糖質制限実践者における激しい運動
2017/05/18 00:00:01 |
運動に関すること |
コメント:15件
「フリースタイルリブレ」という24時間持続血糖測定器があります。
上腕の裏に細い針付きのセンサーを装着し、皮下の組織間液のグルコース濃度を持続的に測定し続けることができるという製品です。
組織間液のグルコース値は血液中のグルコース値と全く同じではありませんが、ほぼ近似するという事で大体の血糖変動推移をみるの便利です。
しかも、防水性もあるのでシャワーを浴びても大丈夫ですし、睡眠中もずっと図り続けてくれるので、夜間糖新生の具合なども把握することができます。
何より血糖値を測るのと違って、毎回穿刺しなくて済むので、1回のセンサー使用で2週間という制限はあるものの、期間内であれば気になる時に気軽に何度でも測定することができるというメリットが大きいです。
前々から興味があったこの製品でしたが、ついに個人購入に踏み切り実際に使用してみました。すると早速興味深い事実が明らかになりました。 まずセンサーの装着自体はそこまで痛くありませんでした。
装着後はほんのちょっとだけチクッとする感覚を装着部には感じ続けますが、何かに集中していれば気にならないレベルです。良眠もできます。
18時に装着を開始し、まずは20時~21時30分くらいまでジムで汗を流すほどの運動を行って血糖類似の数値の推移を観察してみることにしました。
装着時の数値は75mg/dLでした。運動を開始するとともに速やかに60台に低下し、30分後には43~45mg/dLという病院で見られたらすぐさま低血糖症としてブドウ糖注射されるような数値が叩き出されました。
運動により貯蓄のグリコーゲンが速やかに消費され、それが血糖値の少なさに反映されているのだろうと思われました。
その辺までは予想の範囲内でしたが、驚いたのはそこからです。
運動終了後、およそ30分くらいの間、血糖値40mg/dL未満を意味する「LO」の表示が続いたのです。
その時の私は疲労感はあるもののもちろん意識ははっきりしています。徒歩15分の自宅までの道のりを普通に歩いて帰っている状況でした。
ということはこの間のエネルギーはケトン体によってもたらされていたと考えるより他にありません。
長期の断食でもたらされる低血糖だけども意識ははっきりしている状態を、運動は一時的に作ったということです。
そしてそこから何も食べず、水分だけ摂っていた状況にも関わらず、数値は60~70代へと速やかに戻りました。
ということは、炭水化物を取らなくても、糖新生の働きで血糖値を戻しているという事になりますし、
もっと言えば、グリコーゲンの貯蓄さえ糖新生で速やかに賄われている状況さえ想像されます。
これらを踏まえて今回の話をまとめると、
ケトン体代謝に適応していれば、いわゆる低血糖状態になっても激しい運動は続けることができる。
そしてその間はケトン体代謝が主体なので脂肪燃焼効果が期待できるが、その効果は単発の運動では運動開始~運動後30分くらいの間まで。
炭水化物を摂取しなくても低血糖状態は速やかに解消され、
炭水化物を摂取しなくてもとっさの瞬発運動に対応するためのグリコーゲン蓄積は速やかに回復している可能性がある。
といったところになるのではないかと思います。
こういった運動を繰り返していれば、筋肉量とともに血糖推移はどうなっていくのでしょうか。非常に興味深いです。
ただし、これはあくまで十分な糖質制限実践者で医療関係者である私だからできる実験です。
ケトン体代謝に慣れていない人が私の真似をしては、低血糖症をきたす可能性は十分にありますので、
くれぐれも参考にとどめておくようご留意をお願いしたいと思います。
※2017年5月19日追記
ブログ読者の方より、フリースタイルリブレは装着初日は間質液の測定が安定しないため、不正確な数値が出てくることがあるという事を教えて頂きました。後日再現性を確かめるべく、同様の実験を繰り返して検証してみたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
とても興味深い実験ですね。
運動する人の間ではハンガーノック(シャリばて)などと言って、エネルギーが枯渇して動けなくなることをいうようです。
私自身は食事もあまり摂らずに山登りしたりしていてハンガーノックになった経験がないので、そのような現象が起きやすい人というのは、普段から糖質を過剰に摂取していて、糖新生能力が衰えている(眠っている)可能性があると思っていました。
それでも、糖新生が追い付かない危険性に備えての保険として、登山中の行動食としてエネルギーバーなどを準備していましたが、ナッツなど少量の糖質を含むものを少しづつつまむ感じの方がいいようですね。
No title
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 運動する人の間ではハンガーノック(シャリばて)などと言って、エネルギーが枯渇して動けなくなることをいうようです。
その定義で行けば、私のジム後の状態はハンガーノックではなかったと思います。
血糖値40未満で、運動後の疲労感はありますが、家まで歩いて帰る余力は十分に残っていましたので。
また運動中~運動後30分の間は私の糖新生能力は追いついていなかったという事になりますが、さりとて何も困ったことはありませんでした。
こういう時にも事実を見て解釈を疑う姿勢が大事だと思います。
血糖値が低くても激しい運動が可能でしかもハンガーノックにはならなかった。という事は、糖新生が働いていないといけないという解釈の方を疑う必要があるという事になってくると思います。
2016年9月27日(火)の本ブログ記事
「やわらかい心で世界を捉える」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-732.html
も御参照下さい。
Re: No title
御質問頂き有難うございます。
私の場合は病院勤務なので、医療機器の卸会社に直接交渉して入手しました。
患者さんが使用を希望される場合は、まずはお近くの信頼できる医師に相談されるのが現実的かと思われます。
最後はご自身のお身体で実験とは!
以前から言われてた物をついに入手されたのですね!
ちなみにこの実験初日の食事(回数)内容はいかがでした?(まさか朝から絶食下で実験とか?(汗))
たがしゅう先生も、最後はご自身の身体で実験するところなどは、夏井先生譲りであり、本当に尊敬致します。
しかし釈迦に説法ですが、あまり無茶はしないで下さいね。
話は変わりますが、ふるさと納税でピーチ航空のポイントに交換できます。(例、2万円の寄付で1万円相当の航空代)
ピーチ航空は鹿児島便は、関空行きしか就航してませんが、またの豚皮揚げを食べる会や関西方面のご研修にお越しの際、お使い下さい。
(ふるさと納税 ピーチ航空)
http://www.flypeach.com/pc/jp/um/specials/peach_point/furusato_tax
(ふるさと納税限度額速見表)
http://www.satofull.jp/static/calculation01/table.php
既にご存知でしたら申し訳ありません。
先生も暇を見つけて、知覧も行ってみて下さい。
私もこの制度を使って、聖地志木や知覧を訪れる画策をしております。(笑)
Re: 最後はご自身のお身体で実験とは!
コメント頂き有難うございます。
> 実験初日の食事(回数)内容はいかがでした?(まさか朝から絶食下で実験とか?(汗))
その日は休みだったので、11時からしゃぶしゃぶ食べ放題の店で食事をした後の状況でした。
夜はジムで運動した後はシャワーを浴びてそのまま寝たので食べておりません。なので1日1食です。
> 釈迦に説法ですが、あまり無茶はしないで下さいね。
御心配頂き有難うございます。
「体調が最良のバロメータ」がモットーの私ですので、無理せず体調不良を感じたら素直に撤退しようと思います。
ふるさと納税の情報も有難うございます。おおいに検討させて頂きます。
管理人のみ閲覧できます
No title
糖質制限+スポーツは、実践されている方が結構おられるのに、まだまだデータが少ない世界です。
私は今年の秋で60になりますが、下手の横好きで若い者に混じってフットサルを偶の休日にやります。ちなみにサッカー経験者ではありません。
糖質制限5年くらい、3年前から基本的に朝食は摂っていません。
それでも、朝9時から11時までの2時間のフットサルで、運動強度は多少あると思いますが、特にお腹が空くようなことは有りません。
運動の前にエネルギーを入れなければならない、と言うのは単なる思い込みだと思います。
と言う私も最初は不安が有りましたが、杞憂でした。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 糖質制限+スポーツは、実践されている方が結構おられるのに、まだまだデータが少ない世界です。
私もそう思います。
カーボローディングなど、自分の身体で実践しない事には納得しきれない理論も多いと思うので適宜検証が必要だと思っています。
> 運動の前にエネルギーを入れなければならない
これは糖代謝メインの人ならではの現象ではないかと思います。
糖代謝ばかり使ってケトン体代謝がさびれてしまっていれば、そこにエネルギー源(脂肪)があってもエネルギー切れになる状況が生じうるわけで、それがいわゆるハンガーノックなのではないかと思っています。
それにそんな事を言ってたら野生動物は生きていけませんし、本来の食性さえ保っていればヒトにおいても運動前のエネルギー供給は必ずしも不要、という話にもなってくると私は考えます。
No title
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
いわゆる瞬発的な運動であっても、ケトン代謝優位であれば血糖が低い状態でも十分に耐えうると私は感じました。
No title
ブログいつも拝見しています。
今回の記事で、運動開始後後すぐに低血糖状態になり、運動終了後30分で回復するとのこと、実に興味深いです。
私は糖質制限歴2年4か月になり、趣味でランニングをやっております。
糖質制限を始めてから、ランニング中も糖質は不要と考え、レースはすべて無補給、水のみで通しています。
フルマラソンぐらいまでは何の問題もありません。
しかし、ウルトラマラソンやウルトラトレイルなど、概ね5~6時間を超える場合、極端にパフォーマンスが落ちてしまいます。
今回の記事を拝見して、低血糖、いわゆるハンガーノックではないかと思いあたりました。
昔(江戸か明治?)、ドイツ人宣教師?が飛脚に牛肉を食べさせたら走れなくなり、元の米食に戻してくれと言われて、戻したところ、また走れるようになったという話を聞いたことがあります。
また、メキシコ走る民族といわれるタラウマラ族も走るときに、ピノーレというとうもろこしを溶いたものを飲むそうです。
こういうのは糖質制限的にはどうかんがえればよいのでしょうか。
かつての人類は動物を長時間追跡して捕獲したという話もありますが、疑わしく思えてきました。骨を拾っていたというほうが納得できます。
やはり長時間のランニングの場合は、糖質を補給すべきかと考え始めました。
糖質セイゲニストとしては、レース中に何を補給したらよいのか悩むのですが。
Re: No title
御質問頂き有難うございます。
> ウルトラマラソンやウルトラトレイルなど、概ね5~6時間を超える場合、極端にパフォーマンスが落ちてしまいます。
> 今回の記事を拝見して、低血糖、いわゆるハンガーノックではないかと思いあたりました。
あくまで推測ですが、ケトン体代謝が回っていても赤血球に対しては最低限のグルコースが30mg/dL程度は必要です。
ウルトラトレイルともなると、糖新生でもまかなえず、ブドウ糖の量もさすがに20代とかになってしまうのかもしれません。それならば確かに糖質制限者のハンガーノックと呼べる状況です。その場合は流石に糖質を摂るより他にないのではないかと思います。
もし機会があればウルトラマラソン中の24時間持続血糖測定を御検討頂ければ幸甚です。
一方で糖質非制限者にとっては、よく知られているようにグルコース70mg/dL未満あたりから低血糖症状が出てきます。
普段から糖質代謝主体の人は急に肉を与えられても、せっかくの脂肪を即座にケトン体に変えてエネルギーにすることにはなかなか慣れておらずすぐには難しいと思います。だから付け焼刃的エネルギー源である炭水化物で走れるようになったのではないでしょうか。でもそれって中毒の構造をよく現していますし、カーボローディング理論が支持される背景でもあると思います。
ベルツ博士のパラドックス
https://matome.naver.jp/odai/2138276862686918801
糖質⇒パワー⇒短時間、脂肪⇒ケトン体⇒持久力って思っていると、解釈出来ずにこんがらかってきます。
私もいまだに悩んでいます。
かっての日本人は、タンパク質を多く摂っていた欧米人が驚愕するくらいパワーと持久力を持っていた?
日本が参加した初期のオリンピックで、活躍したのはこのせい?
太く、短く。
タンパク質不足で、多分短命だったとは思われますが。
Re: ベルツ博士のパラドックス
コメント頂き有難うございます。
糖質制限×運動の問題は、個人の身体能力に影響される部分もありますからね。
例えば私はいくらケトジェニックでもウルトラマラソンを走り切ることは現時点ではできません。
しかしだからといって、ケトジェニックがウルトラマラソンには不向きという結論にはなりませんよね。逆もまた然りです。
いろいろな意見を参考にしながらも、自分の経験を元に妥当な結論へと近づいていきたいと思っています。
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