば摂るほどよいという話になりそうです。
1日1食の私にとっては一見不利な状況ですが、オートファジーを利用すれば必ずしも不利ではなくむしろ有利になりうると考えます。
というのも、オートファジーは絶食もしくは低インスリン状態にさらされた場合に発動する蛋白質の自己再利用システムですが、
これが働いている状況であるとないとではリサイクルの上乗せ分の差で蛋白質の必要摂取量が変わってくるのではないかと思うのです。
しかも1日1食は消化管に安静時間を長く与える事ができる食べ方なので、
いざ食べ物が身体の中に入ってきた時に消化吸収能力を存分に発揮できるようにも思います。
オートファジーのリサイクル分加味と消化吸収能力の最大限発揮のおかげで、
「1日1食で糖質制限下での高蛋白食は筋肉をつけるのに有利に働くのではないか」というのが私の仮説です。
仮説が正しいかどうかジム通いを続けて今後検証していきたいと思います。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
短鎖脂肪酸
糖質制限をして、四カ月たちました。その効果に、酔いしれております(疲れない、睡眠時間が短くなった、老化が止まり若返った等)
お医者様に、今私が取組んでいる糖質制限の仕方の意見を聞きたくてコメントいたしました。
私の、食事の仕方ですが糖質を控えるのは勿論ですが、ケトン体を生産する経路を胃、小腸、肝臓、ではなく、大腸菌の作用で、大腸まで届く食事をして、共生体の大腸菌に、代わりに消化してもらい、短鎖脂肪酸、ビタミンB、ビタミンK、糖新生をしてもらい、代謝物で体質改善すると言うものです。今の所体調が良いので上手く行っているようですが、本来の糖質制限と、大腸菌発酵の、ケトン体代謝の違いは何か在るのだろうかと、疑問が過ぎります。
ご意見頂けると、有難いです。
Re: 短鎖脂肪酸
御質問頂き有難うございます。
> 私の、食事の仕方ですが糖質を控えるのは勿論ですが、ケトン体を生産する経路を胃、小腸、肝臓、ではなく、大腸菌の作用で、大腸まで届く食事をして、共生体の大腸菌に、代わりに消化してもらい、短鎖脂肪酸、ビタミンB、ビタミンK、糖新生をしてもらい、代謝物で体質改善すると言うものです。
自分でケトン体を産生するだけでなく、腸内細菌にもケトン体を産生させようという意図でしょうか。
具体的には1日何食でどのような食品(+薬剤、サプリメント?)を行っておられるのか見えないので、意見は申し上げにくいですが、発想としては悪くはないと思います。
ただ腸内細菌叢には個人差が激しく、また実際期待通りに大腸に栄養が届いて実際にケトン体が産生されているのかどうか確かめようもありません。自分で作ろうが、腸内細菌が作ろうが、ケトン体はケトン体です。区別はつきません。
そもそもそんな事をしなくても糖質制限だけで体調キープできている可能性もあると思いますので、見えない部分には想像力も働かせて自分の中での落としどころを決めるしかないのではないかと思います。
食事内容
食事内容ですが、1日ぶんを書くと、手製のカスピ海ヨーグルト(朝晩ドンブリ一杯位、純粋なオリゴ糖(20g位)、ミックスナッツ100g位、後は妻の手製の糖質制限食を夕食にです。消化とは本来大腸菌がする物が主で人が自前でするものは従と聞いた事があるのでそれを確かめるべく現在、人体実験しております。
Re: 食事内容
オリゴ糖はおよそ半分くらい血糖値を上昇させるのでご注意下さい。
意外と不完全な糖質制限になってしまう可能性もあります。
体調が良ければ結構ですが、
足せば足すほど効果が出るというものでもありません。
人体実験の際にはその辺りも御留意頂ければと思います。
No title
早朝から激しい稽古をするに係わらず、というか激しい稽古をするからこそ朝はお腹に何もない状態にしたいんでしょうね。また夕食は六時ですから現代人としては相当早いですね。
一般人の我々がもっと見習って良い習慣に思えます。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
相撲取りの食事法は太れなくて困っている人にとっては参考になるやり方と思います。
私から見れば、絶食時間を長くしてオートファジーを高めつつ、かつ高炭水化物食を摂取しているのである意味最強の太り方ではないかと思います。健康であるかどうかは別問題ですが。
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