パーキンソン病はストレスマネジメント不足病

2016/12/06 00:00:01 | ストレスマネジメント | コメント:1件

糖質制限で一筋縄にいかない病気の一つに「パーキンソン病」があります。

パーキンソン病の病態に主として関わるのはドーパミンで、ストレスや快感などにより神経が刺激され放出される神経伝達物質です。

真面目な人間がパーキンソン病になりやすいという事も言われていて、それはストレスを抱えやすいからではないかと考えられています。

一方でパーキンソン病の病態には酸化ストレスが関わっている事は証明されていますので、

食後高血糖、血糖値の乱高下を改善する事で確実に酸化ストレスを減らす事ができる糖質制限は理屈から考えてパーキンソン病に対してまず間違いなく良い影響をもたらすであろう事は容易に想像できます。

私はそういう考えの下にパーキンソン病患者さんに対しても普段から積極的に糖質制限を勧めています。

ところが経験上、パーキンソン病の患者さんは糖質制限のスタートラインにすら立てない事が圧倒的に多いのです。 ごはん食べないと力が出ないとか、肉が嫌いだからできないとか、もともとごはんはそんなに食べてないと言ったりとか、

普段の診療でもいろいろな理由をこねて拒否する人がほとんどで、糖質制限の土俵に立てる人はだいたい2割という印象ですが、

ことパーキンソン病に関して言えば、その割合は1割未満という印象です。

しかもやってくれた人でもせいぜい半糖質制限レベルが関の山で、きちんとやってくれた人は一人もいないと言っても過言ではないかもしれません。

パーキンソン病において、なぜそんなに糖質制限のハードルが高いのでしょうか。


一方でパーキンソン病の日常診療において気がつく事が時折あります。

例えばものすごくネガティブな考え方を持つ人が多いという事です。診察で会う度に前より悪くなっているという事をしきりに主張するけれど客観的にみると全く何も変わっていないというケースです。

あるいは先日はオートファジーでノーベル賞を撮った大隅先生のニュースが流れた翌日にパーキンソン病の新薬に頼ろうとしていた患者さんもいました。

また他方でパーキンソン病の権威と呼ばれるような医師に診てもらう事をものすごく有難がる傾向もあります。

さらに言えば、パーキンソン病ではプラセボ効果が高いという研究データも報告されています。

即ち名医と呼ばれる医師がある治療を行った場合、一般的な医師が同じ治療を行った場合に比べて前者の方が心のプラセボ効果が上乗せされて治療効果が高まるという事です。

自己否定的で他者依存的、こうした客観的事実を総合して私が思うのは、

パーキンソン病の患者さんは、「基本的に自分でのストレスマネジメントが上手でない」という事です。

その根底にあるのはパーキンソン病が「原因不明の神経難病」と位置付けられているということです。

すなわち、パーキンソン病患者さんにとって自分の病気はあくまでも不運にも天から降りかかってきた不幸であって、

よもや自分の生活習慣や考え方が原因でパーキンソン病へつながっているとは夢にも思っていないということが、

パーキンソン病に糖質制限がうまくいかない事の最大の原因ではないかと私は考えています。


これまでの糖質制限診療の経験を経て、

私は「ストレスマネジメントの重要性」を嫌という程感じてきています。

「ストレスマネジメント」ができていないと、せっかくの糖質制限による改善効果をすべて帳消しにするほどの強い負の影響を及ぼしてしまう事が結構あります。

私は神経内科医という特性を活かして、将来的にはこうした神経難病を治す糸口を糖質制限を切り口に探していきたいと考えていますが、

こうした事実を目の当たりにすると、正直言ってかなり厳しい道のりかもしれないという印象を持たざるをえません。

なぜならストレスマネジメントは教えてどうにかなるものではなく、自分自身で習得してもらうより他にないからです。

実際、現時点で私がパーキンソン病の患者さんにストレスマネジメントの具体的方法をいくつか提示していても全く相手に響かないのです。伝え方の技術的な問題もあるかもしれませんが、ストレスマネジメントは教えるのは極めて難しいのです。

やはり難病になる患者さんは難病たる所以があり、まずはその所以を自覚する事が難病克服の第一歩ではないかと思うのです。

そもそも私がパーキンソン病を治そうだなんて、おこがましい限りなのかもしれません。


たがしゅう
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2018/08/14(火) 23:49:14 | | #
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