操作的な情報に騙されない
2017/05/23 00:00:01 |
医療ニュース |
コメント:2件
薬効がない薬を飲んでも患者さんが効くと思いこんで実際に症状改善をもたらすことを「プラセボ効果」と呼びます。
その反対に、そのような副作用をきたしえないにも関わらず患者さんが薬のせいだと思いこんで実際に有害事象をもたらすことを「ノセボ(ノーシーボ)効果」と言います。
心と身体はつながっており、治るはずの治療を行っていたとしても心の問題が置き去りにされてしまえば決して治りません。
ここでもストレスマネジメントの重要性を垣間見ることができると思います。
先日も80代女性で糖尿病とともに若干神経質な傾向がある方で、
前医から受けた「あなたにはアマリール®以外の薬は合わない」という指導内容を盲信しており、
低血糖リスク軽減のためにアマリール®からトラゼンタ®というDPP4阻害剤へ薬剤変更した際に、著明な動悸を訴えられる患者さんがおられました。
DPP4阻害剤の作用機序から動悸発作をきたす事はちょっと考えにくいので、ノセボ効果とはこういう事なのではないかと思います。 そんな中、ケアネットニュースを見ていると、次のような記事が目に飛び込んできました。
スタチンのノセボ効果が明らかに/Lancet
提供元:ケアネット公開日:2017/05/19
(以下、一部引用)
スタチン治療の有害事象について、いわゆる「ノセボ効果」が認められることが明らかにされた。
英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAjay Gupta氏らが、ASCOT-脂質低下療法(LLA)試験の二重盲検試験期と非盲検延長試験期の有害事象について解析した結果、
盲検下ではみられなかったが非盲検下において、すなわち患者も医師もスタチン療法が実施されていると認識している場合にのみ、筋肉関連有害事象が過剰に報告されたという。
これまで、無作為化二重盲検比較試験ではスタチン療法と有害事象との関連は示唆されていなかったが、
観察研究では盲検試験に比べてさまざまな有害事象の増加が報告されていた。
Lancet誌オンライン版2017年5月2日号掲載の報告。
(引用、ここまで)
Lancetと言えば、かなりの有名医学雑誌です。
有名雑誌からのこの研究結果を見て、多くの臨床医は「なるほど、スタチンで横紋筋融解症が出るのは医師も患者もそう思いこんでいるからなのか」と考えてしまうのでしょうか。
私はもはやそういうものには惑わされません。
スタチンは作用機序から考えて横紋筋融解症をきたしうる薬剤です。
それゆえスタチン内服中に横紋筋融解症が出たとして、それが思い込みのせいだと言い切る事はできないでしょう。
非盲検で出た副作用が無作為二重盲検で出なかったからといって、その副作用が単に見過ごされていただけかもしれないではないですか。こういうのはノセボ効果とは言わないと私は思います。
人はその目で見ないと目の前にあるものにも気づかないという事があると思います。
軽いだるさもスタチンによる横紋筋融解症かもしれないという視点がなければ、絶対にその存在には気づくことができません。
今回のニュースは、スタチンを正当化するために、抵抗勢力が働きかけているようにさえ思えました。
自分の頭で考える力は本当に大切です。
さもなくば、容易に情報の波に飲み込まれてしまうと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
データも情報もヒトが作る
100%の黒を白とはさすがに言えないけれど、実験・治験データの類は、おカネを払う側に有利なように作られる、のは、医療産業も資本主義の一部である以上、当然なわけです。問題は、そのことに気づいていない一般人、あるいは、気づかないように洗脳されている一般人の意識なのだと思います。
日本人は、あまりにも医者の発言と医者が処方するクスリを盲信し過ぎだと思います。
Re: データも情報もヒトが作る
コメント頂き有難うございます。
薬に限らず、何かを足すという発想の医療においてはその問題が必ず付きまといます。
プラスの医学と資本主義は本質的に相性がいいのだと思います。
糖質制限や断食などのマイナスの医学は、それゆえに広まりにくいという側面もあるのかもしれません。
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