自律神経がきちんと働いてこそ

2017/04/16 00:00:01 | お勉強 | コメント:0件

以前ストレスによる血糖上昇の話を記事にしましたが、

このメカニズムに密接に関わっているのが自律神経です。

そして糖尿病には自律神経障害がよく合併しますし、

ストレスを受け続けてうまく処理できない場合にも自律神経に、特に交感神経に負担がかかります。

私が糖質制限と並べてストレスマネジメントを重視する理由にはこの辺りの問題が関係しています。

そんな中、血糖コントロールと自律神経との関係について特集した医学雑誌がありましたので、読んでみました。

Diabetes Strategy vol.7 no.1 2017
血糖コントロールに自律神経はどのように関与しているのか 大型本 – 2017/3


この雑誌の冒頭に生理学の先生や、糖尿病内科の先生らの鼎談(ていだん)が掲載されていましたが、

その中でオキシトシンの摂食抑制・抗肥満効果の話題に興味を持ちました。

Diabetes Strategy座談会
血糖コントロールに自律神経はどのように関与しているのか
出席者:
司会 山田祐一郎(秋田大学大学院医学系研究科内分泌・代謝・老年内科学教授)
矢田俊彦(自治医科大学医学部生理学講座統合生理学部門教授)
中川淳(金沢医科大学医学部糖尿病・内分泌内科学准教授)


(以下、p8-9より引用)

(前略)

矢田 オキシトシンは分娩時の至急の収縮、乳児への射乳において重要な役割を持つことが知られていますが、

信頼・社会性の形成、摂食の制御、そして摂食のサーカディアンリズム(circadian rhythm)の創出においても重要な役割を果たしています。

私たちは治療的な視点から、オキシトシンの末梢投与による摂食抑制・抗肥満効果について調べてきました。

(中略)

オキシトシンが中枢で摂食抑制効果を発揮することは知られていますが、

末梢から投与したオキシトシンが血液脳関門を通過する割合は0.002%と非常にわずかです。

したがって、末梢投与では迷走神経の求心路を介した系が重要になると推察しました。

まず、迷走神経を遮断したマウスの摂食抑制効果を調べました。

この時の摂食量はオキシトシン非投与群と有意差がないレベルまで効果が減弱し、迷走神経がシグナル伝達に重要であることがわかりました。

(中略)

このように、オキシトシンの末梢投与による摂食抑制効果が求心性迷走神経によって仲介されることを明らかにしました。

(引用、ここまで)



オキシトシンは俗に「愛情ホルモン」などとも呼ばれます。

オキシトシンの抗ストレス効果については以前当ブログでも触れた事がありますが、

今回はそれに加えて、オキシトシンが食欲を抑制する効果があり、そこに自律神経のうちの迷走神経(副交感神経)が関わっているという話題です。

オキシトシンを外部から投与してそうした多面的な作用をもたらそうと研究が進められているようですが、

生理的な量を超えるオキシトシンを投与して、後々ろくなことはないであろうと私は考えます。

一方で自律神経が関わっているという話には興味があります。

オキシトシン分泌を刺激するには親しい相手と触れ合ったり、愛撫したりすることが有効だと言われていますが、

それは自律神経の働きが働いていてこその話だということです。

だからもし仮に将来オキシトシンが薬として認可されたとしても、

自律神経を乱すストレスマネジメントの観点が置き去りにされていたらその効果は得られないであろうという事が想像されます。


そう言えば、俗に「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンにも食欲抑制作用があります。

セロトニン分泌を刺激する薬は現在SSRIといった抗うつ薬を中心に実際によく使われているわけですが、

その結果身体によい効果をもたらしているかと言われれば、必ずしもそうではありません

無理矢理身体のホルモンバランスを崩すことがどういうことか、想像力を働かせて理解する必要があります。

そしてストレスマネジメントの重要性を改めて強く認識した次第です。


たがしゅう
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