美術のストレスマネジメントとしての可能性

2017/04/09 00:00:01 | ストレスマネジメント | コメント:0件

足立美術館訪問を通じて美術の奥深さに興味を持ちつつあります。

横山大観は生涯を通じて、富士山を描くことに主眼を置いてきた画家でもありました。

「富士を描くことは富士にうつる自分の心を描くことだ」という言葉を残した大観、

絵を描くことを通じて自分の心と向き合う事に通じるような気がするのです。

というのも、足立美術館には横山大観以外にも興味深い作品を描く画家がたくさんいました。 例えば榊原紫峰(1887〜1971)の「木蓮花文鳥」という作品では、

整然と並ぶたくさんの咲きかけの木蓮のつぼみの中に、少しばかりすでに開花した花があり、そこに2羽の文鳥がたたずんでいます。

これは一枚の絵の中に、緊張と緩和が美しく表現されています。


また、今尾景年(1845〜1924)は圧倒的な画力で観るものを圧倒します。

「春園双孔雀図」という作品では孔雀の一枚一枚の羽根まで非常に細かく描かれていて、

この領域に到達するまで血の滲むような努力があったであろうと想像させられます。


さらには橋本関雪(1883〜1945)の「武陵漁夫」、

秘境の地で漁夫が美しい花に導かれ美しい村へと迷い込んだ様子が描かれている作品です。

桃の花の美しさに誘われるがままに船をこぐ男はまるで夢見心地、

これから訪れようとする別天地へ観る者を導いてくれているようにも思います。


このように美術作品からは様々なメッセージを読み取る事ができます。

そして今紹介した例はあくまでも様々な解釈のうちの一部であって、

どの作品をどのように受け止めるかは人それぞれ違うという奥深さがあります。

哲学者カントの芸術論を踏まえて考えると、その事がより理解できるようです。


さて、そのような美術作品を生み出す美術家の心の在り方はいかばかりかと思います。

最初は美術作品を作り出し、自分の心と向き合う事は究極のストレスマネジメントになるのではないかと考えました。

しかし美術家の全員が全員、長寿になっているわけではなく、むしろ短命の美術家も散見されます。

けれども西洋に目を向ければ、マルク・シャガール(享年98歳)とか、クロード・モネ(享年96歳)など、実際に長寿を成している美術家も結構います。

美術作品を作り出すことそのものではストレスマネジメントにはならないけれど、

どのように美術と向き合うかという姿勢によっては、良きストレスマネジメントとなりうるのではないかと感じました。

それと同時に美術との向き合い方を間違えれば、逆に短命にも繋がりうるのかもしれないとも思いました。

はっきりとした結論の出ないどっちつかずな記事になってしまいましたが、

それが美術の奥深さということなのかもしれません。


たがしゅう
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