ストレスを上手に受け流せる人達
2016/12/21 00:00:01 |
ストレスマネジメント |
コメント:2件
私が糖質制限を中心とした食事療法と並んで健康を守る要と考える「ストレスマネジメント」、
「ストレスフルな要因や環境をどう捉え、どう解釈して、どう対処するかという心の在り方」の事を私はそう呼んでいます。
同じ状況でもストレスと感じるかどうかは自分次第という所があります。
例えばタレントの蛭子能収さんは、中学生時代に同級生の不良グループに「ジュース買って来い」などと命令されても「いじめられている」と思わずに、「自分のことを構ってくれている」と思ったのだそうです。
このストレスマネジメントがうまくできない人は、たとえどれだけ糖質制限をきっちり行っていたとしても症状が改善しないという事を私はこれまでの診療経験から強く感じています。
この事は逆に言えば、ストレスマネジメントが上手にできる人は多少糖質を摂っていても体調を上手にコントロールできるのではないかという考えにもつながります。
糖質制限を学び立ての頃は、私は血糖値の上昇は何が何でも避けるべき現象、くらいに思っていましたが、
今は血糖値の上昇を一概に悪いものと捉えず、そうした血糖値の上昇を伴って身体の中で起こる現象を自分の身体が活かせるかどうかが重要だと考えています。 ストレスを感じれば身体の中ではストレス反応が起こります。
視床下部-下垂体-副腎系と呼ばれる内分泌システムや自律神経の交感神経系が中心に働いて、血糖値が上昇したり末梢血管が収縮したり心拍が速くなったりなどしてストレスフルな環境に対応しようと身体は頑張ります。
この反応自体は決して悪いものではありません。むしろこうした反応が起こらなければストレス環境に適応できずに死んでしまうリスクが高くなってしまいます。
また内分泌や自律神経のシステムはこうしたストレス反応を起こすだけではなく、同時にストレス反応を終息させている側面があります。
例えば、ストレスホルモンの一つコルチゾールが十分に分泌されなくなる状態の事を副腎疲労とか副腎不全と呼んだりしますが、
副腎の働きが悪くなりコルチゾールが十分に分泌されない状況でストレスがかかれば、その人はいつまで経ってもストレスから復帰できず、その結果慢性的に疲れてしまうのです。
ゆえにストレス反応系はストレスを起こすのにも、ストレスから回復するのにも必要なわけです。
ストレスマネジメントはこのストレス反応系をきちんと働かせる側面があるのだと思います。
糖質を摂って血糖値が上昇するような状況はいわば疑似ストレスとでも言える現象ですが、
こうした疑似ストレスを受けてもストレス反応系がきちんと機能していれば高血糖の害を受けずにうまく受け流すことができるのではないかと考えるわけです。
私がそう考えるのは、高糖質社会であるにも関わらず健康的に長生きした人達の存在が大きいです。
ストレスマネジメントが上手であった宗教家の中でも優れた考え方を持っていた人達は長生きだという話は以前もしましたが、
最近取り上げたフランスの民族学者、レヴィ=ストロースも100歳の長寿で、亡くなる直前まで頭脳明晰であったと聞きます。
こうした人達はそれなりに糖質を摂っていたでしょうけれど、健康長寿を達成する事ができたわけです。糖質だけでは語れない何かの存在を感じずにはいられません。
ところでフランスでは喫煙率が高く、飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事をしているにも関わらず、冠状動脈性心臓病に罹患することが比較的低いことが疫学的に観察されており、これは「フレンチ・バラドックス」と呼ばれています。
フレンチ・パラドックスの起こる理由は一般的にはワインをよく飲むフランス人は、ワインに含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質の働きのおかげでそういう結果になっているのではないかといったことが言われていると思いますが、本当にそうでしょうか。
糖質制限的に考えれば飽和脂肪酸をしっかり摂っている事が病気の予防や長寿につながっているという事は一つ理由として考えられますが、
レヴィ=ストロースを見ているとフランス人の一般的なものの考え方、すなわち自然にできているストレスマネジメントにもその結果をもたらす秘訣があるのではないかという気がしてきました。
また少し話がずれるかもしれませんが、たまにものすごい喫煙者であるにも関わらず高齢になってもたいした病気にならずに済んでいるという人も見かけます。こうした人へも若干「違和感」を感じますが、
これは単なる体質というだけではなく、もしかしたら喫煙に伴う酸化ストレスもストレスマネジメントが上手であればうまく受け流すことができるという事を示しているのかもしれません。
私の興味はフランス人の一般的な考え方や重喫煙習慣があっても元気な人達の考え方へと移っていきます。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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植物のストレス
高糖度トマトや高糖度みかんが最近出回り始めましたが、これらは栽培時にストレスを与えることによって糖度を意図的に増加させているそうです。
ストレスの種類も
・温度(高温、低温、凍結)
・光(強光、暗黒、紫外線)
・水(乾燥、水没)
・栄養(栄養不足、栄養過多、塩、重金属)
・傷
等々品種や品目によって様々ですが、どのの方法においても植物が生存維持の為に自ら糖を生成する原理を利用している点は共通です。
つまり糖というのはストレス下において増加し、自己生成出来るということ。
これは人間も同じすよね?
しかも植物は自ら外部から糖を摂取できないけど、人間は出来るので、抑制が効かない人は当然過剰摂取になりかねない。
やはり人間において、糖は摂取する必要性はないものなんですね。
改めて人間は生物なんだなあと感心した次第です。
Re: 植物のストレス
コメント頂き有難うございます。
> 植物はストレスを与えると甘みが増しておいしくなる
> ・温度(高温、低温、凍結)
> ・光(強光、暗黒、紫外線)
> ・水(乾燥、水没)
> ・栄養(栄養不足、栄養過多、塩、重金属)
> ・傷
> つまり糖というのはストレス下において増加し、自己生成出来るということ。
これは大変面白い話ですね。
動物と植物での共通原理という点でも面白いですし、結果起こってくる現象が動物と植物で異なってくる点も面白いです。
私もこれについてもう少し調べて理解を深めていきたいと思います。情報をどうも有難うございます。
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