理解のすり替え

2013/11/10 00:01:00 | 普段の診療より | コメント:2件

情報過多の時代となり,情報をどう活かすかということが求められています.

それと同時に情報を伝える側の工夫も大事です.

医師側としては糖質制限の事を理解してもらうためにはある程度の説明時間が長くかかります.

というのは従来のカロリー制限とあまりに異なる理論であるため,

どうしても抜本的に意識を変えてもらうために基礎的なところから説明する必要があるからです.

糖質制限のことを速く正確に伝えるためには,ある程度の工夫が必要です.

これを省力化するために私は様々な工夫を試みています. 基本的な糖質制限の説明方法については過去記事をご覧いただくとして,

これに加えてまずは画像情報を多用しています.

百聞は一見にしかずと言いますが,画像で与えるインパクトは言葉で説明するより強く,記憶にも残りやすいと思います.

それから糖質制限について書かれた書籍をあらかじめ何冊か用意しておいて貸し出すというのがもう一つの方法です.

必要最低限のことだけ説明した後で,「あとはこちらの本に詳しく書かれていますので,次の外来の時までじっくりと読んでみて下さい」とお話しし,書籍を貸し出します.

こちらの出費がかかるというデメリットはありますが,やってみた感想としてはまずまずの感触です.

ちなみによく使う本は次のようなものです.







あと逆に時間はかかってしまいますが正確さを求めるために,口頭ではなく,書面で説明するという事も心がけています.

これはそれこそあらかじめパンフレットを作ったりしておけばよいのかもしれませんが,

実際やっていると患者さんの病状によって微妙に説明内容を変える必要が出てくるので,現時点では手書きが中心です.

必要最低限の内容だけ予めパンフレットにしておき,それ以外の部分を手書き,という風にすればさらに時間を短縮できるかもしれません.

こうした工夫を行ってしっかり患者さんに短い時間で糖質制限の事をわかってもらえるよう最大限の努力を行っているつもりですが,

そう簡単にうまくいかないのが現実です.

先日手間ヒマかけて作った手書き説明用紙で糖質制限の事を説明した70代の患者さんが2か月ぶりの外来に受診されました.

肥満があって頭痛やめまいに悩まされているという患者さんでしたが,

たがしゅう「前回お話しした食事療法,やってみられましたか?」

患者さん「はい,やってみました.ごはんを減らして,野菜を多めに食べるように…」

ん?野菜を食べることはそれほど強調していなかったのに,と思って体重を測ってみると,

前回と体重はほぼ変わらず,むしろ微増しているような状態でした.

これはおそらく「ごはんを減らす」の程度が正しく伝わっておらず,糖質が十分に減らせていない可能性が高いですし,

もう一つは「野菜はヘルシー」というこれまた根強い一般常識の影響です.

私は確実に肉,魚,卵の重要性を伝え,間食を我慢することなくチーズ,ナッツ類を中心に食べるようにとお話ししたはずなのですが,

情報を受け取る患者さんの頭の中でいつの間にか「おかずを食べるってことは(ヘルシーな)野菜をたくさん食べなさいってことだね」とすり替えが起こってしまっているのだと思います.

私に言わせれば,野菜の優先度はさほど高くありませんし,

ベジタリアンの考察でも述べたように,野菜ばっかりの食生活には逆に問題があると考えています.

情報を与える側がどれだけ工夫をしても,

情報を受け取る側に受け入れられる頭の柔らかさがないと徒労に帰す,

そう感じさせられる出来事でした.


たがしゅう
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コメント

No title

2013/11/10(日) 10:20:07 | URL | 田中 和子 #WmBT4X2g
今日は 毎日 先生のブログを楽しみにしながら 感動しています。  
私の糖質制限の仕方は とりあえず 主食を食べないことから始め
ました どのくらい 月日が過ぎたのか 覚えがないのですが、鼻炎
がなくなり 扁桃腺が腫れがなくなりました。
  

Re: No title

2013/11/10(日) 15:19:40 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
田中 和子さん

 応援のコメントを頂き誠に有難うございます。嬉しいです。

 これからも自分なりの目線でブログを続けていきたいと思いますので宜しくお願い致します。

 体調の改善も良かったですね。

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