糖尿病に関係なく糖質制限すべし
2016/11/22 00:00:01 |
糖質制限 |
コメント:17件
2016年10月8日にNHKで「血糖値スパイクが危ない!」と題したスペシャル番組が放送されていました。
持続的な血糖上昇ではなく、スパイク状の血糖値上昇も様々な病気の温床となるという事実を伝え、
食後血糖測定の重要性を広く一般に伝えた特集という事で意義の大きい番組であったと思います。
医療現場で知られるグルコース・スパイクという言葉を、一般に伝わりやすいように「血糖値スパイク」と表現していたことも評価できます。
ただそれにも関わらずその本質的対策に当たる糖質制限を紹介せずに、食べる順番とか朝ごはんを食べるとか食後のちょこちょこ運動とかの回りくどい方法の紹介に終始したという点で残念さの残る内容でした。
その事はさておき、今回はその番組でもう一つ私が注目した事を紹介したいと思います。 番組の中ではゲストでお笑い芸人ドランクドラゴンの塚地無雅さんが血糖値スパイクの実験台となっていました。
具体的にはCGM(持続血糖モニタリング)装置をつけた状態で、番組開始の30分前におにぎり二つと果汁入りの野菜ジュースを1杯飲んでもらい、
1時間13分の番組放送中に血糖値がどう推移するかというのを生放送中に紹介するという内容です。
おにぎり1個で糖質約30g、野菜ジュースの量はテレビの映像でみる限り300mlくらいでしょうか。ざっくりと全部で75gくらいの糖質量です。いわば食品版75gOGTT試験です。
塚地さんは肥満体型ですから、おそらく番組制作側の意図としては、塚地さんの血糖値がスパイク状に上昇するのを見せて、「こんなに血糖値スパイクって怖いものなんですよ」というイメージを与えたかったのではないかと推察しますが、
実際の塚地さんのデータはその予想とはまったく反する結果でした。
【食後40分】血糖値:99mg/dL
【食後60分】血糖値:103mg/dL
【食後70分】血糖値:98mg/dL
実に全く血糖値スパイクは起こっておりませんでした。
血糖値という観点から見れば塚地さんの身体には危険は全くないという事になります。
では塚地さんは健康体という事になるのでしょうか。
ここでもう一つ、どうして血糖値が上がらなかったのかという事を考えてみます。
運動もしておらず、薬剤も使っていない状況であれば、血糖値を下げるにはインスリンが作用するしか方法がありません。
すなわち、塚地さんの身体は血糖値スパイクを起こさなかった代わりに高インスリン血症をきたしていたと考えられます。
ここで問題になるのは高インスリン血症の害です。これ自体も酸化ストレスリスクになることがわかっていますし、がんのリスクを上げるのも高インスリン血症です。
つまり血糖値を上げようと上げまいと、結局糖質は身体に害を及ぼしているという事になるわけです。
血糖値だけにとらわれてはいけないという事は以前から本ブログでも警鐘を鳴らしていますが、
結局、糖尿病になるならないに関係なく、みんな糖質制限をやった方がいいですよってことなのです。
また血糖価が上がることによって身体に起こる悪影響も糖尿病だけとは限りません。
逆流性食道炎とか、片頭痛とか、尋常性乾癬とか、多嚢胞性卵巣症候群とか、一見糖質とは関係ないと思われる病態にも糖質が関与している事実が明らかにされてきました。
さらには糖化や糖鎖修飾の観点も加えれば、実に様々な病気に糖質が関わっている事実も見えてきました。アルツハイマー病やパーキンソン病、正常圧水頭症などはその例です。
もっと言えば、近年原因不明だが増え続けている病気には、まだ理由が解明されていないだけでまず間違いなく糖質過剰摂取の関与があるだろうと私は考えています。
そのように思えば、糖尿病であろうとなかろうと、
糖尿病で血糖値が上がろうと上がるまいと、老若男女すべての人が、
生きるための基本として糖質制限を利用すればいいのではないかと私は考えています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
Re: タイトルなし
こちらこそいろいろお話させて頂き有難うございました。
また静岡へは是非お邪魔したいと思います。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
CGMの測定値
私もこの番組を見ており、意外な測定結果にびっくりしましたが、グラフで表示されたとき、食前の値が50mg/dLくらいだったように見えました。(塚地さんではなく、ほかの方の測定値だったかもしれませんが)この新しいCGMは、測定のときに校正が必要と聞いていますが、この調整がうまく行えていなかったのかなと思っていました。録画があるかもしれないので、あったら、確認します。
糖質制限に対する恐れ
「糖質制限は健康に良くない!」とか言ってて・・・
よくよく聴いてみれば、甘い御菓子がやめられないだけだったようで、まともに議論して損したなぁと思った事があります。
Re: CGMの測定値
コメント頂き有難うございます。
なるほど、CGMの測定誤差に関しては少し不勉強でありました。
現時点での私の理解では「CGMは直接血糖測定に比べて多少の誤差はあるけど、そう大きな誤差はみられない」だと思っていますが、実際のところはどうなのでしょうね。また勉強してみようと思います。
ちなみに番組の動画は今ならYou tubeでも視聴可能です。
Re: 糖質制限に対する恐れ
コメント頂き有難うございます。
糖質制限の本質に気付けば怖くも何ともないのですけれどね。
中毒の様相を呈していると、頭で理解できないというよりも、身体が拒否しているという感覚が近いのかもしれません。依存性のある睡眠薬を止められない人にも同じような拒絶がある事を診療でしばしば経験致します。
糖質制限はムリという人が大半
私はスーパー糖質制限実施11ヶ月、一応健康診断では問題なしの50台女性です。
糖質制限で今までにない集中力と体力、精神安定を実感してまして、先生はじめ色々勉強させて頂いて、病気の友人に先生のブログや江部先生の本などで紹介するのですが、実行するのはムリだと言います。
がんの病歴がある人でさえです。
私は不思議でなりませんが、それが糖質中毒なのか?自分もそこそこ糖質取ってきましたがやはり量の問題なのでしょうか。
質の良い人生を生きるために食べるのではなく、美味しいと感じる物を堪能するために生きるという人生観の違いなのかなと思ったりします。
Re: 糖質制限はムリという人が大半
コメント頂き有難うございます。
結局、自分の頭で考えることが、自分の人生を切り開く大きな力になるという事だと思います。
どれだけ頭が良かろうとも、どれだけ辛い経験をしていようとも、「自分の頭で考える力」がなければ糖質制限の素晴らしさに気づかないのだと思います。
管理人のみ閲覧できます
Re: No title
御質問頂き有難うございます。
メールアドレスが記入されていなかったのでこちらで回答させて頂きます。御了承下さい。
2014年11月20日(木)の本ブログ記事
「コメント投稿時の注意点」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-487.html
も御参照下さい。
> 先生はピロリ菌除菌についてどのようにお考えでしょうか?
実はこの問題は私の中でまだすっきり解決していない問題です。
ピロリ菌除菌のエビデンスはかなり明確なもののようなので、胃潰瘍や胃癌の予防に除菌治療が有効と考えていいと思います。ただ少ないですが一定の確率で除菌治療に抵抗性を示す方がおられるのも事実です。
一方で私は本来細菌に善玉も悪玉もないと考えています。宿主(ヒトの身体)と都合の良い細菌が共存関係で身体に住みついているわけですが、ピロリ菌もヒトとそういう関係にあるはずなのに何故コイツだけ人体に害をもたらすのかという疑問は解けていません。何かわかればいずれ記事にしたいと考えています。
No title
投稿の注意事項理解いたしました。
アドレスも記載せず申し訳ありませんでした。
この件に関しての新しい記事を期待しています。
(先生の違う見解にすがりたかったのですが)
CGMの測定値2
測定値のグラフを見直したところおかしな状況でした。
測定開始時は、90mg/dL程度で、それから50mg/dLあるいはそれ以下まで直線状に減少し、食事を取ったと思われる時刻から、ほぼ、直線状に増加し、99mg/dL、あるいは、103mg/dLとなっていました。
測定に失敗しているのかもしれません。
Re: CGMの測定値2
コメント頂き有難うございます。
なるほど、CGMの測定誤差をきちんとわかった上で解釈しないとミスリーディングされてしまいますね。勉強になります。
CRP上昇と微熱と糖質制限
私は小児喘息が成人した現在まで続いております。子供の頃、定かではありませんが(親も良く理解していなかったようです)、発作時に点滴にステロイド剤を使われていたようです。
今となってはその影響かどうか分かりませんが、3年程前に日常生活に不自由をきたすほどのだるさを感じ、検査したところACTHとコルチゾールが検出不可で副腎不全と診断されました。
そこからコートリルを処方され、現在は大分普通の生活が出来るようになりましたが、まだ就労は出来ていません(子供はいます)。
それと同時に風邪でも癌でも外傷でも結核でもないのにCRPがずっと1.0前後をウロウロとしていて、37度程度の微熱が続きました。
昨年、個人的な環境の変化でストレスが減ったことも影響したのかCRPが0.1以下になり微熱もなくなりました。そしてその時期は糖質制限をしていた時期と重なります。今は糖質制限をやめてしまったのですが、またCPRが少し上がり、微熱のような状態に戻りました。
糖質制限は体内の炎症を抑えるということを江部先生の著書を通して知っていたので、そういうこともあるのかなとまた糖質制限をしてみようと思います。
ただ、たがしゅう先生もおっしゃっていた通り、副腎疲労や不全のある患者の糖質制限は要注意ということですので自分の体調を見ながら糖質制限をすすめていく予定です。
Re: CRP上昇と微熱と糖質制限
コメント頂き有難うございます。
御提示頂いた御経験は非常に大事な点を含んでいると思います。
というのは炎症が持続している病態においては、経験上絶食状態でさえケトン体は思うように上昇しません。
ということはケトン代謝を発動させるには、まず炎症を終息させることが最優先で、その抗炎症作用に重要な役割を果たすのがストレスホルモンであるコルチゾールだと思います。
副腎疲労や副腎不全の病態ではストレスの蓄積のせいでコルチゾールが思うように分泌できません。結果的に炎症を終息させることができず、糖質制限していてもケトン体が上昇しない状態が続きます。コルチゾールが出なければ炎症が抑えられないので微熱が続きます。だから副腎疲労や副腎不全が糖質制限の注意病態なのではないかと考える次第です。
2015年2月3日(火)の本ブログ記事
「『副腎疲労』と糖質制限」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-563.html
も御参照下さい。
この辺りの話はストレスマネジメントができていない人は糖質制限をやっても満足いく治療効果が得られない、という話にも通じます。いずれまたまとめて記事にしたいと思います。
副腎不全と糖質制限
色々と参考になりました。ストレスマネジメントにも興味があります。
先日、ACTH負荷テストをしましたが、ACTHとコルチゾール共に検出不可でした。副腎が廃絶しているかACTH単独欠損症の疑いありとのことです。
調味料まで完全に気を使った糖質制限ではありませんが、主食をカットした方が体も軽く、むくみも取れ、体調が良かった気がします。
息子がケトン血性嘔吐症で何度も入院をしました。大体、入院時のケトンの値はプラス4でした。10歳になってからは入院はしてませんが、今でも時々疲れると軽い嘔吐をします。偏食で小さい頃は白いご飯を少し食べさせるのがやっとで、今も炭水化物の多い食事を好みます。
たがしゅう先生のケトン血性嘔吐症のページも参考にさせて頂きました。低血糖にならないように炭水化物をしっかりとらせていましたが、タンパク質もきちんととるように気を付けます。
Re: 副腎不全と糖質制限
コメント頂き有難うございます。
息子さんはきっとケトン代謝が回りにくい体質をお持ちなのでしょう。いわゆる緩やかな糖質制限から始め、あせらずゆっくりとケトン代謝に慣らしていく事をおすすめします。
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