マインドフルネスは脳の断食
2017/01/02 00:00:01 |
ストレスマネジメント |
コメント:5件
現代社会は情報であふれかえっています。
インターネットに加えて、スマホの登場でネット情報へのアクセスはより身近なものになりました。
東京で電車に乗っている時などによく思いますが、ほとんどの乗客が乗っている間スマホをいじっていたりします。
スマホを見ているという事はそこに表示されている情報に対して何かしら頭を使っているという事になるわけですが、
この情報処理に頭を使っているという感覚は自覚しにくいのが難点です。そして情報処理に自分の頭が追いつけなくなった時、ストレスを受ける事になります。
現代人が知らず知らずのうちにストレスにさらされやすくなっている一つの要因であるように思います。
最近私はストレスマネジメントについて関心を寄せていますが、
情報過多となった現代社会においてその存在価値が再評価されてきているのが「瞑想」です。
そしてこの「瞑想」から宗教性を排除し、誰でもできる科学的なストレスマネジメント法として確立されたのが「マインドフルネス」というものです。 「マインドフルネス」という言葉の意味自体は「気づき」という意味です。
つまり様々な情報で頭の中が雑念だらけになって混沌としてしまっている状態にある事に気づき、
一旦頭の中を空っぽにして五感を使って自然のありのままの状態を感じるという方法になります。
「一旦空っぽにして本来の機能を呼び起こす」という意味では断食にも通じる所があって、
・「身体をあふれる食べ物から一旦休ませて本来の機能を回復させる方法」=「断食」
・「脳をあふれる情報から一旦休ませて本来の機能を回復させる方法」=「瞑想」
ここに共通構造があり、そこから宗教性を排除したのがそれぞれファスティング、マインドフルネスに相当すると思います。
マインドフルネスの概念や具体的なやり方についてはNHK Eテレの「サイエンスZERO」という番組で紹介されていました。You Tubeにもアップされていたので興味のある方は御覧になって頂くとして、
私は糖質制限でうまくいかない病態の背景にはストレスマネジメント不足が関わっているという考えを示してきました。
一方でこのストレスマネジメントは相手に伝えるのが極めて難しいです。人によって悩みが異なりますし、
本人が納得しない限り、いかに適切な心の在り方を伝授したとしても実行されなければ意味がありません。
そうしたストレスマネジメントの壁に対して極めて具体的な方法として提案できる一つの方法が「マインドフルネス」ではないかと私は考えるわけです。
しかし私自身も何度かマインドフルネスに挑戦してみましたが、雑念を振り払うというのはなかなか難しいです。
長年の習慣を変えるのはなかなか難しく、私自身スマホ中毒気味だという事も自覚しております。
ものの10分程度、ただひたすら呼吸に集中し自然に感じられる風の感触や音の感覚を感じ続けるというシンプルな行為なのですが、
やっているうちに、そういえばあれを早くやらないととか、考えちゃだめだと思ったら余計に気になってきたりとか、ある程度慣れる事が必要です。
逆に言えば、普段自分がいかに雑念だらけでいるかという事を思い知らされます。
それでもやった後には少し頭がさえてすっきりとする感覚が得られますので、これは今後できる限り習慣にして習熟させていきたいと思っています。
先述の「サイエンスZERO」によれば、マインドフルネスには海馬容積を増加させ、ストレスで過剰反応した扁桃体の容積を減少させるという脳の構造を変える働きがあったり、
あるいは慢性炎症に関わる遺伝子の発現をたった1日実践しただけで減少させるという研究結果も紹介されていました。これはエピジェネティクスですね。
単なるリラックス法ではなく、想像以上に奥深い世界がそこにあるように私には思えます。
マインドフルネス、徐々に勉強していきたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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ジョンケージ 4分33秒のこと
アメリカの前衛作曲家で、ジョンケージという方がおられます。彼の作品に4分33秒というピアノソロ用の作品がありますが、詳しくはwikipediaの下記説明を参照していただくとして
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/4分33秒
作曲家の故 山本直純氏のこの作品についての文章を紹介しておきます。
引用開始
聴衆は、ピアノばかりに気をとられているので、そのピアノがならないとなんにも聴こえなかったように感じてしまう。だが、真空ではないのだから、演奏会場が無音であることはありえない。人のざわめきがあるかもしれないし、椅子のきしむ音もあるだろう。会場によっては、外で木が風にそよぐ音、鳥の鳴く声も聴こえるかもしれない。つまり、聴衆は知らず知らずのうちに様々な音を聴いているのである。
引用終
瞑想を始めると、雑念が次々と湧いてきて、集中どころではないのですが、雑念が次々と湧くのに任せていると、雑念が次第に枯渇してきます。先生の今年のキーワードになりそうな集合知ではありませんが、雑然としたものが一定の安定した構造を自己内部で自ら獲得することに気づくのが、瞑想の最初の段階ですね。そのことを上記文章はさらりと書いています。
座禅会等で、よく言われる「心は外界の刺激に合わせてコロコロと動くからこころという。だからそのこころを一箇所に止めて集中しなければならない」というのは堅すぎるので、上記の説明がお気に入りです。
最後になりましたが、本年もよろしくお願いいたします。
管理人のみ閲覧できます
Re: ジョンケージ 4分33秒のこと
コメント頂き有難うございます。
> 電車の車内で新聞や本を広げている人は、ほとんどいません。8割がスマホの画面とにらめっこですね。
確かにそんな感じですよね。ここにも2:8の法則が隠れていそうで興味深いです。
> 聴衆は知らず知らずのうちに様々な音を聴いているのである。
「4分33秒」、凄まじい作品ですね。
これを最初に思いついたジョン・ケージ氏の発想の独自性に感服します。
「これのどこが音楽だ」と反発する人もいそうですが、「偶然性の音楽」という誰もが思いついても実践しようとしなかった事を形にしているわけだから非常に価値があります。
それに、「あるはずだと思っていたはずのものがない時に初めて気づかされる」という事もあり、大変深いですね。
お勧めの本
「断食坐禅のススメ」という本です。
とっても面白い本です。
もしお時間ありましたら読まれてみてください。
Re: お勧めの本
情報を頂き有難うございます。
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