どれだけ真剣になれるか
2013/11/06 00:01:00 |
普段の診療より |
コメント:10件
てんかんという痙攣を起こす病気があります。
生まれつきの脳の形成異常や脳腫瘍や脳梗塞など脳に病変ができることが原因で脳波が乱れることで痙攣が起こります。
そして一定の確率で難治性のてんかんが小児に起こってしまう場合がありますが、
この難治性てんかんにケトン食(強い糖質制限)が有効であることが報告されています。
通常、強い糖質制限を実践する場合はかなり食事内容に気を遣わねばならず、難しい側面もあるのですが、
難治性てんかんの小児に対してケトン食を頑張ろうとする親御さんの努力には目を見張るものがあります。
やはり我が子がいかに薬を使っても収まらなかった痙攣が、食事を見直すことによって改善するというならば、
ある意味親の努力によってこどもの症状を改善させることができるとなれば、ケトン食の実践に情熱を傾ける親御さんの気持ちもわかるような気がします。 ただ、ここでのポイントは「いかに薬を使っても収まらなかった」という状況があるかどうかです。
私は仕事柄てんかんの患者さんを診る機会もあるのですが、
薬を使って痙攣が治まる患者さんは、不思議と食事療法に手を出そうとはされないのです。
私の個人的な感覚で行けば、てんかん発作が薬を飲まずして治るのであれば、それが一番良いように思うのですが、
やはり薬で痙攣が治まってしまっている場合は、親御さんは「普通の食事」を食べさせてあげたいという想いが働いてしまうためか、ケトン食に積極的に手を出そうとされる方はまずいません。
その「普通の食事」というのが私に言わせれば糖質まみれで、まったく普通ではないのですが、
「糖質とは何か?」という根本部分を正しく理解しない限り、ケトン食を続けるという発想にはなかなかつながらないのでしょう。
最近もケトン食の実践を断られた若い患者が2名程おられました。
一人は原因不明の不随意運動(勝手に手が震える)の10代男性、もう一人は薬を2剤併用してようやく発作を抑えることができたてんかんの20代男性です。
二人とも親御さんの協力は一時的にしか得られず、結局元の食事に戻さざるをえなくなってしまったのですが、
それ以上に患者自身が「そんなの続けられるわけがない」と強い拒否反応を示すという共通点がありました。
要するに本人がやってみようともしないので、親もそんな嫌がることを息子にさせられない、と思うのでしょう。
しかし私に言わせればその反応自体が糖質依存である可能性があります。
なぜなら実際に困っている症状があるにも関わらず、それを実践しようとすらしないからです。
糖質をやめる苦しさを考えれば今ある症状が残っている方がよっぽどましだということなのでしょう。いわば糖質の離脱症状に耐えかねている状態です。
逆に言えば、自分にとってその症状はその程度の問題だ、ということです。
本当に自分が困っている症状であるならば、症状を改善させる可能性がある方法にまずは取り組んでみるはずです。
自分の症状に真剣に向き合えない患者は、医者の促されるまま薬を飲まされていても文句は言えないと思います。
要はどれだけ真剣になれるかどうかです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
糖質依存は恐ろしいですね
おそらく私自身も今の病気が発覚しなかったら糖質のことはノーマークだったと思っています。今の自分の感覚では自分の好きなものを食べないで、
心臓の再手術をしなくてもいい
視力が維持できる
足を切断しなくくともよい
ということであればそんなくらい「おやすいこと」だと考えられるようになりました。
たがしゅう先生がおっしゃるように例に挙げられた患者さんが症状が良くならなくとも糖質を摂った方が良いという愚かな選択をしたのではなくそれが糖質の中毒がさせたことなのだと思います。
糖質っておいしいですけど恐ろしい部分ありますね~
私が一番怖いと思うのは実際に健康診断で何も注意されずに自分が健康だと思っている人は前回の記事にあったように徐々に異常なタンパク質が蓄積されていく可能性があるということですね。
No title
導入率が低くても先生のおかげで救われる患者さんの数は確実に増えていきます
もう少ししたら糖質制限希望の患者さんが殺到するかも・・・
めげずに頑張ってください
Re: 糖質依存は恐ろしいですね
いつもコメントを頂き有難うございます。
> 患者さんが症状が良くならなくとも糖質を摂った方が良いという愚かな選択をしたのではなくそれが糖質の中毒がさせたことなのだと思います。
そうなのですよね。
ある意味糖質によって動かされている側面があると思うのですが、
糖質をやめた事がない人はその事実に気が付きません。
> 糖質っておいしいですけど恐ろしい部分ありますね~
本当、恐ろしいです。おいしいという所にまた魔力があります。
こうなると悪いとわかっていてもやめられないタバコよりもよほどタチが悪いです。なにせ「悪いとすら思ってもらえない」わけですから。
> 私が一番怖いと思うのは実際に健康診断で何も注意されずに自分が健康だと思っている人は前回の記事にあったように徐々に異常なタンパク質が蓄積されていく可能性があるということですね。
現代医学の検査でとらえきれないだけで、
糖質の害というのは目に見えないところでいろいろ蓄積されていっているのではないかと私は考えています。
わかってもらえない人には、まず糖質が必須栄養素ではないということを強く認識してもらいたいものです。
Re: No title
応援のお言葉を頂き誠に有難うございます。
無理せず、わかってもらえる人に確実に伝えていきたいと思います。
No title
私なぞは、血糖が上がるので、ぎりぎり我慢してますけど。
やっぱり、新米とか焼きたてパンとか、心惹かれますものね。
糖尿であるなら、血糖を測定する-糖質のレスポンスがすぐわかるから、抑止力にもなる過と思います。
まずは、糖尿病に関しては、インスリン自己注ある、なしに関わらず、血糖測定は、健康保険の範疇になってほしいなぁと思います。
そうなったら、本当に当事者をだませないですよね。
あと。タニタが尿糖測定器をリリースするみたいですね。
非観血的なのは、うれしいですけど、ね。
あと、ブログ。リンク貼らせてくださいね。
http://blogs.yahoo.co.jp/bluemoon0804chie/62244826.html
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 糖尿であるなら、血糖を測定する-糖質のレスポンスがすぐわかるから、抑止力にもなる過と思います。
> まずは、糖尿病に関しては、インスリン自己注ある、なしに関わらず、血糖測定は、健康保険の範疇になってほしいなぁと思います。
同感ですね。
糖尿病患者でなくても血糖値が測定できるようになればまた医療のあり方は大きく変わると思います。
尿糖測定器は、時々炭水化物を食べてしまう人には有用だと思います。スーパー糖質制限食やケトン食を実践している場合はそれほど気にしなくてもよいかもしれません。
> あと、ブログ。リンク貼らせてくださいね。
> http://blogs.yahoo.co.jp/bluemoon0804chie/62244826.html
勿論、大歓迎です。どうも有難うございます。
ケトン食
ケトン食について少し書いてみます。
ケトン食について知識を得るため始める前に福田一典先生の著者を三冊購入し勉強しましたが、あまりにも難解すぎ自己流で開始6ヶ月前、
総ケトン体値 低値500 高値3000で 今は2000前後で落ち着いています。
炭水化物は出来るだけ取らない、これは絶対です、1日2食なので、昼食はゆで卵3個、チーズ3個、だけです
夕食は魚の脂身の物、肉はばら肉、鶏肉は手羽先等、1日1キロ前後 その他 豆腐、納豆、少しの野菜を食べます。
足せる油は足す オリーブオイル、ココナッツオイル、生クリーム、中鎖脂肪酸を
1日100㌘飲んでいます。カロリー、飲料水は気にしてないです。
加工品は食べない、サプリメントの糖質は無視し マルチビタミン、ミネラル、DHAを摂取してます。
副作用は特になし
ケトン食について ナンチャツテですが
私は 脂質6 たんぱく質3 その他1の割合で たんぱく質を少し食べ過ぎるとケトン値はすぐに下がり、脂質の量を増やせばケトン値は速やかに上がるような感じがします。
脂肪を増やせば下痢気味になりやすく、そのような時はふすまパンを少し食べると改善します。
Re: ケトン食
具体的なケトン食の実践について御教示頂いて誠に有難うございます.
> 総ケトン体値 低値500 高値3000で 今は2000前後で落ち着いています。
副作用もなく素晴らしいです.上手くケトン食が実践できていると思います.
> 私は 脂質6 たんぱく質3 その他1の割合で たんぱく質を少し食べ過ぎるとケトン値はすぐに下がり、脂質の量を増やせばケトン値は速やかに上がるような感じがします。
ケトン体をいかに上げるかについてはWoodyattの式が参考になります.
Woodyatt計算式=(0.9F+0.46P)/(C+0.1F+0.58P)
F(脂肪):ケトンを作りやすい(向ケトン)
P(蛋白質):中間
C(炭水化物):ケトンを消しやすい(反ケトン)
Woodyattの計算式の値が1.5以上となれば,ケトン体が産生されるようです.
従って,脂肪をたくさん取ればケトンが出ますし,炭水化物を摂るとケトンが出なくなります.
蛋白質はその中間ですが,摂りすぎると分母の方が大きくなるので,やはりケトンが出にくくなります.
No title
我が家の場合、難治性てんかんと診断されるとかではなく、先生のおっしゃられるように出来るなら薬は少ない方が良いのではないか?という考えから、始めから糖質制限をいたしました。
始めは、担当医の理解を得ることが出来ませんでしたが、てんかん派が強く出ているものの発作が起きなかったので薬の増量をせず、基準値にも満たない量での経過観察に協力していただきました。
結果、2年近く発作を発症せず、最近、脳波も正常になりました。
今後の課題としては低身長の問題に取り組んでいきたいと考えています。
息子の場合、中学生の時期の2年間で8㎜程度しか身長は伸びませんでした。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
発作の抑制が得られよかったですね。
こどもへの糖質制限についての身長の問題はタンパク質の量が鍵だと私は思っています。
2015年10月5日(月)の本ブログ記事
「歴史を検証して真実を導く」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-631.html
も御参照下さい。
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