マインドフルネスで依存から抜け出す

2017/01/12 00:00:01 | お勉強 | コメント:0件

先日紹介したマインドフルネスですが、

医学界でも近年注目を集めつつある治療法でして、

医学論文検索サイトPubMedで「Mindfulness」をキーワードにして検索すると3919件の医学論文がヒットします。

結構面白いものが多いので私は非常に興味を惹かれます。今回はその中から次の論文を紹介したいと思います。

Tang YY, et al. Mindfulness meditation improves emotion regulation and reduces drug abuse. Drug Alcohol Depend. 2016 Jun 1;163 Suppl 1:S13-8. doi: 10.1016/j.drugalcdep.2015.11.041.
「マインドフルネス瞑想は感情制御を改善し薬物乱用を減らす」
【概要】

背景:中毒の核となる臨床徴候は、薬物摂取(渇望)、自己制御障害(衝動性と強迫性)、感情制御障害(陰性気分)およびストレス反応性の上昇に対するインセンティブが高められることを含んでいる。

自己制御障害に関連する徴候は前部帯状皮質(ACC)、内側前頭前皮質(mPFC)および他の脳領域の活動性の低下と関連している。

マインドフルネス瞑想のような行動訓練はそうした感情制御の改善につながる領域を含む制御ネットワークの機能を高めることができるので、中毒の治療にとって有望なアプローチとなりうるかもしれない。

方法:一連のランダム化対照試験(RCTs)で、健常者と中毒者の集団の中でACC/mPFCの活性が遂行機能、感情制御およびストレス反応における自己制御能力の改善に関連しているかどうかをテストした。

簡単なマインドフルネス訓練(統合的心身訓練:Integrative Body-Mind Traning, IBMT)の後、陽性および陰性感情尺度(PANAS)と気分状態プロフィール(POMS)を用いて感情制御を測定、またストレス反応性をみるのに唾液コルチゾール測定を、脳の機能的あるいは拡散テンソル画像での構造上の変化をみるのに機能的MRIを実施した。

リラクゼーション訓練は能動的な対照として使用された。

結果:喫煙者と非喫煙者の双方で、訓練後に感情制御における自己制御能力の改善とストレスの減少が認められ、これらの変化は訓練に続いて起こるACC/mPFC活性の上昇と関連していた。

非喫煙者と比べて、喫煙者では訓練前の自己制御ネットワークの中でACC/mPFC活性の減少があり、これらの欠損は訓練後に改善された。

結論:これらの結果は感情制御を促進し、ACC/mPFCの脳活性を改善すれば中毒の予防や治療に役立つという事を示している。



糖質制限指導がうまくいかない場合にまず背景に想定しておくべきことの一つが、この依存です。

例えば、同じ依存性のあるタバコはその危険性が国民に広く周知され、

どうしても止められない人のために禁煙外来なるサポート体制も充実してきました。

それでもタバコを止められず、健康を害し続ける人は少なからずいらっしゃいます。わかっちゃいるけど止められないの極致、これが依存の本質です。

また同じくアルコールもタバコと同様に合法的な依存性物質でかつすが、

それでもアルコール依存に陥る人がいて、健康にかなりの支障をきたしているにも関わらず止められないという人も一定の割合で出てきます。

ですがアルコール依存症の場合は、そこから抜けられず問題を生じている人は「断酒会」というコミュニティに参加する事が離脱の手助けになる事があります。依存症から離脱する上で精神面でのサポートはかなり大きいと思います。

ところが同じ依存性物質である糖質は、合法ですがその危険性がまだ広く国民に認知されていません。

断糖外来はなかなかありませんし、あっても患者自身が危険性を認識していないので受診しません。また断糖を勧めてくれるコミュニティもありません。

全国各地の糖質制限実践者グループは自主的に糖質制限を始めた人、糖質制限に興味がある人達の集まりであって、基本的には糖質が止められない人の断糖をサポートする集まりではないと思います。

そうした環境の中で糖質がどうしても止められない人に対してどう指導すればいいのかを考えるのは結構難しいと思います。

結局誰がどんな指導をしようと、自分がまず依存症であるという事を認める所から始めるしかないわけですから。

ただ、そんな中このマインドフルネス瞑想が、

依存から抜け出すための具体的かつ実践的な手助けとなってくれるのであれば、

これは一つ臨床で応用できうるアプローチの一つになるのではないかと思うわけです。

そう簡単にはいかないかもしれませんが、

糖質はやめるべだとわかっているけどどうしても止められないという人にとっては、

ひとつ福音となる情報になるのではないかと思い紹介した次第です。


たがしゅう
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