腸管の異常は神経の異常へ通ず

2017/03/15 00:00:01 | お勉強 | コメント:0件

当ブログではこれまでに何度かパーキンソン病について取り上げてきました。

一般的にはパーキンソン病はドーパミン神経の変性により運動症状、非運動症状、自律神経症状などの様々な症状が緩徐に進行していく病気だと認識されていますが、

様々なパーキンソン病患者さんと出会い、診療に携わっていくにつれ、

パーキンソンン病の本質はストレスマネジメント不足にあるのではないかという側面が私には見えてきました。

ストレスマネジメントがうまくできないが故にドーパミンを無駄打ちし、自律神経が乱れてきてしまい、

やがてはドーパミン自身の酸化ストレスによって神経変性が起こり、α-シヌクレインと呼ばれる異常タンパク質が脳や心臓、腸管など自律神経の関わる様々な部位へ蓄積していってしまうのだと思います。

そのようなパーキンソン病の病態仮説の中で、最初に障害されるのは腸管を含めた自律神経系だという事がわかっています。 言い換えれば、パーキンソン病で一番最初に出てくる症状は便秘だということです。

もちろん、この時期には脳や心臓など他の臓器には全く異常は起こっていないので、臨床的にはただ便秘があるだけの状態です。

しかしそれが20年、30年の年月が流れることで、振り返ってみてはじめてパーキンソン病の前駆症状であったという事がわかるということがあるわけです。

たかが便秘、されど便秘、便秘といえどもあなどるなかれ、です。


ではなぜ、最初に障害されるのは腸管なのでしょうか?

「Parkinson病の自律神経障害」
平山正昭(名古屋大学大学院医学系研究科病態解析学分野)
神経内科, 86(2):200-204, 2017
科学評論社


(p202-203より引用)

腸管細菌叢がPD(※注:パーキンソン病の略)のphenotype(表現型)を規定する報告や、PDと健常者で細菌叢に違いがあり、

特に神経保護に働く可能性のある物質を細菌叢が規定している可能性も報告されている。

デンマークで十二指腸潰瘍治療のために迷走神経切除を行われた患者の予後調査では、発症リスクが低下していたと報告されている。

これらの結果は、腸管を含めた自律神経系に初期に病変が出現し、

少なくとも腸管からα-シヌクレイン病変が中枢に拡大することを示唆し、腸管からα-シヌクレインがprion-like(プリオン様)に伝播する仮説を示唆する。

しかし、初期よりα-シヌクレイン蓄積が報告されている臓器は、網膜、腸管、皮膚、唾液腺、嗅球など外界と接している部分に多い

また、心臓などは常に酸素とのコンタクトが多く、活性酸素が生じる部分である。

近年、診断バイオマーカーにcolon biopsy(大腸生検)を使用した場合、健常高齢者でも出現するため鑑別には使用できないと報告された。

α-シヌクレイン蓄積を加齢現象の一つと考えると、"加齢により腸管のα-シヌクレインが蓄積する"ことは、

外界に接した部分がより障害されやすく、中枢は障害されにくいことを表しているだけかもしれず、

よりPD病変を促進させやすい因子があるのかもしれない。

(引用、ここまで)



腸管と皮膚は外界の空気と接しているという意味での共通構造があります。

いずれも「体表」と捉えれば、外敵と闘う最前線の戦場に相当すると言えるかもしれません。

でもそれならば、皮膚と腸管とに同じようにα-シヌクレインが蓄積していってもらわないと道理に合いませんが、

そこで腸管に病変がより起こりやすくなる理由は、我々が食べ過ぎてしまった事にあるように私は思うのです。

本来、ヒトの食事回数は1日1回程度であったと仮に仮定した場合、

1日3回以上食べる事を繰り返す現代の食生活では、単純に考えてもデフォルトの3倍以上の働きをしなければならない事になります。

そして腸管が動くためには自律神経の働きが欠かせません。

うまく食べ物が消化できなければ、余計に自律神経に負担がかかります。繰り返せばオーバーヒートしてもおかしくない状況です。

その結果が便秘として現れ、便秘が出現した時にはすでに自律神経がオーバーヒートしているとすればどうでしょう。

それならば私達が便秘を解消するために最初にすべきことは下剤を飲むことや、食物繊維を多くとることではなく、

一旦食事をとるのを止めて自律神経を休ませることにあるのではないかと思います。


絶食療法は神経変性疾患の根治を目指すに当たって、

核となる治療法となりうると私は考えます。


たがしゅう
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する